2022年6月に執筆した年後半を予測したコラムでは、ロシア/ウクライナ戦争、130円を超える円安、パンデミックなどがスモールビジネスに与える影響として、働く業界によって勝ち負けがより明確になってくることを挙げました。
執筆から半年経った今、戦争は終わりが見えない状態が続いており、為替相場は一時1ドル150円を超え、1991年以来31年ぶりの歴史的物価上昇が進みました。円安により輸出型大企業は業績を伸ばし、賃上げにも積極的ですが、中小零細企業やフリーランスは変わらず、原材料費や人件費上昇、人材不足、コストダウン要請への対応に苦しんでおり、残念ながら予測は8割方当たってしまったように感じます。
読者の皆さま、こんにちは。私はドリームゲートアドバイザーを務めております新井一(あらいはじめ)と申します。会社員のまま小さく起業できるコミュニティサロン「起業18フォーラム」を運営しています。
今回のコラムも、近年、私が担当させていただいている〝予測シリーズ〟です。「2023年のビジネス・トレンド予測」と題しまして、私が思うところを書かせていただきます。
- 目次 -
2023年も業界・業態による勝ち負けがより明確に
次こそ大きくはずれて欲しいと願いますが、2023年も業界による勝ち負けがより明確になる傾向は変わらないでしょう。2023年前半は、世界的な資源価格高騰の影響を受けた緩やかな物価上昇が続き、仮にさらなる円安や戦争の拡大によりそのスピードが速まることがあれば、個人消費の腰折れリスクも想定しなければならなくなると思われます。
一方で、2023年は、好業績企業による賃上げも期待されます。そのためにさらなる〝価格転嫁〟が進むでしょう。結果、もう一段の物価高となれば、ネガティブな報道も増え、消費マインドが冷える瞬間も出てくるかもしれません。ですが、政府がしっかりと後押し、下支えをすることができれば、賃上げは中小企業の従業員にも波及してくるものと思われます。
しかし、価格転嫁が難しい末端の零細企業、フリーランス、一人社長、そして輸入系企業にとっては、我慢の日々が続くでしょう。年後半には「インボイス制度」も始まります。これは一部報道にもあるように、逆風と捉える人も多いようです。制度の導入により廃業に追い込まれる個人事業主も出てくるでしょう。
政府は〝新しい資本主義〟戦略の一つとして、スタートアップ支援も打ち出しており、IT、環境SDGs(新素材など)、バイオ、宇宙関連、インバウンド関連事業のベンチャーにはチャンスが多い年になるかもしれません。業務転換、キャリアチェンジを含め、個々がどのようなチャンスを見出せるかが、これまで以上に問われる年になると思います。
では、そんな時代、社会的背景で、私の専門である〝スモールビジネス〟はどうなっていくのでしょうか? 2023年の傾向をざっくりと予想してみます。
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2023年のスモールビジネスはどうなる?
スモールビジネスの王道〝スキルシェア〟は副業優位に
インボイス制度が始まることにより、スキルシェア(作業代行)で独立すること、独立を維持することは、より困難になるでしょう。単価を安くできる上に、お小遣い稼ぎレベルで十分な副業勢がより有利に受注していくフィールドになっていくと思います。
WEB制作、動画編集、占い、一部の士業等、時間の切り売りになりがちな作業系のお仕事で生計を立てている人は、副業勢との差別化が必須になります。専門家ブランディングはもちろん、プラットフォーム側に回るなど、時間を売らないサービスへの転換を図る必要が出てくるでしょう。
尚、インボイス制度については、経過処置が設けられており、流動的な部分もあります。ネガティブな影響を最小化するためにも、積極的に情報収集を行い、正しく活用していくことが求められます。
〝せどり〟はますます新規参入困難に
2022年後半は一気に円安が進んだことにより、特にアメリカとの間で〝同一商品価格差〟が目立つようになりました。そのため、その差と消費税還付を狙った〝輸出せどり〟が、これまで以上に注目されました。
ですが、参入者が増えれば競争も激化します。すでに飽和状態であり、2022年12月の金融政策転換による円高リスクもあり、小売りから仕入れて輸出し、現地で小売りするようなビジネスモデルでは、十分な収益をあげ続けることは難しいでしょう。それで儲かるのはその流通の仲介業者。ゴールドラッシュで儲けたのはリーバイス、スコップ屋、鉄道会社。その現代版ですね。
2023年のスモールビジネスのキーワードは〝情勢不安〟
インフレ、戦争、それによるサプライチェーンの混乱、金利上昇(住宅ローン等に影響)、株安リスク、増税など、年初のおめでとう感が過ぎた頃には、2023年の悲観的な見通し、予測が多く報道されることになるでしょう。一方で、感染症の扱いの変更、旅行業や飲食業への行政支援の継続、年末にたくさんの賞与を手にした人たちの消費マインドの向上も期待されます。
心配は社会の分断がさらに進むことです。支援を受けられる業態と対象外の業態、輸出型で儲かる企業と、輸入品や国内の様々なコストアップに苦しむ企業など、(日本はまだ緩やかではありますが)政策や外部環境に影響を受けての勝ち負けが目立つようになっています。
老後が心配、ベテランが多く若者にチャンスがない、分断が進む、富裕層が海外に移住する、こんな世の中になってしまえば、それはまさに〝情勢不安〟に向かうということ。今年、特定宗教に対する規制が進みましたが、2023年こそ、心の安定、癒し、占い等が一歩進んだ〝メンタリング〟のような、サポートが、より求められるようになるかもしれません。
ピンチの時こそチャンスあり。後半に向けてしっかりと準備を!
物価上昇も落ち着き、増税もやむなしと理解が進み、金利の方向性もわかってくるのは2023年後半。そこからが一気に動くタイミングです。私たちは、先が見えにくい状態の時は縮こまって待機しますが、内容がどうであれ、そこで落ち着くことがわかってくれば、その状況を前提に行動を起こせるようになるものです。年後半に向けて、しっかりと準備を進めた人が、トータルでは楽しめる1年になるでしょう。
2023年も挑戦を続けていきましょう!
起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?で、スモールビジネスの第一歩について解説しています。ぜひご覧ください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 新井 一
(パーソナルビジネスブレインズ・コンサルティング事務所 代表)
起業18フォーラムの代表を務められている新井アドバイザー。会社員時代に起業した経験をもとにしたアドバイスは多くの支持を得ております。
2007年から独自のマーケティング理論を基にした集客メソッドを公開。全国で1,000回を超えるセミナーや10,000件以上の相談に応じるなどの実績を豊富にお持ちです。
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