人気絶頂!嵐の活動休止宣言の衝撃から、
顧客の購買心理をあぶり出す。

営業・マーケティング

執筆者: 池田 孝治

嵐の活動休止の発表と、これから起きること

人気グループの嵐が2020年いっぱいで活動を休止することを発表したときの衝撃は今も記憶に新しいところです。もちろん各メディアでは大騒ぎだったのですが、身近なところでもかなり話題にのぼったのではないでしょうか。
人気絶頂期の発表だけに、とにかくビックリという反応があちこちで見られました。「あちこち」どころか、ご自身が衝撃を受けた!という方も少なくないでしょう。

発表同日の夜に緊急開催された記者会見では、メンバー自身がそれぞれに「この5人でなければ嵐でない」といった主旨の発言をしていました。1年にわたり事務所の人も交えて何度も何度も話し合って意見をまとめたのだそうです。

「ドリームゲート唯一のファンづくりアドバイザー」の観点から堅いことを申し上げますと、顧客に対する自分たちの提供価値の本質を本当によく見据えた判断だと思います。

長い目で見れば、もっともファンの方を大事にする選択とも言えます。突然の衝撃は大きかったし、今も辛い思いのファンの方はたくさんいらっしゃると思いますが、時間が経つほど彼らの判断への評価は高まるのではないでしょうか。

さて、この嵐の活動休止関連の記事では、残りの期間の売上が今までに増してスゴイことになるとの予測や、彼らのファンクラブの会員がいっきに10万人増えた、というような内容も見られます。
そう言えば昨年9月には安室奈美恵さんの引退という芸能界の大きな事件がありましたが、このときも彼女のベストアルバムやライブDVDが記録的に売れました。

少し古い話で恐縮ですが、1970年代後半に人気だった女性アイドルグループ「キャンディーズ」も、解散前のラストシングル「微笑がえし」では悲願のオリコンチャート第1位を(ついでに「ザ・ベストテン」の第1位も)獲得しました。レコードセールスが、それまでの彼女たちのヒット曲の2倍以上を記録したのです。
このように、目の前からいなくなる人、もうすぐ会えなくなる人には、応援する人が増えるという現象がよく起きます。

突然現れる購買者。どこから来て、何をするのか。

この現象は芸能人だけ、あるいは「人」だけに限りません。

老舗百貨店が長い歴史に幕を下ろすときも、閉店日前からたくさんの利用者が店頭に戻ってきます。
もちろん「売り尽くしセール」が目当てでやってくる人もいます。でも、セール品でない普通の売り場での買い物も活性化します。ここで買ったところで今さら閉店の決定が覆ることがないことくらい百も承知で、それでも買う人がいます。

近所のスーパーやコンビニが撤退するときでも、閉店日前に売り場が活気を取り戻します。ここにも安売り目当ての人がいますが、普通の商品をわざわざ買いに来る人も多いのです。

彼らは誰なのでしょうか。そして、何をしているのでしょうか。

どんな業種・業界であっても、積極的に応援してくれる顧客の存在は事業主にとってありがたいものです。なんとなく買ってくれる、使ってくれる顧客よりも、指名買いをしてくれたり、とりわけ気に入って使ってくれる顧客は、その気持ちが純粋に嬉しいだけでなく、売上や利益に大きく貢献してくれるからです。

こういう人たちを、ビジネスの領域でも、わかりやすく「ファン」と呼びます。
「嵐のファン」や「安室奈美恵さんのファン」、あるいは「浦和レッズのファン」「東野圭吾さんのファン」など、人気商売の分野では「ファン」がいることはよく知られています。
ビジネスの領域でも意外と「ファン」はいます。例えば、「アップル製品のファン」「マツダ車のファン」、高額商品でなくても「CoCo壱カレーのファン」「ハーゲンダッツアイスクリームのファン」といった具合です。

