起業アイデア Vol.03 廃校ビジネスにみる、アイデア発想法

事業計画

執筆者: ドリームゲート事務局

今回はドリームゲートグランプリ北海道大会で田中勝さんが提案し、2007年5月からすでにサービスを開始している廃校を利用した事業プランについて解説します。

事業プランの概要

 今回は廃校を利用して旅行者に学びの場を提供するサービス。団塊世代をメインターゲットにして、一般教養や暮らしの知識、あるいは音楽やスポーツなどを学んでもらう。宿泊サービスは実施せず、近隣の宿泊施設に滞在している人々をターゲットにするというもの。

 提案者の田中さんは具体的に、北海道の美瑛町にある元小学校の校舎を活用することを前提としている。「丘のまち」として知られる風光明媚な美瑛に、時間的・金銭的余裕のある団塊世代を呼び寄せ、地域活性化と団塊世代の暮らしの充実の双方に貢献しようとする事業プランだ。

 このプランの強みは、 第一には、美瑛の環境に惚れ込んだ田中さんが、2006年10月に町から廃校を借り受けることに成功している点である。第二には、証券会社勤務時代、長年にわたって社員研修を担当してきた田中さんだけに、セミナー運営などに造詣が深いという点である。つまり実現可能性が高いということだ。また、田中さん自身が63才(プラン応募時点)と、ターゲットの世代に近いことも相対的な強みとなっている。
 

ここがナイス・アイデア!

 このビジネスは、旅行産業と教育産業を合体した、団塊世代向けのアミューズメントサービスといえる。時間と金銭に余裕があり、学習意欲が高く、内面的な充実を求める傾向が強いといわれる団塊世代のニーズをよくとらえている。また、その舞台として廃校を選んでいる点もターゲットとの親和性が高い。

 これらのアイデア要素を発想法で分解すると、3つの方法論が浮上する。ひとつは「パッケージアイデア」である。つまり、旅行サービスと教育サービス、さらには廃校の懐かしさをひとまとめにして提供するというものだ。異なるものをひとつにまとめて提供するという考え方は、アイデア発想法の基本中の基本である。

 顧客の側に立てば、「一粒で二度おいしい、あるいは三度おいしい」と感じるサービス。現にこうしたサービスはたくさん存在している。たとえばホテルの最上階のレストランでは、「食事を楽しむ」と「景色を楽しむ」、さらには「もてなしを楽しむ」などがパッケージされている。

 ガソリンスタンドもそうだ。「給油する」「洗車する」「休憩する」などがパッケージになっているが、近年はそれにコンビニエンスストアやブックストア、パチンコ店などを併設し、ひとまわりもふたまわりも大きなパッケージ化に成功しているケースもある。

 一方、パッケージの基本形を崩すことで成功を納めているガソリンスタンドもある。セルフ式である。このように、パッケージ化の反対をいく発想法もあるのだ。これを「分離アイデア」あるいは「削除アイデア」と呼ぶ。実は田中さんもこのアイデアを採用している。廃校に宿泊施設を置かないという判断がそれだ。宿泊サービスを実施しようと思えば、許認可が必要になるし、運営の手間やコスト、リスクなども大きくなる。そこを避けると同時に、宿泊は地元の既存施設を使ってもらうことで、本来の目的である地域活性にも貢献できるというわけだ。これが、田中さんが使った2つめのアイデアである。必要なものはまとめ、そうでないものは他に譲る。この組み合わせが絶妙である。

  3つめのアイデアは、「蘇生アイデア」ないしは「復活アイデア」である。これは言うまでもなく廃校となった元小学校を別の目的のために生き返らせたことを指している。古くなったもの、はやらなくなったもの、必要なくなったもの。次々と変化していく社会にあっては、そうした「いらなくなったもの」があふれている。これをうまく活用することは、アイデアレベルの面白みだけでなく、経営資源調達コストの観点から考えても有効である。廃校を使うのと、施設を新たに建設するのとでは、そのコスト負担は比較にならない。
 

増田からアドバイス

  廃校を活用しようという取り組みは全国的に展開されている。それらは文化施設や学習施設、展示施設、医療施設、宿泊施設、インキュベーションオフィスなど、さまざまな用途に転じて存続がはかられている。しかし、その多くは必ずしも運営が順調とはいえない。もともと廃校になるだけあって、周辺人口の少なさや、交通アクセスの不便さというハンディを抱えているケースが多く、利用者数が伸びないという課題を克服できずにいるのだ。その状況を逆転するには、施設運営に執念を燃やすリーダーの存在と、地域住民の協力体制が不可欠である。そしてまた、廃校というノスタルジックな魅力を凌駕する、運営ソフトの魅力が必要となる。

 美瑛の廃校活用プランは、団塊世代向けの学習施設に転じようとするものであるが、この世代の人々は知識も見識も深く、相当にレベルの高い学習プログラムを用意しないことには、ニーズを満たすことはできないと考えられる。歴史、科学、芸術、産業、生活など多彩な分野において深みのあるセミナーを連続的に用意することはかなりの労力が必要となる。プログラムや教材の開発、講師の確保、そしてまた、そうした活動を行っていることの宣伝などを単独で行うのはなかなか大変だ。

 そこでもうひとつアイデアを加えてみたい。宿泊を地元業者に任せたのと同じように、講座も、分野別にさまざまな協力者を確保し、それぞれに運営を任せてみるのだ。あるいは「セミナー旅行」の計画を持つ旅行会社に対して、施設の活用を訴えるという方法もある。つまり「分離アイデア」を徹底して進めるという考え方である。餅は餅屋。サービスに不可欠な諸々の要素を苦労して自前でそろえるより、高い競争力を持つそれぞれの分野のプロに任せてしまうほうが実現性や完成度も高く、一方でコストを抑えることにもつながるのである。

 いま、さまざまな業界がセカンドライフに突入する団塊世代を獲得しようと躍起になっている。つまり、市場も大きいが、競争も激しいということである。小さなビジネスがこの市場に展開するためには、大手企業が手を着けない、あるいは手を着けられない領域で勝負する必要がある。「過疎地域」「公共施設」などはまさにその代表的キーワードといえる。こうしたニッチを探り当て、そこに豊かなプログラムを投入できれば、小さなビジネスでも十分に団塊世代からの支持を獲得することができるだろう。

(このアイデアは、2007年1月に行われたドリームゲートグランプリ北海道大会の応募アイデアです)

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