その採用、大丈夫?外国人人材のキャリア採用を確実に!-在留資格と転職-

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 田村 徹

今年の春ごろから、「SDGs(エス・ディー・ジーズ)バッジ」をジャケットの胸元につけているビジネスマンを見かける機会が増えたような気がします。

SDGsバッジはご存じなくても、遠くからでもすぐに判別できるあの17色のカラフルなホイール型のバッジなら見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。

2015年9月の国連サミットにおいて、2016年~2030年の開発目標「持続可能な開発のための2030アジェンダ(以下、「2030アジェンダ」といいます)が採択されました。

2030アジェンダは、2001年~2015年で一定の成果を上げた「ミレニアム開発目標(MDGs)」の後継として、発展途上国における格差の問題、持続可能な消費や生産、気候変動対策などの先進国が自らの国内で取り組まなければならない課題を含む、相互に密接に関連した17の目標と169のターゲットから成るすべての国に適用されるユニバーサルな「持続可能な開発目標(以下、「SDGs」といいます)」を掲げています。

わが国では、総理大臣が本部長となり全閣僚を構成員とした「SDGs推進本部」を内閣に設置しています。

SDGs推進本部では、2030アジェンダの実施に取り組むための「SDGs実施指針」を決定し、〝持続可能で強靱、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す〟というビジョンを掲げ、そしてSDGsの17のゴールを日本の文脈に即して再構成した8つの優先分野の下で、140の国内および国外の具体的な施策を指標とともに提示しています。これら140の施策の中には、わが国に中長期在留する生活者としての外国人の支援に関連するものも含まれています。

「心のバリアフリー」の推進

外国人・障害者の権の尊重をテーマとした人権啓発活動に積極的に取り組むこと等により、「心のバリアフリー」を推進し、国籍や障害の有無等にかかわらず相互に尊重し合う共生社会を実現する。

外国人留学生の受入

優秀な外国人材を我が国に呼び込むため、魅力的な受け入れの仕組みや環境を整備する。

など

外国人人材の転職

外国人人材の中途採用

わが国では、益々、人材不足が深刻な問題となってきており、ベンチャー企業や中小企業等においても、優秀な外国人人材を採用したいという機運が高まってきています。

特に、中長期在留している外国人人材をターゲットとして、日本におけるビジネスマナーや企業文化をある程度理解した「第二新卒者の採用」や即戦力となり得る技術や業務経験を積んだ「キャリア採用」に関心を寄せる企業が増えてきています。

今後は、これらの企業においては、採用後の外国人人材の定着率を高め、その能力を最大限に引き出していくために、中長期的な人事戦略に基づいた「人材育成(教育・訓練)」や「キャリアパス支援」の提供などの「就労支援」の仕組みづくりが重要になってきます。また、外国人人材とその家族が地域社会の一員として受け入れられ、日本人と共に安心・安全に暮らし続けていけるための「生活支援」や「社会支援」にも取組んでいかなければなりません。

従業員の生活の安定を図り、人材育成に心血を注いでいくという経営姿勢に対して人心が集まる、ということでは、決して日本人を採用・雇用する場合と大きく異なりません。

その上で、外国人人材を適切に採用・雇用していくためには、在留管理制度を十分に理解し、法令等を遵守して対応していく必要があります。

在留管理制度による制限

日本国憲法は、「基本的人権」は人間が生まれながらにしてもつ侵すことのできない永久の権利であるという考えに立って、自由権・平等権・社会権などを定めています。

しかしながら、「基本的人権の保証」については、日本国民(日本国籍を有する者)に限定しており、憲法第22条で保証された〝居住、移転、職業選択、外国移住および国籍離脱の自由〟についても、外国人に対しては、在留管理制度の枠内で与えられているに過ぎないこととなっています。

日本国憲法
第22条
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する。
2.何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

在留資格「永住者」の留意点

在留資格「永住者」は、「在留活動」「在留期間」のいずれも制限されないという点においては、他の在留資格と比べて大幅に在留管理が緩和されています。

しかしながら、中長期在留外国人であるため、基本的人権の保障が制限されている点においては、他の在留資格と何ら異なるものではありません。

原則として選挙権や被選挙権は与えられず、また〝公権力の行使又は国民(住民)の意思形成にあたる国家公務員または地方公務員〟になるためには、日本国籍が必要であるとされています。

