留学生の採用と登用で差別化!
– インバウンド市場を開拓 –

人事・労務

執筆者: 田村 徹

私が住んでいる京都市では、近年のインバウンド(Inbound)観光ブームを受けて、宿泊施設(旅館業法に定められたホテル、旅館および簡易宿所)の開業ラッシュが続いています。

皆さんの中には、小・中・高校の修学旅行や卒業旅行などで京都へ来られたことのある方も多いのではないでしょうか。
以前であれば、これらの旅行者は、春の桜の時期と秋の紅葉の時期に集中していました。しかしながら、最近では、一年を通じて世界中から多くの外国人旅行者の方が観光を目的に入洛されています。

私の生活圏である京都市内の中心部では、年間を通じて、また曜日を問わず、国際色豊かな観光客の方々が、和柄の小物や京菓子などのお土産を買い、和食や和スイーツを味わい、そして浴衣や着物を着て街中で写真を撮り、また京友禅や京焼などの体験工房で作品づくりを楽しまれている光景を見かけるようになりました。

京都市では、2018年の1年間だけでも、900余の宿泊施設に営業許可を付与しており、今後も宿泊施設の新規開業は続いていくものと思われます。

日本政府は、少子超高齢社会に突入したわが国の成長戦略の目玉の一つとして、「観光先進国」を目指した様々な施策を打出し、推進してきました。その結果、京都市と類似した光景は、日本全国の各地でも見られるようになってきています。

東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年の訪日外国人旅行者数を4,000万人・訪日外国人旅行消費額8兆円とする目標値を掲げ、より一層の受入れ体制を確保し、外国人旅行者がストレスなく、快適に観光を満喫できる環境整備に向けて、政府一丸となって様々な対応を加速させています。

  • 2018年4月には「改正通訳案内士法」が施行され、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を有さずとも、有償で通訳案内業務を行えるようにするなどの見直しを実施。
  • 外国人旅行者の不慮のケガ・病気への対応に取り組む自治体では、「安心・安全対応相談窓口」の設置を推進。
  • 旅行会社が修学旅行の実施を希望する海外の学校関係者に対し、役立つ情報やノウハウを円滑に提供できるようにするためのマニュアルを作成。など

インバウンド観光で活躍する留学生たち

アルバイト

ドリームゲートのコラム『アジア人材の採用と安定雇用で現場力を強化-人手不足の悩みから解放される3つの提案-』(2019.05.15公開) の冒頭でもお伝えしましたが、在留資格「留学」で在留している中国、ベトナム、ネパールそして韓国などアジア諸国の若者たちの多くが、「資格外活動許可」を受けて、週28時間以内(学校の長期休暇中は1日8時間以内)を限度としてアルバイトに就いています。

インバウンド観光で賑わう地域や空港などでは、外国人観光客に対する接客対応を中心に、留学生がアルバイトで活躍する場が増えてきました。それらの留学生の多くが、積極的に日本社会に溶け込み日本の文化やマナーの理解に努めながら、日本語と母国語を使い分けて前向きに取組んでいます。

最近では、異文化コミュニケーションを通じて、多様な外国人観光客の習慣や嗜好に合わせた販売方法や品揃えを見直したり、更には、事業戦略の転換を図って新規事業へ進出したり、といった場面で留学生アルバイトの感性や意見を採り入れて成功している店舗や企業も増えつつあります。

一方、留学生にとっても、それらのアルバイトから得られるものは、日本での学費や生活費といった金銭価値だけではありません。日本の企業文化やビジネスマナー、そして社会人としての言葉遣いや行動様式を身に付ける貴重な社会体験の場となっている、という一面があります。

ボランティア

インバウンド観光において、留学生が活躍している場面はアルバイトに限定されている訳ではありません。

昨年、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が「TOKYO2020大会ボランティア」を募集したところ、約18万6千人の応募者があり、そのうちの37%を日本国籍以外の方が占めていたため、マスコミの報道などを通じて話題となりました。

この募集に先立って大学等が主催した説明会に参加した学生の中には、留学生も多く含まれていました。

このボランティアは、大会の開催期間中を通じて10日間以上を目途として、競技会場や選手村などの大会関連施設において、観客サービス、競技運営やメディアのサポートなどの大会運営に無償奉仕で参加し、日本人ボランティアと共に、世界各地から来日される方々との絆を深める大切な役割を担います。

