ユーザーエクスペリエンス×ゲーミフィケーションで成功しているビジネス事例

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

photo credit: Wheelmap App iPhone via photopin (license)

「ユーザーエクスペリエンス(UX)」はビジネスを成功させるために重要な要素として、近年よく見かけるキーワードになっています。しかUXを単に使いやすさ、便利さ、手軽さといった次元で考えるのは浅薄でしょう。ユーザーエクスペリエンス、つまり「ユーザーに何をどのように体験してもらうか」という視点でビジネスやサービスを考えることが重要といえます。

そうしたなか、2010年頃に登場した「ゲーミフィケーション」というキーワードがあります。その名のとおり、ゲームデザインの技術やメカニズムを利用したアプローチが、UXを考える上で非常に有効という事で、ユーザー体験を如何に快楽的にするか、という次元での競争が行われています。

「ゲーミフィケーション」というキーワードが登場してから5年が経過し、最近ではあまり聞かなくなりました。ガートナーが発表している「テクノロジーハイプサイクル」によれば、ゲーミフィケーションは過度な期待のピーク期を過ぎて、「幻滅期」にあるそうです。
http://www.gartner.co.jp/press/html/pr20140903-01.html

しかし、調べてみると、ゲーミフィケーション的アプローチは確実に広がっています。今回は実際にゲーミフィケーション的なUXを仕掛けて成功している12の事例をご紹介します。

ベンチャー企業のゲーミフィケーション事例

まずはベンチャー企業のゲーミフィケーション事例をご紹介します。

ダイエットアプリ – ふとしの部屋

株式会社アクアが開発・リリースしたアプリ「ふとしの部屋」。
http://lab.aquacp.com/sp/futoshi/

アプリを開くと、いきなりストーリーが始まります。昔からの幼馴染だという男の子が登場・・・しかし彼はおデブちゃんになってしまっていました。彼を痩せさせる唯一の方法は、自分がダイエットすること。つまり、自分が痩せるためではなく「イケメンに会うため」にダイエットを頑張るという、恋愛(?)ゲーム的なアプローチがユニークですね。

説明文に出てくるシルエットはイケメンそのものなので、興味を刺激されて痩せた姿を見たくなるという仕掛けです。ちなみに、ダイエットを進めるにはアプリから提示される腹筋やスクワットをこなすのですが、スマホの加速度センサーなどを利用してカウントするという本格的な機能になっています。

2013年7月に登場してから30万ダウンロードを突破、App Storeのヘルスケア/フィットネスカテゴリーで1位を獲得したそうです。

レベルを上げる感覚が楽しい無料のオンライン学習サービス…Khan Academy(カーン アカデミー)

2006年に登場したKhan Academyは、数学、金融、化学、歴史、美術などの多岐に渡る分野をオンラインで学習できるサービスです。
https://www.khanacademy.org/

ネットに繋がってさえいれば、誰でも無料で利用することができるサービスなのですが、ゲーミフィケーション的アプローチとして、“Knowledge Map”と呼ばれる仕組みを用いています。これは特定の知識を得ることで、初めて次の知識を得ることができるというもので、例えばゲームでレベルを上げていくと、いける場所が増えたり獲得できるアイテムのグレードがあがるといった感じでしょうか。

インターネット白書2013-2014によれば、月間600万人超の利用者、4200本以上のビデオ教材と練習問題が提供されているそうです。

つまらない雑務もゲームにすれば楽しくこなせる…ChoreWars(チョアウォーズ)

Choreというのは「雑用、雑務」という意味の単語です。そしてChoreWars(チョアウォーズ)は簡単にいうとToDo管理サービスなのですが、このサービスではそうした雑務を「ゲーム」にしてしまったのです。
http://www.chorewars.com/

あらかじめタスクを入力し経験値を振っておくことで、それらを達成した際に自己申告すると、その経験値を得ることができます。すると、ChoreWars内の自分のキャラクターが成長していきます。また、家族や同僚などとチームプレイを楽しむことも可能です。

