【飲食店開業M&A 第2弾】M&Aを利用して
飲食店を始めよう

事業計画

執筆者: 萩原洋

M&Aというと、「敵対的買収」や「買い叩き」、あるいは「ハゲタカファンド」などのようなネガティブなイメージを持つ方は少なくないでしょう。
実際、一昔前まではM&Aがらみの経済事件がマスコミを賑わしましたし、その後も外資系ファンドによる日本企業の買い叩きも横行していましたから無理もありません。

しかし、今ではこうした事件も下火になり、またM&Aの業界関係者による啓蒙活動もあって、だいぶイメージは改善されてきました。
その結果、現在行われているM&Aは、ほとんどが「友好的なM&A」になっています。

M&Aは、「合併・買収」を意味するもので、一般的には企業が事業を拡大するための手段として利用するものです。
しかし最近では、事業承継など中小企業の出口戦略の有効な承継方法として盛んに活用されるようになってきています。
また、以前はM&Aというと大企業同士の合併が多かったのですが、中小企業や店舗といった個人事業へと、その軸足はシフトしています。

こうしたことから、M&Aは既存の会社の経営戦略上の有効手段ではありますが、一方で起業・創業といったスタートアップ時の有効なツールにもなり得ます。
近頃は、M&Aを利用した個人レベルでの飲食店などの売買も目立つようになってきました。

そこで今回は、会社を早期退職した方、いわゆる脱サラした方が、一般的な開業方法ではなく、M&Aを利用して飲食店を開業する事例を通して、M&Aの有効性などについて解説していきたいと思います。

飲食店のM&Aとはどのようなもの?

M&Aは、正式には「Mergers and Acquisitions」と表記され、先にも述べましたが日本語では「合併・買収」と呼ばれます。
合併は複数の会社が統合してひとつになり、合併側の会社は存続し、合併された側の会社(被合併会社)は消滅します。
これに対し買収は、買収側の会社が買収される側(被買収会社)の経営権を買い取り、その支配下に置きますが、被買収会社は消滅することなく、買収側の会社の子会社やグループ会社のひとつとして存続します。
現在、M&Aの中心となっている中小企業・個人事業では、この買収の形をとるM&Aが多いようです。

中小企業などでは、急激な少子化により深刻な後継者難に直面していますが、こうした事業承継問題の切り札として注目されているのがM&Aです。
特に、小規模事業・個人事業が行うものを「スモールM&A」とも言い、最近、大手のM&A事業者などでも本格的に力を入れるようになってきています。

個人でM&Aを利用した飲食店の開業を考えた場合、この「スモールM&A」を行うことになります。
かつては飲食店に限らず、多くの小規模事業や零細企業では、早い段階から自分の子供に「技術や技能」、「経営のイロハ」、あるいは「帝王学」などを教え込み、自分が高齢になったら、子供に会社や店舗を任せることが普通に行われてきました
ところが、少子化から跡を継ぐ子供がなく、多くの店舗や零細企業が廃業に追い込まれています。
こうした後継者難の有効な解決策が、「スモールM&A」というわけです。

これにより開業する側からは、すでにノウハウがあり顧客をつかんでいる店舗や事業が手に入り、失敗するリスクも低くなるメリットがあり、売却する側にとっては店舗や事業などは存続して、働いていた従業員の雇用も守られます。
また、経営者は廃業すればそれまでですが、M&Aではまとまった売却代金も入ってくることになります。

先日、テレビの旅番組を見ていると、私の生まれ故郷のラーメン中華の店が出ていました。
創業から60年近く夫婦でやっている店です。この店の80過ぎの老夫婦のほかに20代の若い男性が忙しく働くところが映されました。
夫婦の孫かと思ったら、この店のラーメン・餃子に感動し、わざわざ東京から修行に来ていて、近い将来、跡を継ぐということでした。
仮に3〜5年技術取得のため無償で働いたとしても、その間の賃金を買収代金として「スモールM&A」すれば、店舗と顧客をそのまま手にすることができます

