農業ビジネス Vol.03 経営者の視点で考える農業の成功ポイントとは?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
農業で生計を立てるためには、生産者の視点と、経営者の視点の両方が必要になります。前回の「農業ビジネス Vol.02 農業参入を成功させる4つの資源の獲得方法」は、生産の視点から農業参入を成功させる必要条件をご紹介しました。今回は、経営者の視点から、農業参入の成功ポイントについて事例を織り交ぜながらご紹介します。

担保すべき絶対条件

現在の農産物のサプライチェーンは、バイイングパワーが強い、つまり買い手市場になっています。これは、従来型の卸売市場流通に見られるように、生産者と消費者の間に多数のプレーヤー、仲買人が存在することで、生産者の想いやこだわりが捨象されてしまうためです。食べ物が単なるモノ化している、コモディティ商品化してしまうことで、あまり差別性のない農産物は低価格競争の渦に巻き込まれてしまいます。
原価割れしない、再生産可能な価格を担保するためには、ちょっとこだわった生産方法に加えて、その価値を消費者にきちんと伝える売り方が不可欠となります。そこで最低限必要となるのは、作れば売ってくれる卸売流通に頼るのではなく、特定の販路を確保することです。

事例から見たプラスアルファの成功ポイント

1:    当たり前の農業経営で勝負
卸売市場での農産物価格は、全国の中央卸売市場等における供給量と需要量のバランスで形成されています。豊凶や季節性によりこのバランスが変わることから、供給量が多い時期には価格は下がり、少ない時期、つまり端境期には価格は高騰します。多くの産地ではこの端境期に出荷することを見込み、計画的な農業経営を行っています。例えば、温州みかんの適熟、旬の時期は夏から秋ですが、通常は適度な傾斜地で雨ざらしの中で生産されています。しかしいくつかの産地では、端境期の春に出荷することを目指し、ハウスでの温室栽培を行っています。これにより出荷単価は上がりますが、施設や燃料の経費も嵩んでおり、利益率ではあまり変わらないのが実状です。さらにハウスみかんの出回る春と旬の夏との間を狙った、露地栽培の早生みかんも生産されていますが、この利益率も高くありません。生産者自身も「早生でも一番美味しいのは夏以降であり、初夏のみかんは大きさも不十分で糖度も上がりきっていない」と言っています。そして当然ながら初夏のみかんは等級の歩留まりも悪く、また味の点からも消費者の心をあまりつかめていません。
つまり、端境期を狙うのではなく、作物の適熟つまり旬を尊重した当たり前の農業生産を行うことで、過剰投資を回避し、自信ある味を消費者や小売店との契約販売で供給していくことが重要です。付加価値農産物を扱うオイシックスやらでぃっしゅぼーや、またパルシステムなどでも、自信のある生産者との継続的取引を望み、こまめな品質チェックに加えて出来る限りの全量買取を行っています。旬を活かすとともに農薬や肥料の使用等においてちょっとこだわった農産物の、卸売り+販売を行う業者との提携が成功要因となるでしょう。

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2:    消費者目線の売り込み営業
当たり前の良さを追求した農産物も、実際に販売先との契約にこぎつけるためには、その農産物の良さをきちんとバイヤーに伝えることが必要となってきます。一般の消費者向けの販売店に売り込むには、一般の主婦目線での農産物の価値判断を前提とする必要がありますし、外食店向けに売り込むには、メニューにしたときに消費者が美味しく食べられる調理法を提示できると大きな強みとなります。
ある地鶏の生産者は、これまで東京都内を中心に約40のレストランとの契約販売を結んでいます。この生産者は元シェフの経験を活かして、レストランに売り込みに行く際は食材と包丁を携えて、最高の調理法を実際に見せることで、原価割れしない売買価格での契約を取り付けています。昨今の食材宅配サービスや小売店での販売においても、レシピを添付している例が増えています。折角のよい食材も、調理法によってはその良さが引き出されないこともあります。小売店や外食店にまかせるのではなく、農産物のよさを最高に引き出せる調理法などを、バイヤーとの交渉時にきちんと提示することが、好条件での契約を取り付けるポイントとなります。

3:    見せ方
売り込み時に必要なことは上述しましたが、農産物が実際に店頭で並ぶ際の見せ方も大切です。一般のスーパーで消費者が一品目の購買選択にかける時間はほんの数秒です。この間に、消費者に手を伸ばさせる農産物として訴求するためには、農産物のこだわりをどう上手く見せるかが重要なのです。
ある養豚業者では、温泉水を飲ませることで豚の健康を促進し、臭みのない美味しい豚肉を生産しています。そしてこのコンセプトを絶妙なネーミングにより消費者に伝えています。しかし一方で、小売店側のロットの都合などからこのネーミングが店頭で使えない場合は、比較的安値での販売価格になっています。ネーミングや表示を含めて、農産物の価値をどのようにプロモートしていくかも、農産物価格を左右する条件となっています。

まとめ

これらすべては、消費者ニーズを掴んだ上での訴求方法です。旬、味、健康といった農産物各々の価値や強みをどのように打ち出していくのかは、従来の農業者には足りなかった経営者の視点といえます。単純に農産物を工業製品のように生産するのでは、コモディティ商品化してしまいます。マーケットを分析した上で、農業の生産方法にこだわったり、その売り込み、プロモーションといった仕掛けにこだわることもこれからの農業経営には必要となってきます。

バックナンバー

農業ビジネス Vol.01 素人から農業で起業する2つのパターン

農業ビジネス Vol.02 農業参入を成功させる4つの資源の獲得方法

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