タスクを完了することで経験値を得て成長するという点と、チームプレイによって連帯感を持ちながらタスクを行える点がゲーミフィケーション的なアプローチなわけです。

薬をきちんと飲むとポイントがもらえる…服薬支援アプリ、マンゴーヘルス

DeNAに買収されたゲーム会社ngmocoの元幹部らが立ち上げたヘルスケアベンチャーです。
https://www.mangohealth.com/

基本的には服薬を促すリマインド機能と、服薬したことを記録に残す機能がベースのアプリなのですが、ゲーミフィケーション的アプローチとして、利用者は薬を正しく服用すれば一日に最大10ポイントを獲得することができ、ポイントが貯まればターゲットなど大型小売チェーンで使えるギフトカードに交換したり、寄付に充てたりすることができます。

薬を飲むという嫌な行為を、ちょっとした楽しみに変えているわけですね。

PRGゲームのような学習教材で成長中…すらら

以前にスマビ総研でも取り上げたベンチャー「すらら」は、日本のゲーミフィケーション・ベンチャーの好例でしょう。
http://surala.jp/

小学校高学年から高校生を対象に、国語・数学・英語の三教科を対話型アニメーション教材として提供しているのですが、ユーザーは最初に目標設定をして(目標課題提出期限、目標スコア)、RPG的世界観やレヴェルアップ制度を取り入れて、絶妙のバランスで高い次元でのゲーミフィケーションを実現させています。

リリースから4年ほどで全国66校の学校と約600の学習塾で採用、約28,000名の生徒が利用しています。また2014年12月にはNTTドコモ・ベンチャーズから資金調達も成功させています。

英単語をゲームで覚える…クイズタイマー

株式会社アソビエが運営するクイズタイマーは、英単語の暗記など、日々継続した努力が求められる学習をクイズゲームにしたアプリです。
http://www.quiztimer.com/

(1)「トレーニング」と「検定」2つのモードを楽しめるクイズゲーム形式にすることで、勉強の苦痛をやわらげる
(2)タイマー機能を備えることで「忘れ」や「サボり」を防ぐ
(3)正解問題数や成績に応じて星 やメダルといったポイントが加算されるといったゲーム要素によって日々のモチベーションを維持する

といった仕組みを導入することで、学習の習慣化を狙っているわけですね。

まるでゲームキャラクターのように、社員の評価を「見える化」…CIMOS

株式会社シンクスマイルというベンチャーが提供しているCIMOS(シーモス)というサービスは、社員の人柄や評価をバッジとして公開しているユニークな社員評価システムです。
http://5smile.com/vision/cimos

仕組みは、社員同士が、お互いの良いところを見つけ、仲間に対して「これを実現したね」と褒め、証としてその仲間に対してWeb上でバッジを与えあうというもの。このように、褒めるを“見える化”することで、社員同士で楽しく褒め合い、評価し合い、社員のモチベーションが活性化することを意図しているわけですね。

みんなの節約と比較して続けたくなる家計簿アプリ…Zaim

350万人が利用する家計簿アプリ「Zaim(ザイム)」。
http://zaim.net/

ゲーム感覚&ソーシャル要素で “続けやすさ”に特化していて、家計のグラフ化をはじめ、自分の家計簿を全国の利用者の統計情報と比較もでます。みんなが何にどれくらいお金を使っているか分かるので、競争心などで自然と節約につながるというわけですね。

また、データ入力後には到達度を示すバッチがもらえるので、これも自然と継続したくなる仕掛けになっています。

大手・有名企業のゲーミフィケーション事例

こんどは大手企業や有名企業のゲーミフィケーションの取り組みをご紹介します。

Nike+(ナイキプラス)

言わずと知れた、世界的スポーツ用品メーカーのNikeが提供している「Nike+(ナイキプラス)」というサービスは、ゲーミフィケーションの事例としてよく紹介されます。
https://secure-nikeplus.nike.com/plus/

Webサービスに登録すると、自分が1週間で走る距離や、減らしたいカロリーなどの目標を設定することができます。自分に目標を課すことで、行動を促し、それを自然と記録することができて、さらに世界中の人達がどのくらい目標を達成しているかを見れたり、成果を友達シェアできるという仕掛けです。

NiKe+に対応したアプリ「Nike+ Running」はGPS機能でランニング距離や消費カロリーを計測。また「Nike+ Training Club」というアプリを入れると、パーソナルトレーナーとしてトレーニングを指導してくれます。すべて無料で使えるサービスですが、センサー付きのシューズやスポーツウォッチ、リストバンドなどの関連商品もたくさん出ています。

