アジア人材の採用と安定雇用で現場力を強化
-人手不足の悩みから解放される3つの提案-

人事・労務

執筆者: 田村 徹

最近、皆さんは、どのようなニュースに関心を持たれているでしょうか?私は、大手コンビニエンスストアチェーン各社(以下、「大手コンビニ業界」といいます)が「24時間営業」の見直しに踏み切ったというニュースに、とても大きな関心を寄せています。

大手コンビニ業界は、1970年代の半ば以降、一貫して「24時間・365日営業」を掲げ、急速なテンポでの出店とサービスメニューの充実によって、拡大路線を続けてきました。

そして、今や、全国に張り巡らされた店舗網と物販のみならず、店内飲食、公共料金の収納代行やインターネットと連動した各種決済などの金融サービス、宅配便の受渡しなどの物流サービス、そして各種公的証明書発行などの行政サービスのほか多様な機能を備え、既に、私たちの生活に欠かすことのできない社会インフラの一つとして定着しています。

この事業戦略が大きな転換期を迎え、今後は様々な産業分野への影響が懸念されており、各方面へ大きな波紋を広げていくことになるでしょう。この背景には、FC加盟店オーナーの高齢化、深刻な人手不足、そして人件費の高騰などの根深い問題があり、わが国が直面している「少子高齢・人口減少社会」の急速な進展が現実のものとなってきたことを物語っています。

日本の現場を支えているアジアの若者たち

今や、都市部を中心に、コンビニの店頭で働く外国人を見かけない日はない、と言っても過言ではありません。その多くが、在留資格「留学」で在留している中国、ベトナム、ネパールそして韓国などアジア諸国の若者たちです。

原則として、就学を目的として入国および在留が許可されている留学生には、就労が認められていません。ただし、「資格外活動許可」を受けた場合には、週28時間以内(学校の長期休暇中は1日8時間以内)を限度としてアルバイトができます。

大手コンビニ業界のみならず、留学生のアルバイトによって労働力を確保している業界は飲食業や宿泊業など他にも沢山あります。

また、一次産業や建設業、そして製造業の工場など地方経済において重要な位置を占めている産業においては、技能実習生として在留するベトナム、中国、フィリピン、インドネシアそしてタイなどのアジア諸国の若者たちによって、その労働力不足が補われています

「技能実習制度」は、国際貢献と国際協力の一環として、わが国で培われている技能等を発展途上国へ移転することを目的とした制度ですが、この目的から逸脱した一部のコンプライアンス意識の低い技能実習監理団体や企業、そして送出し国における悪質ブローカーの介在などによって、低賃金・長時間労働などの劣悪な労働条件や就労環境といった人権問題が浮き彫りになってきている状況にあります。

今後は、平成2017年11月に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(通称:「技能実習法」)」の運用強化などによって、このような状況の早期改善が進められることを期待しています。

国内労働市場のグローバル化

2018年、わが国では、総人口における働き手の中心となる「生産年齢人口(15歳~64歳)」の占める割合が、6割を割り込みました。その一方で、65歳以上の就労人口には増加傾向がみられ、800万人を超えました。

しかしながら、今後は、団塊の世代が後期高齢者(75歳)に達する2022年から2025年にかけて、本格的なリタイアが始まり、更に人手不足に拍車がかかることが予測されている状況です。

2018年12月の第197臨時国会において、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立しました。これにより、2019年4月1日より、法務省入国管理局が「出入国在留管理庁」に格上げされ、新しい在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」が創設されました。

これまでは技能実習制度や留学生等の特定活動許可によるアルバイトなどの例外を除いて、原則として禁止されてきた「単純労働」とされる職種への外国人の就労を認める、という外国人受入れ政策の大転換が図られました。

在留資格「特定技能」は、中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するために創設されました。

生産性向上や国内人材確保のための取組を行っても、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野(以下、「特定産業分野」といいます)において、一定の専門性・技能を有した即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みです。

