【ファンをつくる経営】
映画「ボヘミアン・ラプソディ」大ヒットに見る、
あなたの事業のファンを増やす秘訣

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 池田 孝治
ドリームゲートアドバイザーの中で唯一、「事業のファンづくり」を得意としています。どのような業種であっても、売れ続けていくためにはあなたの事業の熱烈な「ファン」になってもらうことが大変重要です。

あなたの事業のファンを作るために、皆さんの身近にあるモノやコトを例に、「ファンづくり」について解説していきます。

海外ビジネス

2018年11月9日に公開された映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒット、年が明けた今(1月16日現在)でも絶賛上映中です。
このコラムをお読みの方にも、映画館でご覧になった方は結構多いのではないでしょうか。
「ラスト21分」、本当に熱く盛り上がったし、泣けましたね。

11月公開の映画というのは通常、翌月までに冬休み向けのファミリー映画や娯楽大作にとって替わられることが当初から折り込み済みです。
しかし「ボヘミアン・ラプソディ」が1月になっても観客を集め続けているのは、文字とおり異例の事態ということです。

長年にわたり数多くのヒットを飛ばし続け、ある年齢層には特に絶大な影響を与えたクイーンのストーリーだけに、本作も一定の観客動員は公開前から見込まれていました。
とは言え、映画館にまで足を運ぶのは、かつての洋楽好き、クイーン好きのなかでも濃いところだと予想されていたと思います。

フレディ・マーキュリーの急逝から27年、目立った活動のない期間もあって、これほどの大ヒットに波及するとは配給会社も想像し得なかったといいます。

映画が感動作としてよくできていた、評判がSNSで広がった等々…。ヒットの要因はすでにさまざまに論じられていますが、まずはベースとなるクイーンのファンが配給会社の目算より強く根付いていたということでしょう。

エンタメ業界に限らず、どんなビジネスでも顧客が自分たちの商品やブランドのファンになってくれることは、経営にとって大きな助けになります。顧客をしっかりと自分たちのファンにしているビジネスは安定して活力がある印象を与えます。

では、どうすれば顧客を自分のビジネスのファンにできるのでしょうか。自分のビジネスでは想像ができない、という場合には、ファンの存在が当たり前の分野をじっくり観察することが参考になります。

ということで、このコラムでは「ボヘミアン・ラプソディ」現象から、『ファンをつくる経営』のヒントを抽出してみましょう。

クイーンはなぜ多くのファンを獲得できたのか

ポピュラーミュージックのバンドやアーティスト(とレコード会社・所属事務所)にとってどれだけファンを増やせるか、は重大な関心事です。

クイーンと同時代に活躍したバンドは他にも多数ありました。では、当時レコードセールスで比肩した人気バンドたちは、「ボヘミアン・ラプソディ」のような映画の題材に今でも成り得るでしょうか。

想像でしかないですが、同様の大ヒットは期待できないように思いませんか。だとすると、クイーンと他のバンドは何が異なっているのでしょうか。

端的に言うとクイーンはファンに支持されていた本質にブレがなかったことが大きいです。

ロックバンドにとって「本質」を維持することの最大の障壁は、メンバーの脱退やバンドの分裂です。ボーカリストやリードギターの脱退、コンポーザーの交替は当時の人気バンドにも数多く生じました。

主要なメンバーが入れ替わると音楽性も変わります。それ自体が悪いわけではありません。実際、メンバー交替直後に大化けしたバンドもあります。

ただ、同じバンド名であってもメンバーが変わると性格がそれほど変化する、ということです。

映画の中で、フレディが自身のソロアルバムのために雇ったミュージシャンがみんなイエスマンで全然だめ、と嘆くくだりがあります。

クイーンの音楽性は誰かひとりではなく4人の相互作用のうえに成り立っていたことに気づくのです。

結局彼らは不可抗力に見舞われるまでの20年間、同じ4人で楽曲を作り続けました。音楽表現上はさまざま変化があったとしても、ファンが支持していた本質の部分は、変わることがなかったのです。

ファンづくりを行う上で忘れてはいけない3つのステップ

ビジネスにおいて顧客のファンを増やす場合にも、同じく「本質をブレずに継続させる」ことは大事なポイントです。
それでは、ビジネスにおける「本質」とは何でしょうか?

主要事業や主力商品のジャンルだと短絡しがちですが、それではクイーンを「ロックバンド」として括る大雑把さと同じですよね。

「自分たちはどんな価値を特に顧客に提供したいのか。」「もっとも届けたい情緒は何なのか。」「どこに一番こだわっているのか。」そこに本質があります。

それは、事業を続けていくもっとも大切な動機、あるいは創業時に事業を選んだ「思い」の核のことです。

ファンになるということは、何かを支持して後押しするということです。
顧客から支持してもらうためには、支持される主張や価値観などが必要です。だから事業の本質にあるユニークさ、他との違いをきちんと伝え、評価してもらうのです。