じぶんクエスト

じぶんクエストは博報堂が運営するユーザー参加型のサービスで、参加ユーザーは観光地巡りや店舗巡り、スタンプラリー、スポーツ観戦回数競争などの「クエスト」と呼ばれるさまざまなゲームを無料で楽しむことができます。
http://www.zibunquest.com/pc/

スマートフォンで専用サイトにアクセスし、ソーシャルメディアのアカウントを登録するとゲームに参加できます。クエストの参加内容や到達状況をソーシャルメディアから他のユーザーにもシェアできます。クエストは企業が販促キャンペーンやイベントとして展開していますのが、ゲーム的にすることで、ユーザーが自ら積極的に体験することで、商品の理解、販促効果の向上を狙っているというわけですね。

muji passport(ムジ・パスポート)

無印良品のお店でお買い物したり、お店に入る(チェックイン)、あるいは口コミの投稿などでMUJIマイルが貯まる「muji passport」というアプリがあります。
http://www.muji.net/passport/

所有しているMUJIマイル数に応じて、お買い物で使える「MUJIショッピングポイント」をはじめとしたプレゼントがもらえます。ご優待価格でお買い物いただけるクーポンなども届くようなので、ポイント欲しさにアプリを使っていると、ついつい購入意欲を刺激されちゃうという仕掛けですね。

肌ポリー

化粧品メーカーのドクターシーラボがオンラインショップで展開しているゲームを活用した顧客活性化のサービスです。
http://www.ci-labo.com/games/

プレーヤーは、同社のサイトで会員登録し、ゲームに参加(無料)します。

1日1回、サイコロを振って、ゴールを目指す。1週間ごとにゲームが終了し、期間内に ゴールできたら5ポイントを獲得、さらに、1位のプレーヤーは2000ポイント、以下、2位は1000ポイント、3位は700ポイントを獲得できます。

そうした貯めたポイントはオンラインショップでの買い物に使うことができます。

ゲーミフィケーションをビジネスにいかすには

今回紹介した12の事例でもそうですが、ゲーミフィケーションをビジネスに活用したケースでは共通している項目が多いことに気づかされます。

もっとも大きな共通項は、「嫌なこと」を「楽しい事」に転換しているという点。ダイエット、ToDo管理、服薬管理、勉強、社員管理、家計簿付けなど、すべて普通なら嫌なこと、面倒なこと、続けるのが大変なことを、ゲーム的にすると楽しい事になり自発的に頑張るようになるわけです。子供のころ、ゲームに熱中しすぎた経験がありませんか。まさにそうした行動心理をビジネスに転用したのが、ゲーミフィケーションといえます。

ゲーミフィケーションで重要とされるポイントは3つあります。

・課題を与える(クエスト、ミッション、ランキングなど)
・報酬がもらえる(バッジ、経験値、レベル、クーポン、ポイントなど)
・交流できる(チャット、対戦、アバター、アンケート、SNS連携など)

それも、それぞれがとても小さく、すぐにクリアできたり手に入るようになっている設計が重要です。

例えばちょっとした課題でもクリアできると快感を感じますし、デジタルデータでしかないバッジやレベルアップといった報酬でも「嬉しい」ものです。これは実際に経験してみればすぐ理解できると思います。

こうした手法を活用して、営業パーソンのモチベーションを高めるようなシステムを販売している企業もあります。ノルマに追われて成績が振るわないと上司に叱られてヘトヘトになって仕事をするよりも、ゲームを楽しむような感覚で仕事に取り組めれば社員も自発的に動くようになり、自然と成果が上がるといった具合です。

ゲーミフィケーションについての手法や考察、体系化などはさまざまな書籍も出ていますので、より深く知りたい方はそれらをご覧ください。

特に世界最古のビジネススクールの1つとして知られている米ペンシルベニア大学ウォートン・スクールでは、世界で初めてゲーミフィケーションを体系化したコースを開設しています。日本語訳された書籍『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』も出版されていますので、興味のある方は、ぜひ一読されることをお勧めします。

執筆者:ドリームゲート事務局 宍戸

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