特定産業分野に指定されている14業種は、以下になります。

  1. 建設業
  2. 造船・舶用工業
  3. 自動車整備業
  4. 航空業
  5. 宿泊業
  6. 介護
  7. ビルクリーニング
  8. 農業
  9. 漁業
  10. 飲食料品製造業
  11. 外食業
  12. 素形材産業
  13. 産業機械製造業
  14. 電子・電気機器関連産業

在留資格「特定技能2号」については、熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、当面は、特定産業分野のうち、建設業および造船・舶用工業のみを対象として実施されるため、本稿においては、「特定技能1号」を中心にとり上げます。

特定技能1号

在留資格「特定技能1号」は、相当程度の知識または経験を要する技能の業務に従事する外国人向けの在留資格です。「特定技能1号」で在留する外国人(以下、「1号特定技能外国人」といいます)の向こう5年間の受入れ見込み数は、345,150人となっています。

1号特定技能外国人には、18歳以上で、かつ、一定の「技術水準」と「日本語能力」を備えていることが求められています。技術水準については、国内外で実施される各特定産業分野の業務区分に対応した「分野特定技能1号評価試験」への合格で確認されます。

また、日本語能力は、「国際交流基金日本語基礎テスト(国際交流基金) 」または「日本語能力試験N4以上(国際交流基金・日本国際教育支援協会)」 などの日本語試験によって生活や業務に必要な日本語能力が確認されます。

ただし、各特定技能分野に対応した職種および作業に該当する「技能実習2号」を適正に修了した者については、これらの試験が免除されます。

対象業種

在留資格「特定技能1号」の対象業種は、特定産業分野に指定されている14業種の全てです。その中には、技能実習制度の対象にはなっていない「飲食業」や技能実習の1年目にあたる「技能実習1号」だけしかなかった「宿泊業」なども含まれています。

特定技能1号で就労する外国人(以下、「1号特定技能外国人」といいます)は、企業等に「直接雇用」されます。(農業・漁業では、一定要件のもとで派遣労働も認められています。)

また、1号特定技能外国人を受け入れる企業などの「受入れ機関」(以下、「特定技能所属機関」といいます)は、特定技能外国人との間で「特定技能雇用契約」と呼ばれている雇用契約を締結する必要があります。

その際の給料や労働条件などは、特定技能所属機関で同じ業務に従事する日本人などの他の従業員と比べて同等以上でなければなりません。

ただし、特定技能外国人は、他の就労系の在留資格で就労する外国人とは異なり、同じ特定技能分野内での転職しか認められておらず、受入れ機関を変更する場合には、新たに「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。

これによって、大都市圏その他特定地域に過度に集中して就労することとならないように調整される場合もあり得ます。

≪提案①≫
1号特定技能外国人を採用する企業等においては、自社内での転勤やジョブローテーションなどを計画的に設計します。スキルアップやキャリアアップ、そして昇給などを適切に計画した独自の「キャリアアップ制度」を導入するなどして、1号特定技能外国人のモチベーションの維持と労働意欲の向上を図り、安定雇用に繋げていきましょう!
在留期間

在留資格「特定技能1号」の在留期間は、1年、6か月または4か月が付与されます。他の在留資格と同様に、この期間については、地方出入国在留管理局等へ「在留資格認定証明書交付申請」の手続きを行う際に、希望する期間を記載しますが、地方出入国在留管理庁長官の裁量で決定されます。

他の在留資格とは異なる点としては、〝通算で上限5年まで〟と定められている点です。例えば、1号特定技能外国人が、わが国で1年間在留し就労した後に帰国して、その1年後に、再度、「在留資格認定証明書交付申請」等の手続きを経て6ヶ月間在留し就労した場合には、〝通算で1年6ヶ月〟としてカウントされます。

在留資格「特定技能1号」では、家族帯同が認めれておりません。
そのため、家庭の事情などで長期間に渡って在留し就労することに躊躇する外国人の方もいるものと思われます。本人の希望や事情を確認しながら、短期の「有期雇用」を行うことで希望者が増えることも考えられます。

