【ファンをつくる経営】
人気ラーメン店とハイジがコラボ?
意外性に隠されたファンづくりの秘訣とは?

営業・マーケティング

執筆者: 池田 孝治

アルプスの少女ハイジ×げんこつラーメン店、まさかのデュオ。
全国に200を越える店舗を展開するラーメンチェーン「らあめん花月嵐」の期間限定メニューに、この1月から「チーズ味噌ラーメンおんじ」が登場しました。「おんじ」とは、近年TVCMでラップも披露した「アルムおんじ」のこと。

そう、1970年代に人気を博したTVアニメ「アルプスの少女ハイジ」の重要キャラクターです。

そのアルムおんじが、実は日本のラーメンに深い関心を抱いており、修行の結果作り上げたのがこの「心温まるラーメン」なのだと、ホームページには驚愕のストーリーが明かされています。おんじ自身も「チーズと味噌による奇跡のマリアージュじゃ!」とハイジやクララを前に自信満々のご様子です。

「らあめん花月嵐」といえば、熟成タレと背脂が印象的な「嵐げんこつらあめん」が主力商品なのですが、かねてより期間限定メニューにも力を入れてきました。各地方の特色や食材を採り入れて独自開発したものや、有名店とコラボしたものなど、常に数種類の期間限定メニューが提供されています。
いずれの商品も特徴的なルックスとロゴでアピールしてくるので、店頭のメニュー表示板を見てもどれを選べばよいか迷ってしまうほどです。

バラエティに富んだメニューに加えて投入された「チーズ味噌ラーメンおんじ」。
同アニメの放映から今年で45周年ということでの記念企画とのことですが、それにしても意表をついた商品です。

なぜ、こんな企画にチャレンジしたのでしょうか。あなたはどう考えますか?

顧客にファンになってもらうメリット

飲食業に限らず、どんなビジネスでも顧客が自分たちの商品やブランドのファンになってくれることは、経営にとって大きな助けになります。

(1)販促の手間や費用をカットできる

ファンになってくれた顧客は、類似の商品、競合の商品を選ぶ可能性が低くなります。毎回選んでもらうために販促や営業の手間をかけなくても、ファンの顧客は名指しで買ってくれます。二度目に買ってもらうためのコストは、初めての顧客を獲得するためにかかるコストの約1/6だと言われています。自ら何度も買ってくれる顧客が多くなれば、販促の手間や費用が抑えられます。

(2)リピートを加速させる

ファンの顧客は納品まで少し待たされたり、事前に予約が必要だったり、といった障壁を乗り越えてくれる可能性が高くなります。例えば、何かを買い替えようとしたとき、自分がファンであるブランドのものが運悪く品切れていた場合、その場で手に入る他のものを選ばずに、入荷まで買い替えを待ってくれたりします。

(3)新たな顧客の獲得

さらに、ファン度が強くなった顧客は、新しい顧客を連れてきてくれることがあります。
友だちが使っているものを見て、その良さに気づくという経験は少なからずありますよね。でも友だち自身が大して気にもとめずに使っているときは、自分もすぐ忘れてしまいます。ところが、それを何気なく褒めてみたときに友だちが嬉しそうな表情をしたり、熱く同意したり、補足説明してくれたりするからこそ、自分も実際に使ってみよう、という意向につながるのです。

ビジネスのファンづくりで最初に取組むべきこと

そんなありがたいファンを顧客のなかに増やしていくには、どうしたらよいのでしょうか。
自分のビジネスの分野では、ファンを増やすことが想像しづらいというケースも多いものです。そんなときはファンが多いとされる分野を参考にしてみましょう。

冒頭にご紹介したラーメン店というのも、ファンの存在がよく知られている業界です。
ラーメンという食品自体に熱烈なファンが多いうえに、彼らは好きになった店をきちんと崇めます。おいしそうな写真を投稿します。

ラーメン店にファンがつくことが多いのは、実は顧客をファンにする際に欠かせないプロセスが隠れているのですが、その説明は別の機会に譲ります。ここでは「らあめん花月嵐」を参考に、顧客のファンづくりにとって、まず重要なポイントを紹介します。