「なるほど、ハーゲンダッツ好きの人のことか」と思ったかもしれませんが、少し違います。
単に「好き」なのと、「ファン」であることは違うのです。

ハーゲンダッツアイスに言い訳する理由

「ファン」の語源は“fanatic”、「熱狂者、狂信者」という語の短縮です。
熱狂者という訳語のイメージとは異なり、ビジネス領域でのファンは大抵の場合、見た目はいたって冷静です。

大きな違いは上述のように指名買いをするなど、対象の事物に一定以上のこだわりを見せてくれることです。
上の例で言えば、アイスクリームを選ぶ際に、「えーと、今日はハーゲンダッツにしようかな」という態度ではなくて、条件が許せばハーゲンダッツをまず最初の選択肢にする人がファンです。

「いくらファンだからって、いつもハーゲンダッツばかり食べないのでは」というツッコミがあるかもしれません。確かにファンといえども「今日はスッキリしたシャーベットにしたい気分」ということもあるでしょう。
ただ、ファンはこのとき「今日はスッキリしたいので、ハーゲンダッツではなく、シャーベットにしよう」と、下線部のエクスキューズが脳内をよぎります。冗談ではなく、これの「有る / 無し」が、一線を画します。これが「有り」の人は、自分の最初の選択肢がいつもハーゲンダッツであることを知っているのです。

つまり「ファン」というのは、自分がファンであることを自覚している人なのです。

顧客を自分のビジネスのファンにしたいときには、この「自覚をうながす」ことが欠かせません。
あなたの商品を繰り返し選んでくれている人でも、自身がそれを繰り返し選んでいることに気づいていなければ、次回はたまたま目についた別の商品を選ぶかもしれません。そういう意味でも、自覚してもらうことはとても重要です。

接客の場面が重要な業種などでは特に、ファンを増やす(または「リピーター」を増やす)ために、顧客満足度を高める取り組みをしている企業も多くあります。
せっかく一所懸命努力して顧客満足度を高めても、今ひとつファンが増えている実感が得られていないとしたら、それは満足を感じている顧客、好きな気持ちを芽生えさせている顧客自身が、その事実に気づいていない、自覚していない可能性が高いです。

ファンになる人の脳内処理

ファンである自覚はなぜ必要なのでしょうか。
自覚していないと、そのことを簡単に忘れてしまうからです。

人間は日々の生活の中でさまざまな情報を受けていて、その中から自分にとって「良いこと」「悪いこと」をあまり意識せずとも抽出しています。「良いこと」は再現し、「悪いこと」は回避したい本能がそうさせます。「良いこと」には「好き」という感想を持ち、「悪いこと」には「嫌い」という感想を持ちます。
ところが次から次へと新しい情報がやってくるので、ほとんどの「良い / 悪い」「好き / 嫌い」は詳しく意味づけされる前に押し流されてしまいます。
なぜなら脳内では膨大な量の情報を処理するために、さまざまな処理の効率化が図られています。すべてを均等に扱っていては時間もかかるし疲れてしまうからです。今すぐに意味づけする必要がないと判断された大半の情報は、そのままスルーされて、その後何らかの機会がなければ顧みられることがありません。
一瞬は得られた「好き / 嫌い」という感想も、そのままでは日々何かと忙しい人たちに忘れられてしまうのです。
自分が何かのファンである、という「気づき」は、その取捨選択の基準に影響を与えます。自分にとって重要な事柄である、とのフラグが立つのです。
さらに度合いが強いと、すぐに呼び起こせる記憶領域にとどまります。思い出しやすくなる、ということです。当たり前のことのようですが、人間はしょっちゅう思い出すことは、なかなか忘れません。
ありがたいことに、一度「ファンになった」と自覚したら、顧客がそれを忘れる可能性はかなり低くなるのです。

さらに人間の脳は自分の判断を正当化したがる傾向があります。「ファンである」自覚は、その対象のよいところを見つけ出すよう働きかけます。脳が自分の判断が正しかったことを裏付けたいからです。これが応援する態度につながっていきます。