≪提案②≫
1号特定技能外国人を採用する企業等においては、わが国で在留し就労を希望する外国人の個々の事情や希望を考慮して、4ヶ月または6ヶ月の期間での「有期雇用」によって、特定技能外国人のための〝働きかた改革〟を実践していきましょう!例えば、日本より相当に物価の安いアジア諸国であれば、1年のうち半年間は1号特定技能外国人として就労し、残りの半年間は帰国して家族と一緒に過ごす、というライフスタイルに魅力を感じる方がいるかもしれません。企業側にとっても、繁忙期に限定して、優秀な労働力を確保できる等のメリットがあります。
1号特定技能外国人に対する支援

受入れ機関(特定技能所属機関)は、1号特定技能外国人に対する「職業生活上」、「日常生活上」および「社会生活上」の支援を適切に行うための体制を確保し、実施することが義務づけられています。

概要は、以下のとおりです。

  1. 中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績のある支援責任者および支援担当者を選任。(兼任可)
  2. 1号特定技能外国人が十分に理解できる言語で支援を実施することができる体制の確保。
  3. 1号特定技能外国人が「特定技能」の在留資格に基づく活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための支援を実施。
  4. 「1号特定技能外国人支援計画」を適切に作成。

そして、4の「1号特定技能外国人支援計画」における主な支援内容は、次のとおりです。

  1. 入国前の生活ガイダンスの提供
  2. 入国時の空港等への出迎えおよび帰国時の空港等への見送り
  3. 保証人となることその他の外国人の住宅の確保に向けた支援の実施
  4. 在留中の生活オリエンテーションの実施(預貯金口座の開設および携帯電話の利用に関する契約に係る支援を含む)
  5. 生活のための日本語習得の支援
  6. 相談・苦情への対応
  7. 住民登録など履行しなければならない各種行政手続きの情報提供および支援
  8. 日本人との交流の促進に係る支援

なお、1、4、6、7の支援については、1号特定技能外国人が理解することができる言語で行う必要があります。

特に、6の「相談・苦情への対応」の支援は、特定技能外国人の気持ちに傾聴して微妙なニュアンスまで理解できるだけの語学力やコミュニケーション能力が求められています。ただし、予め、臨時に専門の通訳等へ委託するなどの体制を確保しておくなどの方法も認められています。

特定技能所属機関は、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」との間で、「委託契約」を結び、「1号特定技能外国人支援計画の実施を全部を委託することもできます。

この場合、受託した登録支援機関が、特定技能外国人に対して、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援を実施する義務を負うこととなります。

≪提案③≫
1号特定技能外国人を雇用する企業等は、特定技能外国人に対する「1号特定技能外国人支援計画」に基づく支援を実施する義務を負いますが、自らの責任において、その一部を第三者へ委託をすることが認められています。従って、自らが支援の全てを行うか、または、登録支援機関へ全部を委託するかの二択ではありません。今後は、ダイバーシティを意識して、特定技能外国人のみならず、女性、高齢者そして心身に障がいを持っている方など多様な人材を積極的に採用、雇用、登用していくことで経営力を向上させていくことが大切です。特定技能外国人の採用を切っ掛けとして、必要に応じて、何らかの支援を必要としている全ての従業員に対する個別の支援計画を作成し、働き易い環境を提供していきましょう!そして、従業員に対する「コンセルジュサービス」の充実をはかり、安定した雇用環境を創出し、現場力を向上させる〝チャンス(よき機会)〟としていきましょう!

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 田村 徹氏
(ICT法務サポート行政書士事務所 代表)

大学卒業から23年間、総合印刷会社にて事業の立ち上げやトップマネージメントを経験した後に独立。経営コンサルタントに転身し10年し、キャリアの中で行政書士資格を取得し5年の経験。
豊富なマネジメント経験と専門家としての適格なアドバイスが好評で、多くの中小企業の経営力を向上させた実績が豊富。

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ドリームゲートアドバイザー 田村 徹氏

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