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【第1弾】起業前にできる売れ続けるための仕組みづくり

営業・マーケティング

執筆者: 池田 孝治

はじめて起業するときの大きな不安要素のひとつに「将来にわたって収益を安定的に確保できるのか」ということがあります。

事業計画をできるだけ精緻に作っておくなど、あらかじめ備えられることを備えてはいても、現実が計画通りに動いてくれるかどうか、はっきりとした自信はなかなか持てないものです。

二、三年後の自社の業績がどんな状況になっているか、をリアルに想像することは難しい。
現在起業準備中の人は、そんなことをまさにいま実感されているかもしれませんね。

実際のところ、「安定性」という課題は経営者として独り立ちした後もついてまわります。
「状況が悪いときには夜眠れない」という声もよく聞きます。

経営状況を安定させたい、という思いは多くの経営者に共通です。
なので、私はそういった方々に「顧客を自分の事業のファンにする」経営をおすすめしています。

ファンづくりは経営を安定させる事業活動

事業のファンづくり」というと、大企業のブランディングを想起される方もいらっしゃるので、「いやいや、ウチはまだそんなレベルでは…」とか、「そのうちファンがつくようなブランドにしたいとは思ってるんですがねえー」
などと、若干的外れな謙遜をなさったりもします。

なぜ「的外れ」なのかというと。

「ファンづくり」というのは、マーケティング予算に余裕がある場合に実施する類の施策ではなく、収益を増やして経営を安定させるための通常期の事業活動だからです。

だから、「ウチはまだ…」とか「そのうち…」とかではなく、今すぐに取り組んだほうがよいですよ、とご説明しています。

そのおもな理由は以下の3つです。

  1. 計数管理に直結する
  2. 市場環境の変化に乗る
  3. ポリシーを強くする

さて、数行前の文中で、ファンづくりは経営を安定させる事業活動だと言いました。

確かに具体的なアクションを伴う活動も含みますが、全体の7割くらいは、経営者をはじめ従業員や協力会社などの顧客理解や活動の姿勢といった精神活動に負うところが実は大きいのです。

下のような売上高の公式を見たことがあると思います。

言葉で言うと、売上高は「1.顧客数」「2.顧客単価」「3.購買回数」の掛け算でできている、となります。

売上高を増やすために、この3要素のどこに注力するか。
これが事業戦略の骨子です。
例えば、顧客数を増やすのであれば商品の仕向け地を拡大することを優先する、とか、単価を増やすのであれば既存価格の上位にプレミアム商品を追加する、といった具合です。

「購買回数」に着目を

さて、ファンづくり戦略のベースにあるのは、「購買回数」に最初に着目するという姿勢です。
すでに1個買ってくれた顧客に、もう一度、さらにもう一度と買ってもらう、という結果を求めるのです。

既存顧客に向き合って、取引を長い期間続けられるよう関係を構築することになります。

1個買ってくれたお客様に、もう一度買ってもらうためにかかるコストは、初めてのお客様に1個売るコストの概ね1/6と言われています。
言い換えると、公式の「顧客数」を1増やすより、「回数」を1増やすほうが、掛け算の結果は同じでも効率が良いのです。

最近、SNSや動画の投稿によって新規顧客を呼び込もうとする試みをよく見ます。
当然これは顧客数を増やすための「集客」という活動です。
集客も事業にとって重要な活動であり、「ファンづくり」のプロセスにも当然含まれます。
しかしながら集客(言い換えると新規顧客の獲得)だけに偏重すると、おかしな判断が起きやすいです。

先日、クライアント企業の直営店をリニューアルオープンする際に、改善点の打合せをしていたときのことです。
「利用者数を増やしたいので、商品全体の価格帯を下げたい」と言われました。
すなわち公式の「1.」を増やすために「2.」を減らす、というのです。
事業をするからには売上を増やして利益を増やすことが当然の目的のひとつです。

上述の3要素の数値を増やすことは、売上高を増やす目的のための手段なのです。
それでも利用者数や販売数という指標は他よりも際立ってみえるものです。
だから集客にあまりに寄り過ぎると、こういう判断も起きやすくなるのです。

このクライアントの事例だけではありません。
新規顧客の集まりが悪いと、「商品の値段が高すぎるのではないか…」と、とりあえず価格を下げたくなってしまう販売の現場のなんと多いことか。
もちろん商品が想定通り売れない原因を分析した結果、価格に問題がある、と判断してのことであれば、改善することに何の問題もありません。
しかしながら、最初に価格を下げたくなってしまうのは実は、前述の売上高の公式の3要素のうち、事業者自らが数値をコントロールできるのが価格だけだから、というのが実態です。
手段が目的にすり替わってしまうのです。