ただ「好き」なだけの人と、「ファナティック」との違いは、こうしてできていくのです。

顧客が思わずファンになる最強の手法

自覚の重要性をご理解いただけたでしょうか。

顧客のために努力しているビジネスであれば、その恩恵を受けている顧客のなかに好意的な態度が醸成されていても珍しくはありません。
であれば、そういったグレーゾーンの顧客に、自身が持つ好意を自覚してもらうことで、真正のファンのゾーンに引き込むことができるのです。ファンという存在とは無縁、と思い込んでいらっしゃる業種・業界ほど、自覚を促していないことがファンのいない理由だったりします。

では、どのようにして自覚をうながすのか、が次の問題ですね。

自覚のきっかけを提供する方法はいくつかありますが、ここでやっと冒頭の話題につながります。
いつもあって当たり前だと思っていたもの、恩恵を受けることが当然になっていたことが、あるとき突然なくなる。
「喪失」。これは自覚のきっかけとして相当強力なものです。
この場面に出くわすと、どんな人でも大きな影響を受けます。感情が動きます。グレーゾーンから大量にファンに動きます。

いつも使っていたけれど、存在することが当たり前になって、その便利さに気づかなくなっていた店舗。あるいは、あって当然だったので最近は足が遠のいていた店舗。これらがなくなるという実感は、自分のなかの気持ちに気づくきっかけになり、購買という行動にあらわれるのです。
だからといって、あなたのビジネスを本当になくしてしまうわけにはいきません。ただ、なくなったときのことを想像させるだけでも、顧客の中にある好意や依存の状態に気づいてもらうことができます。

今までなかった売上をつくり出す秘訣とは?

アーティストのファンクラブの多くは、コンサートチケットの販売機能を担っています。会場の収容力より希望者が多いケースではファンクラブ会員が優先されることも多く、先般の嵐のファンクラブ入会の急増も、来年のコンサートを見ておきたくなった人たちの応募だと言われています。

この人たちは、いままでTV番組等で嵐を観るのは大好きだけれども、コンサートに行く意向までは持っていなかった、ややグレーゾーン寄りの顧客だったと言えます。活動休止が発表されなければ、多くは来年のコンサートチケットも申込まなかったかもしれません。が、2021年以降の想像が、コンサートを生で観ておきたい気持ちに気づかせ、今までなかった需要をつくったのです。

実は、この喪失感を自覚のきっかけにする、というのは相当に上級な手法です。
間違えてほしくないのは、「毎日が閉店セール」みたいなことをお薦めしているわけでは決してないということです。
そのまま自分のビジネスに応用する、というよりは、今回は「顧客をファンにするには自覚させるきっかけが必要」ということを、まずはご理解いただくための事例だとお考えください。

どんなことがきっかけになるのか、を知るためには、ご自身が何かのファンになる過程での自分の気持ちに耳を傾けてみましょう。この理解が進むと、今までなかった売上の創出につながります。

私は、ファンづくりのご相談をいただいたお客様や、「ファンをつくる経営」セミナーを受講くださる方に対して、「ご自身がファンだと思うブランド(商品名、店名、社名など)は何ですか?」とよくお尋ねします。相手の業種にもよりますが、即座に答えられる方は驚くほど少ないです。特にご自身の事業をお持ちの方、経営に近い方ほど少なく、2割程度です。「競合」や「ベンチマーク」にあたる企業が気になるのは当然なのですが、自分が何かのファンになる気持ちにももう少し関心を持ってほしいと感じます。

ぜひとも自分自身の「顧客としてファンになる気持ち」を、じっくりと見つめてみることで、ファンをつくる経営のヒントを実感してください。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 池田 孝治氏
(株式会社エストVISION 代表取締役社長)

学生時代からマーケティングを専攻し、大手エンタテイメント企業のマーケティング担当として従事。
事業を創業した際に必要な顧客は集客活動ではなく「相手に貢献したいという思いが連れてくる」を信条として商いの理想を追求し続ける。
業種にとらわれず多数の事業で「ファン作り」のメソッドを提供。

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