また、東京都が募集していた空港、都内主要駅、観光地、競技会場の最寄駅周辺やライブサイトにおける観光や交通案内などを担う「東京2020大会 都市ボランティア」にも、同様に多数の留学生の参加が見込まれています。

インターンシップ

留学生が、インバウンド観光で活躍する切っ掛けは、他にもあります。
留学生の日本企業への就職支援を図るための一環として、中長期インターンシップを積極的に採り入れている学校が増えてきました。

外国人観光客の増加に伴って多言語対応できる人材を必要としながらも、異文化コミュニケーションに不慣れなため、まだまだ最初の一歩を踏み出せないでいる店舗や企業においては、安心してアプローチできる相談し易い機関として、その役割に大きな期待が集まっています。

拡大する留学生採用・登用のチャンス

従来、日本の専門学校や大学・大学院を卒業した留学生が、企業等へ就職する際には、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で就労できる職種への就職が大半を占めています。

法令等において、在留資格「技術・人文知識・国際業務」でできる活動は、≪本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動≫と定められています。

具体的な該当例は、機械工学等の技術者、通訳、貿易業務、デザイナー、私企業の語学教師そしてマーケティング業務従事者などです。インバウンド観光に関わる外食産業や宿泊業などにおいても、留学生を採用する場合には、これらの職種での採用に限定されており、アルバイトなどで得た経験を直接的にそれらの業界の現場(現業)で活かせる職種に就くことはできませんでした。

留学生の就職率は近年上昇傾向にありますが、それでも、日本の大学・大学院を卒業・修了した留学生のうち、日本国内で就職する方が4割を切っている状況です。
その一因として、飲食店、小売店等でのサービス業務等が主たるものである場合には、就労目的の在留資格が認められなかったことが挙げられます。

留学生の就職支援のための法務省告示の改正

2019年5月28日、法務省出入国在留管理庁は、法務省告示「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」の一部を改正する旨に関する報道発表資料をリリースしました。

これによって、今後は、日本の大学・大学院を卒業した留学生が希望する場合には、大学・大学院において修得した広い知識や応用的能力等を活用しながら、日本語を用いた円滑な意思疎通を必要とする業務を含む幅広い職種に従事することができるようになりました。この場合、在留資格「特定活動」によって、入国・在留が認められることとなります。

在留資格「特定活動」とは、出入国在留庁長官が個々の外国人について特に指定する活動を行うことができる在留資格で、多様な出入国在留政策に対応するために用いられてきた在留資格です。

これまでは、外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者などに適用されてきましたが、今回の改正では、次のAおよびBの要件を満たしている留学生に対する就職支援として適用されることとなりました。

  1. 学歴:日本の大学・大学院を卒業・修了し、学位を授与された方
  2. 日本語能力:次のアまたはイの何れかに該当する高い日本語能力を有する方
    1. 日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上
    2. 大学または大学院において「日本語」を専攻し、卒業・修了

なお、イについては、外国の大学・大学院において日本語を専攻した方についても対象となりますが、この場合は併せてAに該当している必要があります。

活躍の場が広がる留学生たち

具体的には、次のような職種への就労が可能となります。

  • 外食産業の店舗で、外国人旅行者に対する通訳を兼ねた接客業務を行う。
  • 土産物店において、仕入れや商品企画等と併せて、通訳を兼ねて外国人旅行者に対する接客販売業務を行う。
  • ホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設や更新作業を行ったり、外国人客への通訳や案内業務を行なったりしながら、他の特定技能外国人などの従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行う。
  • タクシー会社で外国人旅行者のための集客企画の立案を行いながら、自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動する。

なお、これらは、併せて日本人の一般客を対象とした業務を行うことも想定しています。

更に詳細についてご関心のある方は、ぜひ、ドリームゲートの私のページから、無料のオンライン相談を利用してお問合せください。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 田村 徹氏
(ICT法務サポート行政書士事務所 代表)

大学卒業から23年間、総合印刷会社にて事業の立ち上げやトップマネージメントを経験した後に独立。経営コンサルタントに転身し10年し、キャリアの中で行政書士資格を取得し5年の経験。
豊富なマネジメント経験と専門家としての適格なアドバイスが好評で、多くの中小企業の経営力を向上させた実績が豊富。

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ドリームゲートアドバイザー 田村 徹氏

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