顧客を自分のビジネスのファンにしようとする際に、最初に考えて欲しいのは、顧客に対する自社の提供価値の本質は何か、ということです。

「提供価値の本質」とは、なかなか堅いイメージの言葉です。平たく言ってしまうと、創業時に事業を選んだ動機や、絶対に譲れないこだわりなどの核のことです。

例えば、ラーメン店という同じカテゴリにあっても、家族でラーメンを気軽に楽しめる空間を提供したい店と、魚介系スープで日本一を極めたい店では、価値の本質はまったく別だといえます。

ファンになってくれる顧客とは、この本質の中身を支持してくれる顧客です。支持してもらいやすくするためには、それを「わかりやすく」、「ユニーク」で、「シンプル」なものに磨き上げることが大切です。

企業の方から「自社ブランドのファンを増やしたいのに上手く進まない」とのご相談をいただいたときに、この価値の本質がそもそも曖昧であったり、自分ではわかっていても顧客には伝わっていなかったり、といったことが原因であるケースは、実は結構多いのです。

「ファンになる」というのは、何かを支持し、応援する、という態度を指します。
ということは、何を支持し、応援するのか、はっきりしないもののファンにはなりようがないのです。

あなたが自社のビジネスのファンづくりに取り組むときは、この提供価値の本質をまずは磨き上げてください。

らあめん花月嵐に見る、「提供価値の本質」の秘訣

さて、先に取り上げた「らあめん花月嵐」の価値の本質はとてもユニークなものです。
定番メニューに「げんこつらあめん」という背脂ちゃっちゃ系の割と特色のはっきりしたラーメンを出している一方で、オーダーを決め兼ねるほど多彩な期間限定ラーメンも提供しています。
店の提供価値を顧客にしっかりと伝える目的からすると、互いのイメージがぶつかり合っているようにも見えます。「シンプル」ではないようにも見えますよね。

ほとんどのラーメン店は、顧客に自分たちのファンになってもらうときに、支持されるポイントを「味」第一に集中することが多いです。だからユニークさを極めるためには、あれもこれも用意するのではなく、むしろ削ぎ落してシンプルにする方向が効果的です。
醤油、味噌、塩、3種類から選べる店もよいですが、「魚介系醤油とんこつ」のように専門特化型の店のほうがわかりやすいし、ファンがつきやすいことは想像に難くないのではないでしょうか。

「らあめん花月嵐」の目指すところは、それとは少し異なります。
もちろん味をないがしろにしているわけではありません。商品の売りである味には十分にこだわっているのですが、原点であるげんこつにこだわり過ぎることなく、日々新しいラーメンの開発に取り組んでいます。
もちろん大手事業者だからできる、という背景はあります。ただ、彼らは新製品の開発スケジュールをなんと3年先まで公開しています。並行して開発の裏話も公開しています。
それらを見ると、スタッフの人たちが全国のラーメンを常に探求していることがよく伝わってきます。そこから得たヒントも、限定商品の企画に反映されています。

全国のラーメン店の情報が集まった投稿サイトはよくありますが、彼らは情報を提供するのではなく、実店舗で実際に全国のいろいろなラーメンを食せる体験を提供しつづけているのです。ラーメンの進化とバリエーションをほぼほぼ楽しめる、そんなリアルなフロントなのです。そんな店はほかにありません。

彼らはラーメンを文化としてとらえ、顧客にラーメンをありとあらゆる形で楽しんでもらうことを、はっきりミッションにしています。冒頭で紹介した「アルプスの少女ハイジ」を冠したラーメン、というチャレンジも、そのミッションの下だから意味があるのです。

自分たちの価値の本質をよくわかっているから、顧客も安心して期待してくれます。この店に対して、どんな期待が持てるのか、何を応援すればよいかを顧客も知っている。
だから、ファンになりやすい、ということです。

あなたがこれからラーメン店を開こうとしていても、同じようなことをする必要はまったくありません。他店の上辺を真似ようとするのは、むしろ逆効果です。
ポイントは、自分自身のビジネスの本質のなかからユニークさをあぶり出すこと。それがどのように顧客に役立つのか。まずは自分たちが、その価値をはっきり知る。ここがファンづくりのスタート地点ですが、成功の可否のほとんどがかかっています。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 池田 孝治氏
(株式会社エストVISION 代表取締役社長)

学生時代からマーケティングを専攻し、大手エンタテイメント企業のマーケティング担当として従事。
事業を創業した際に必要な顧客は集客活動ではなく「相手に貢献したいという思いが連れてくる」を信条として商いの理想を追求し続ける。
業種にとらわれず多数の事業で「ファン作り」のメソッドを提供。

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