また、だいぶ昔の話ですが、私がよく利用していた郷土料理の居酒屋チェーンで、オーナーはマスコミ関係の事業を行う企業の代表も務めている方がいました。
オーナーは、居酒屋チェーン店のひとつを知り合いのサラリーマン夫妻に安く譲って本業に集中するといった、いわゆる「事業の選択と集中」を行ったと聞きました。

これらは「スモールM&A」の典型的なものです。
こうして見ると、飲食店を脱サラの人やまったく調理経験のない人が、M&Aを利用して開業するといったことは、意外と身近で行われているものであり、また、以前から普通に行われてきた開業方法のひとつであるということに、改めて気づかされます。

通常の飲食店開業とM&Aによる開業ではどちらが有利?

未経験の脱サラの方や、他業種からの新規事業展開の一環として飲食店を開業する場合、従来のゼロから始める方法と、前述のようにM&Aという形で行う方法があります。
また、前者は何もない状態から始める形態と「居抜き」といった店舗の造作などハードの面のみ引き継いで始める形態に分けられます。
それぞれのメリットやデメリットを比較して見ましょう。

ゼロからスタートする場合

最も基本的な開業方法です。
まず、調理技術の習得から始まり、開業資金の確保、物件探し、賃貸借契約、内外装工事、取引業者探しと契約、従業員の募集など、あげていったらキリがないほど、開業までにすべきことがたくさんあります。
そのうえ、開業後順調に経営できる可能性も未知数です。
ただ、自分の思い通りの店舗造りができること、また、苦労して成功した時の喜びや達成感は計り知れないものがあります。

こうした労力や時間を節約し、失敗のリスクを下げながら開業する方法にフランチャイズ(FC)加盟する方法もあります。
ただし、コストがかかること、本部に拘束されること、自分の考える店舗コンセプトが実現できないなどは避けられません。
また、FC本部選びを誤ると結局失敗するリスクが高くなってしまいます。

居抜き店舗でスタートする場合

飲食店開業の初期費用はかなり高額となってしまうものです。
これは主に、店舗の内外装工事や厨房機器の購入に大金を要するためです。
居抜き店舗であれば、かなりのコストカットが可能です
ただし、こちらも自身の考える店舗コンセプトと合わない場合、全部解体することにもなりかねず、かえってコストが増してしまうことも。
また、家主が居抜きを認めない場合もあります。
さらに、立地のよい居抜き物件を探すのが大変である点が課題といえます。

M&Aを利用して開業する場合

以前からあった開業方法のひとつですが、M&Aとった明確な形でM&A事業者が積極的に行うようになってきたものです。
他の開業方法と違って、はじめから成功した店舗を取得して開業できるため、失敗のリスクはかなり下がります。
また、利益が出ているのに後継者がいないためにやむなく廃業する予定の店舗が売買対象となることが多いため、比較的買収コストを抑えることもできます。

ただ、売却物件を探すのが大変であること、特に自分がやりたい分野の物件が少ないこと、引き継いだあとの従業員の対応を誤ると辞められてしまい、その後の店舗運営がうまく行かなくなるなど、注意すべきポイントもあります。

まとめ

近年M&Aは、「スモールM&A」に代表されるように、私たちのごく身近になってきました。
人生100歳時代と言われるようになり、第二の人生として飲食店開業を考える方も多くなってきたことと思います。
「スモールM&A」を利用する開業と、通常の開業との違いを知って、失敗しない開業の準備をしてください。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 萩原洋(有限会社銀河企画 特定行政書士)

外食FC立ち上げへの参画や自らも複数店舗の経営を行った後に独立。
フードビジネスコンサルタントとして20年のキャリアをもつ萩原アドバイザー。
飲食店等を長年経営し引退を考える経営者が、事業を他者に譲り渡す「事業承継M&A」に複数携わるなど、ゼロからの出店ではなく立地や顧客を引き継ぎながら経営を始めるという分野のご経験を豊富にお持ちのアドバイザーです。

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ドリームゲートアドバイザー萩原洋

 

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