少し難解な表現ですが、わかり易さを優先すれば、一般的には課長職以上の公務員にはなれない、ということになります。

※在留資格「永住者」については、拙著の『外国人人材のキャリアパス支援で差別化!-人材不足の解消へ-』も併せてご一読ください。

在留資格「特定技能」の留意点

2019年4月1日に在留資格「特定技能」が創設され、中小企業等の深刻化する〝人手不足〟に対応するため、「特定技能制度」が始まりました。

この制度では、生産性向上や国内人材の確保のための取組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野14業種において、今後5年間で最大345,150人の一定の専門性・技能を有し、即戦力となる「特定技能外国人」の受入れが見込まれています。

特定技能制度では、転職も認められています。

しかしながら、〝同一の業務区分内又は試験等によってその技術水準の共通性が確認されている業務区間である必要〟があります。

これも少し難解な文章ですが、たとえば、「宿泊業」のA社で就労している特定技能外国人・甲が「宿泊業」のB社へ転職することは認められても、A社系列企業の「外食業」C社へは転職できない(就労できない)、といったことになります。

また、特定技能制度では、特定産業分野の所管省庁が協議会を組織し、特定技能外国人を雇用する企業等の受入れ機関は入会を義務付けられています。

この協議会では、特定技能外国人の都市部への集中を避け、人手不足に悩む地方の事業者においても必要な人材を受け入れられるよう、地域ごとの人手不足の状況を把握し、必要な対応等を行うこととなっています。

そのため、たとえば、「外食業」のC社で就労している特定技能外国人・乙が、「外食業」のD社へ転職する場合であっても、地方出入国在留管理局へ「在留資格変更許可申請」を行って、出入国在留管理庁長官の許可を受ける必要があります。

その結果、人手不足の状況が著しい地域で営業しているC社で就労している乙は都市部で営業しているD社への転職を希望しても許可されない場合(実務上は、在留期間が更新されない等)もあり得るものと考えられます。

ただし、特定技能制度は始まったばかりですので、今後の推移をみていかなければ確かなことは言えない状況です。

何れにしても、他の在留資格においては、同じ在留資格に基づく在留活動を行う場合には、「在留資格変更許可申請」を行う必要はないことを考慮すれば、特定技能外国人の転職は少しハードルが高くなる可能性があります。

※在留資格「永住者」については、拙著の『アジア人材の採用と安定雇用で現場力を強化-人手不足の悩みから解放される3つの提案-』も併せてご一読ください。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」の留意点

従来、日本の専門学校や大学・大学院を卒業した留学生が企業等へ就職する際には、一般的には、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に基づく職種で就労することが想定されていました。
2018年12月末現在の中長期在留外国人240万6,677人の約8.3%を占める225,724人が、この在留資格をもって在留しています。
伸び率は対前年比で約19.3%となっており、今後も、増加していくものと思われます。

実は、2014年の法改正まで、「技術」と「人文知識・国際業務」は別の在留資格でした。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」に統合されて以降も、当該外国人が勉強してきた知識や実務経験などによって、「資格該当性」が審査されている点においては大きくは変わっていません。

また、自然科学分野に属する知識を必要とする業務に従事できる「技術」と人文科学や社会科学に属する知識を必要とする業務に従事できる「人文知識」については、実務経験年数をもって資格該当性を審査する場合には、実務経験10年以上が要件となっています。

しかしながら、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事できる「国際業務」については、実務経験年数をもって資格該当性を審査する場合には、実務経験3年以上が要件となっています。

このように、「人文知識」と「国際業務」であっても、全く共通の資格該当性をもって審査されている訳ではないことになります。

最近では、「技術」「人文知識」「国際業務」に跨った業種や職種なども増えており、単純には線引きできない場合もあります。
さらには、所属機関となる当該外国人を雇用する企業を4つのカテゴリーに分けて、カテゴリーによって、申請書に添付して提出する資料も異なっており、外国人本人だけではなく、企業の内容も審査の対象となっています。