そんな理由で徒に価格を下げても思ったほどには顧客数や販売数が伸びず、売上高を減らすだけの結果におわる、というのは残念ながらよくある状況です。

「ファンづくり活動」は精神活動の比重が高い、というのは、上記のような思考に流されるのを防ぐことができるからです。

一方でファンづくり活動は「回数に最初に着目する」と言いました。
ただ、効果があるのは回数に対してだけではありません。一度納得して購買してくれたお客様は、もう一度買うときにも価格への抵抗感は比較的少ないと推察されます。
ですから、「価格」の数値を下げずに維持しやすくなります

顧客の「好き」になるという気持ちを大切にする

そして、顧客に向き合っていい関係を築いている、という評判は、まだ顧客になっていない「見込顧客」にとっても魅力的です。
顧客がファンになっている」という状況がきちんと市場に伝わると、顧客数の増加、新規顧客の増加につながります。

3つの要素それぞれの数値が下がることなく、増加していきやすい、コスト効率も高い、という点が、「①計数管理に直結する」という意味です。

混同してほしくないのは、近年よくある「とにかく無料の利用者をたくさん囲い込んだあとで課金をする」というスマホゲームや映像配信サービスなどITの周辺業界に特に多い手法です。
たとえ無料の利用者であってもできるだけ多く獲得しておけば一定数は有料サービスも利用する、というのが前提です。
これは売上高の公式の「1.」をまず増やし、次に「2.」と「3.」の掛け算(生涯顧客価値)も最大化することを狙う手法ですので、「2.を下げて1.を増やす」という考え方とはまったく別のものです。

こんな事業モデルが可能になったのは、ITの普及により顧客管理のコストが飛躍的に下がったことが要因として挙げられます。近年のビジネス環境の変化は本当に目まぐるしい限りです。
②環境の変化に乗る」については、さまざまな変化に対して逐一詳述すると紙数が尽きてしまいます。
ここでは下記のふたつのポイントにフォーカスしてご紹介しておきます。

(1)取引現場への技術導入
顧客がモノを買う。その取引形態自体が、新技術の導入により様変わりしはじめています。
ストリーミングやシェアリングのサービスが当たり前になって、物品は手元に保有しておくのではなく、必要なときだけ借りるというスタイルが定着しつつあります。だとすると、事業者は顧客との関係を長く維持する必要に迫られます。ファンづくりの勘どころを持っていると有利です。
(2)消費に対する顧客の動機
消費活動に利便性や効率だけを求めるのではなく自分のこだわりや納得感を満たす動機が増えてきています。
モノを買うだけなら家から出る必要はないのですが、お気に入りの店にわざわざ出かけたりしますよね。
自分の価値観を表す消費行動が、より身近な対象に移りつつあります。
「同じ買うならこの人から」、「応援したいから買う」という顧客のこだわりは、新規参入者にとって大きなチャンスです。

ビジネス環境が変わる、という現象は大抵の場合、新しい技術やコンセプトによって市場全体のツールや業界のルールの変化として現れます。
こうした変化を牽引できる側であればよいのですが、変化に追随しないといけない立場であれば逐一対応するのは苦労を要します。
何より精神的に疲弊します。

それらに比べると顧客の価値観の推移ははるかにゆったりしています。
関心の対象は矢継ぎ早に変わるかもしれませんが、それぞれ「好き」か「嫌い」かを判別する基準は、一人の人間の中でそうそう変わるものではありません。

顧客の「好き」になるという気持ちの深いところをつかんでいく。
「ファンづくり」活動はそこに照準をあわせます。

初心からブレることなくポリシーを磨き続ける

前にも言ったとおり、すでに目の前にいる顧客に向き合って、さらに貢献しようとするところから始まります。
産業界全体が大量生産・大量消費の時代を経たことで、目の前の顧客に向き合うという商いの本質が失われかけていたのですが、顧客とのコミュニケーションコストが劇的にさがった今こそ、そこに立ち戻る時期だと私は考えています。
どんな事業であっても起業するということは、経営者は自らが顧客に貢献することを決められたのだと思います。
どんなふうに貢献するのか。
その事業の本質を貫かないとあなたの顧客はファンになってくれません。
逆に言えば、ファンづくりにまい進することは、初心からブレることなくポリシーを磨き続けることになります
強靭になります。

これがファンづくりをお勧めするおもな理由の三つめ、「ポリシーを強くする」の意味です。

起業準備中に顧客のファン化を意識しておくことは、あとあとの事業改善に効いてきます。
これをお読みなった方には、是非とも関心を持っていただけると嬉しいです。

何より、「眠れない夜」が続いたときに最も心の支えになるのは、自分の事業の価値をはっきり認めてくれている顧客の存在です。

このとき「ファンがいてくれてよかった」と心の底から感謝できることは間違いないです。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 池田 孝治氏
(株式会社エストVISION 代表取締役社長)

学生時代からマーケティングを専攻し、大手エンタテイメント企業のマーケティング担当として従事。
事業を創業した際に必要な顧客は集客活動ではなく「相手に貢献したいという思いが連れてくる」を信条として商いの理想を追求し続ける。
業種にとらわれず多数の事業で「ファン作り」のメソッドを提供。

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ドリームゲートアドバイザー 池田 孝治氏

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