【弁護士が解説】法的観点から
バイトテロを防ぐには?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 秋元 啓祐

近時「バイトテロ」という言葉がメディアを賑わせています。

バイトテロに明確な定義はありませんが、おおよその共通認識としては“アルバイトが業務中に迷惑行為を行い、その様子を動画などで記録して、自らのSNSなどで公開する行為”となるかと思います。
大企業が巨額の損害賠償を求める事案などもあり、その点に話題が集中していますが、人を雇う企業であればすべての企業に起こりうることであり、スタートアップも例外では有りません。

ここでは、どのようにすればバイトテロを防げるのか、そして法的な観点から防止策を構築するとどうなるのかを、簡単に紹介したいと思います。

対応策の考え方

バイトテロは

  1. アルバイトをはじめとする従業員が
  2. 迷惑行為を行い
  3. それを撮影して拡散する

という要素に分解できます。
①として人を雇わざるを得ませんから、自然と対応策は②③になります。
つまり、「迷惑行為を行わせない」「撮影、拡散のチャンスをなくす」というまとめ方になります。

従業員の迷惑行為の防止

もちろんバイトテロ防止のためには、迷惑行為そのものを阻止するのが一番重要になります。

なぜ迷惑行為をしてしまうのかについては、ワイドショーなどでも話題に上っておりますが、要するにSNSなどに「ウケ狙い」で動画や写真をアップしてしまうというのが最大公約数に思えます。

つまり「業務を妨害してやろう」など明白な悪意を持って行われることは少ないものといえます(だからこそ、明白な悪意を持った行為に比べ容易に発生し、問題となっているとも言えるでしょう)。

この場合、従業員は迷惑行為をするという事の重大さに気がついていないということになります。
事の重大さに気がついていないが故に迷惑行為をしてしまっているとすれば、対応策は自ずから定まります。事の重大さを認識してもらえば良いのです。

ここでいう事の重大さとは、違法性の大きさと損害の発生を指します。
自らの行為が違法である事、多大な損害賠償の対象となりうるものである事を明確にする必要があります。

迷惑行為は就業規則に違反(労働契約違反)するほか、刑法上の偽計業務妨害罪、民事上の不法行為責任を構成する明白な違法行為です。

契約違反は懲戒処分を招きますし、刑事事件として立件されれば刑事罰が課される可能性もあります。
不法行為は損害賠償責任を負います。
これらのことを一覧にした上で、定期的に従業員に教育する機会が必要でしょう。
運転免許証を取る際に学科の中で、交通事故に伴う法的責任(民事、刑事、行政法)の説明を受けているはずですが、それと似たイメージを持ってもわかりやすいかもしれません。

撮影拡散の禁止

迷惑行為を撮影しSNSにアップする行為が問題になるのであれば、それの直接的な抑制方法はSNS使用の制限と職場へのスマートフォン持ち込みの制限になります。

では一般的に使用者側が従業員のSNS使用について制限をかけたり禁止をしたりすることができるでしょうか。

これについてはSNSの使用等の行為が私生活上の行為に属することから、業務との関連性がなく使用者が労働契約に基づいて介入することはできないと解されます。
ただし、SNSにアップロードする事柄が業務に関連する内容の場合、一定の要件の下その内容に介入することが可能かもしれません。
あるいは業務の内容が企業の秘密に当たる場合なども可能です。

このように、SNSの使用を制限するという考え方ではなく、例えばコカ・コーラ社のように、一般的な用語を用いてSNSの使用に関する注意事項を網羅的にまとめたガイドラインを作成し、これをもって社員を教育しSNSに企業にとって不利益な事項がアップロードさせないとの対策をとっていることが多くあります。

一律にSNSへの投稿を禁止したり、投稿したことを理由に懲戒処分をかけるような事例が稀に見受けられますが、このような行為は従業員の私生活に関する無制限の制約であり、違法と評価される可能性が多くあり、事業のイメージ的にもあまり賢い対策だとは考えられません。

では職場へのスマートフォンの持ち込みを一律に禁止するというのはどうでしょうか。

これについては業務時間中であれば使用者は従業員への指揮命令権を労働契約に基づいて行使することができますので、労働時間に関しては携帯電話やスマートフォンの電子機器の持ち込みをあるいはその使用を一律に禁止することもできそうであると考えられます。

その場合休憩時間には確実に使えるようにしておく事については考慮が必要です。

そして使用を禁止する場合仮にスマートフォンなどの電子機器を預かる形をとる場合には、預かっている際の管理状況について十分に注意すべきでしょう。

巨額の損害賠償の有効性

世間でもっとも注目を浴びているのは従業員に対する使用者側の巨額の損害賠償請求でしょう。
まずこれが一般的に可能かどうかについてですが、可能になる可能性もあるとの回答にならざるをえません。
確かに従業員が責任を負う可能性は十分にあります。
しかし企業が主張するような多大な損害賠償責任を負わせるだけの損害が、その行為によってのみ発生しているかと評価されるかどうか一考が必要です。

売り上げが減った・増えたというところを証拠に基づき正確に証明をするには困難が伴いますし、株価の下落がそのまま端的に企業の損害として計上できるかについてはやはり議論ある所でしょう。

またバイトテロの当事者は多くの場合アルバイトをしている学生であり、学生自身が多額の損害賠償責任を担えるはずがありません。
ではその代わりに両親に責任追及ができるかというと、これは現在の民法では難しいと言わざるを得ません。
未成年者が不法行為を行なった場合に、両親にその責任を負わせることのできる場合は極めて限定されています。
ましてやアルバイトが20歳を超えている(民法改正後は18歳)場合に両親に請求できる可能性は全くありません
巨額の損害賠償責任を負うという話は、伝家の宝刀として、事の重大さを理解させる教育を社員に施すために使用すると言うのが正しいと考えます。

伝家の宝刀は実際に抜いてしまってあまり効果的ではないのです。

対策まとめ

バイトテロを1つの方策で完全に防ぐことは出来ず、いくつかの対策を組み合わせる必要があります。
そしてその根本にあるのは従業員の教育です。
従業員への教育をいかにして行うのか、法的観点を織り交ぜて考えていく必要があるでしょう。

その際に既存の労働契約労働法規、あるいは民事法刑事法と整合するような形で社員を教育していくことが必要です。

従業員への教育を各企業に沿った形で検討し、あるいは弁護士を招いて従業員向けセミナーの形で実施するというのは、今現在専門家を入れて取りうるもっとも良い対策ではないかと思います。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 秋元 啓佑氏
(三和法律特許事務所 弁護士)

中小企業やスタートアップ企業の基礎的な法律問題から、複雑な知財、労働案件など数多くの法律に関するお悩みの解決を行う。
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ドリームゲートアドバイザー 秋元 啓佑氏

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