カテゴリー1 カテゴリー2 カテゴリー3 カテゴリー4
区分
(所属機関)
(1)日本の証券取引所に上場している企業
(2)保険業を営む相互会社
(3)日本又は外国の国・地方公共団体
(4)独立行政法人
(5)特殊法人・認可法人
(6)日本の国・地方公共団体認可の公益法人
(7)法人税法別表第1に掲げる公共法人
(8)一定の条件を満たす中小企業等
前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中,給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,500万円以上ある団体・個人 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く) 左のいずれにも該当しない団体・個人

※在留資格「技術・人文知識・国際業務」については、拙著の『留学生の採用と登用で差別化!– インバウンド市場を開拓 –』も併せてご一読ください。

そのため、あくまでも個別の申請内容等を踏まえて、申請の内容の全体を総合的にみて許可又は不許可の判断が行われているものと考えられています。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって就労している外国人が、現在勤務している企業において具体的にどのような就労活動が認められているかについては、旅券(パスポート)に貼付又は押印された上陸許可証印、在留カードを確認し、出入国管理および難民認定法(以下、「入管法」といいます)の別表に記載されている在留資格「技術・人文知識・国際業務」に対応する活動を参照したとしても、判然としない場合もあり得ます。

備えあれば憂いなし

就労資格証明書交付申請

入管法は、雇用主等と外国人の双方の利便を図るため、外国人自身が希望する場合には、出入国在留管理庁長官が、当該外国人が行うことができる就労活動を具体的に示した「就労資格証明書」を交付することができることを定めています。

この手続きは、「就労資格証明書交付申請」と呼ばれており、中長期在留外国人が転職を円滑に進めていく上でも活用できます。

就労資格証明書は、転職後の企業等、又は内定している企業等(以下、「新しい所属機関」という)における職種が、現在勤務している企業等、又はすでに離職している場合には前勤務先(以下、「前の所属機関」といいます)における職種と同じである場合に、新しい所属機関において従事する業務や雇用条件等が、前の所属機関で認められていた在留資格に適合しているかを審査した上で、新しい所属機関の名称も記載して交付されるものです。

そのため、在留期間を更新する際になって不適合であることが判明し、退職して帰国せざるを得なくなってしまう、といったリスクが低減できます。
また、就労資格証明書は、「在留期間更新許可申請」の添付資料としても使用できるため、手続きの簡略化にもつながります。

入管法
第19条の2
出入国在留管理庁長官は、本邦に在留する外国人から申請があったときは、法務省令で定めるところにより、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書を交付することができる。
2.何人も、外国人を雇用する等に際し、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動が明らかな場合に、当該外国人が前項の文書を提示し又は提出しないことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

転職後の手続きも忘れずに

中長期在留外国人が転職をした際には、当該外国人は、転職後14日以内に出入国在留管理庁長官へ「所属機関の変更の届出」を提出しなければなりません。

対象となる在留資格については、入管法の第19条の16に列挙されていますので、必要に応じてご確認ください。

また、中長期在留者を受け入れている企業等の所属機関は、中長期在留外国人の受入れ状況を届け出るよう努めなければならないこととなっています。

この場合の対象となる在留資格については、入管法の第19条の17に列挙されています。
これらの手続きは、地方出入国在留管理局の窓口へ届出の内容を記載した文書を提出する方法やオンラインの「出入国在留管理庁電子届出システム」を利用する方法などがあります。

 

外国人人材のキャリア採用を円滑に進めたい方は、ぜひ、ご相談ください。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 田村 徹氏
(ICT法務サポート行政書士事務所 代表)

大学卒業から23年間、総合印刷会社にて事業の立ち上げやトップマネージメントを経験した後に独立。経営コンサルタントに転身し10年し、キャリアの中で行政書士資格を取得し5年の経験。
豊富なマネジメント経験と専門家としての適格なアドバイスが好評で、多くの中小企業の経営力を向上させた実績が豊富。

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ドリームゲートアドバイザー 田村 徹氏

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