バンドの喩えでいうと、「音楽性」とか「クイーンらしさ」というものです。

他との違い、独自性を顧客にきちんと伝えたいのですから、「社会に貢献する」とか「未来を創造する」というような、経営理念やスローガンにありがちな耳触りのよい言葉に寄せてしまってはいけません。

こだわりをそのまま表現した素の言葉や、武骨だったり尖ったりしたままの表現のほうが伝わります。
フレディたちがシングル・リリースする楽曲を「マイ・ベスト・フレンド」ではなく、当時の常識から逸脱した「ボヘミアン・ラプソディ」にこだわって成功するエピソードはとても象徴的です。

ビジネスの本質、独自性が顧客に伝われば、それに賛同してくれる顧客が必ずいます。

次は、それをクイーンのように継続させることを顧客に示します。

理念に賛同した顧客は、それがブレることなく継続することに納得したうえで、ファンになるからです。

何かのファンである顧客は、例えばその事物のことを考えたり、記述を読んだりすることにいくらか時間を使います。
周囲の人とそれについて話すこともあるし、自分自身の価値観を重ね合わせることもあります。

そのため、ファンになる拠り所となった主張や価値観が変わることなく継続するかどうかを常に評価しています。必ずしも自覚はしていませんが、脳が無意識に判定しています。

ということは、主張や価値観が継続すると納得できるまではファンにはなってくれないのです。
まとめると、ファンづくりの最初のポイントとは、

①ビジネスにおける主張や価値観をはっきりさせる
②顧客にそのユニークさを伝える
③それが継続すると納得させる

の3ステップです。

簡単なことのようですが、意図しなければなかなかできないことです。

ファンづくりは新しい顧客も引き寄せる!

「ボヘミアン・ラプソディ」現象からはもう一点、ファンづくりの重要さへの示唆も見い出せます。

同作は当初クイーンを知らない若い層にはアピールしないだろうと予想されていました。

ところが、お子さんをお持ちの方ならご存じのとおり、「We Will Rock You」はほとんどの子どもたちが知っています。
今や運動会の組体操、応援合戦、高校野球のスタンドの応援歌などでの頻出曲なのです。

ただ単に歌を聞いたことがあるというレベルではなく、気分が高揚する状況でみんなと一緒に例のストンプ・ストンプ・クラップの繰り返しをたっぷり経験しているので、この楽曲への親近感・好意度は相当なものです。

映画の大ヒットには、リアルタイムのクイーン世代から徐々に年齢層が拡大したことも寄与しています。いま上映館に足を運んでいるのはおもに高校生です。

感動作との評判を聞いた若い世代の映画好きが「でも自分には関係ない」と見過ごさないだけの馴染み深さを「We Will Rock You」が何年も前から下ごしらえしていたわけです。

年末からTVで放映され始めたCMで同楽曲を使っているのは、そんな状況を察してでしょう。

実際に映画を観に行った彼らにとっては、クイーンはもう少し身近な存在になるでしょう。
改めてサントラを聴く子もいるかもしれません。

このように今も新しいファンを開拓している同曲ですが、ブライアン・メイは「新しい客層を取り込んでやろう」とか「後世まで運動会で使われる曲を」などという意図で作ったわけではもちろんありません。

いつも目の前にいるコンサートの観客たちを盛り上げよう、との思いで始めたものが、今の状況につながっているのです。

「ファンづくり経営」も、いま目の前にいる顧客との関係をもっと有意義に深めようとする考え方です。
既存顧客を大切にする経営方針は、新しい見込顧客を正式な顧客としてとりこむ効果もあります。

現時点で顧客にファンがいないビジネスも、そもそもファンと縁がないのではなく、ファンをつくる動きをしてこなかっただけです。新しい顧客を集めることに気をとられていたのかもしれません。

これから正しいプロセスで「ファンづくり」に取り組むことで、顧客はあなたのビジネスのファンになって経営の安定をもたらしてくれるでしょう。

さて、「ボヘミアン・ラプソディ」現象をもたらした要因の最後のひとつは、同作のラストで語られるヒストリーにあります。

フレディ・マーキュリーの夭逝という悲痛な事実です。1991年11月24日、クイーン4人が揃う機会は永遠に奪われ、世界は悲しみと喪失感に包まれました。

彼らがついぞメンバーチェンジしていなかったことも喪失感に輪を掛けたと感じます。

人の生死をマーケティング観点で語るつもりは毛頭ありませんので、喪失の情緒の解説については別の機会に譲ります。

いずれにせよ、彼らと共に20年を駆け抜けたファンにとってクイーンの時代はここで時計が止まりました。だからこそ十分すぎるほどの再現性で甦らせてくれた2時間15分にファンは惜しみない讃辞を贈ったのでしょう。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 池田 孝治氏
(株式会社エストVISION 代表取締役社長)

学生時代からマーケティングを専攻し、大手エンタテイメント企業のマーケティング担当として従事。
事業を創業した際に必要な顧客は集客活動ではなく「相手に貢献したいという思いが連れてくる」を信条として商いの理想を追求し続ける。
業種にとらわれず多数の事業で「ファン作り」のメソッドを提供。

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ドリームゲートアドバイザー 池田 孝治氏

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