働き方改革の影響でしょうか、さまざまなメディアで「副業」や「フリーランス」がもてはやされる時代になりました。自由な働き方に憧れ、安易に参入してくる方が多くなる一方で、「収入が減ってしまった」という方や、「人生を狂わせかねないリスクを抱えてしまった」方からのご相談も増えています。
2020年1月7日付け日本経済新聞朝刊13面に、今流行りの「ギグワーカー」のリスクについての記事が掲載されています。
東京都内に住む30歳代の男性はアマゾンフレックスで2カ月ほどギグワーカーとして働いていたが、ある日突然、仕事探しに欠かせないアカウントを停止するというメールが届いた。その翌日からはアプリへのログインが不可能になった。規約違反など思い当たる節はなく「あまりに急で困っている」という。(中略)忘れてはいけないのは、ギグワーカーは法律上「個人事業主」として扱われ、「労働者」とはみなされない点だ。「本来は『仕事』に結びついている労災補償や最低賃金といった保護が失われることが最大の問題」(労働政策研究・研修機構の浜口桂一郎氏)。労働者でなければ、団体交渉もままならない。業務中に事故を起こしてケガをしても自己負担で片付けられる、誤ってモノを壊してしまい多額の損害賠償を請求されるといった事態も考えられる。プラットフォームの運営企業から仕事の発注を突然止められたり、一方的に報酬の算定基準を引き下げられたりして、泣き寝入りするのも珍しくはない。
引用:2020/01/07 日本経済新聞朝刊13ページ
「自由に働ける」という言葉の裏にある現実を理解し、しっかりとリスクをコントロールすることこそ、この新しい流れをチャンスに変えるために必要な行動です。
改めまして、こんにちは。ドリームゲートアドバイザーの新井一と申します。日頃は「起業18フォーラム」にて、たくさんの会社員の起業準備を支援させていただいています。
今回のコラムでは、欧米でメジャーになり、ここ数年、日本でも注目度が増している、料理宅配サービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」になどに代表される「ギグワーク」という働き方について語ってみたいと思います。
- 目次 -
そもそも「ギグワーク」って何?
日本では、「ギグワーク」という言葉がまだ定着していないためか、曖昧な意味で使われています。「フリーランス」はプロジェクトに参加する長期の契約で「ギグワーカー」は単発で仕事を請け負うというようなことも言われますが、あまり正確ではありません。
現状言えるのは、「労使契約を結ばずに、ネットで空き時間に単発仕事を請け負う人」という辺りが妥当でしょう。
労働政策研究・研修機構によりますと、『ギグワーカー』を含むフリーランスの労働者は、全国でおよそ170万人いて、このうち本業として働いている人は130万人、副業としている人は40万人ほどと推計されるということです。
引用:NHK政治マガジン https://www.nhk.or.jp/politics/kotoba/26245.html
「ランサーズ」や「ココナラ」といったクラウドソーシングにも、専門性の高いコンサルティングを提供するギグワーカーから、IT系の単純作業や労働を提供するギグワーカーまでさまざまな人が登録されています。
「単発の仕事を空き時間に」という新しい働き方は、終身雇用も年金も頼れなくなった社会で、希望の星になるのか、それとも、貧困の入り口となってしまうのか、「自由で良いから」、「カッコよさそうだから」と、安易に単純労働を請け負う(下請け的)働き方を選択した場合、どのような未来が待っているのか、それぞれの人の価値観によって分かれるところでもあります。
「ギグワーカー」になるリスク
私個人的には、自分の可能性を試せる「ギグワークの定着」というチャンスは、大いに歓迎すべきものだと考えています。また、闘病、介護、子育てなどさまざまな事情、制約を抱えた人々にとっても、たとえ部分的であっても自立できるきっかけとなるはずです。
ですが、仮に、学校を卒業後に単純労働系のギグワークに就いたとして、数年間、そこで何の学びも工夫もなく単純作業を繰り返し、時間を切り売りしてしまったとすると、その後にキャリアの立て直しを図った場合には、厳しい現実に直面することになるかもしれません。社会の理解も制度もまだ追い付いていないからです。誰にでもできる単発の単純作業を職業とする際には、スキルアップでも起業でも、何らかの目的、戦略に基づいて行動することが必要でしょう。
また、いわゆる日本人が考える安定を価値と考える人は、ギグワークを副業として捉え、時間やスキルを効率的にお金に変える方法として活用することで、「収入が安定しない」、「最低賃金も保険も有休もない」といったリスクを、「自由な時間に働ける」というチャンスに変えることができます。
「ギグワーカー」は、自分の裁量で仕事の量を調整することができるほか、アプリなどを通じて、気軽に始めることができることから若い世代を中心に広がりをみせています。一方で、企業に雇用されている従業員とは異なり、社会保険や労働法令は適用されません。(中略)「ギグワーカー」を「個人事業主」として扱うのか、「従業員」として扱うのか、アメリカでは議論が始まっていて、日本でも労働条件の改善をどう進めるかが課題となっています。
引用:NHK政治マガジン https://www.nhk.or.jp/politics/kotoba/26245.html
「ギグワーク」にはどんなものがあるのか?
単純労働で代表的なものは、前述の「Uber Eats」でしょう。その他にも、運転代行やお掃除代行などもその類です。
単発作業では、ライティング、WEB制作、アプリ開発、占いなどの専門スキルが求められるものから、データ入力や買い物代行などの難易度の低いものまでさまざまな仕事が存在します。
しかし、私は、本当の意味で自由に働く「ギグワーク」を実現するには、やはり低価格の下請け業務から脱却し、自分を発信していくことが大切なことだと考えています。そのような働き方こそ、「起業18フォーラム」でも積極的に推奨している「好きなことで(小さく)起業する」という働き方なのです。
「深刻な人手不足に悩む企業に単発で時間とスキルを提供する」ことも、ひとつの在り方ではありますが、本家アメリカでもそうなっているように、「低賃金で立場が弱く、おまけに何の法的保護もない個人事業主」 そんな立ち位置では、幸せにはなれないのではないかと思うのです。
YouTuberやブロガー、コンサルタント、メーカーのように、「自分ブランド」を磨き、真に自由に働くことこそ、ギグワーカーになる醍醐味です。
副業で「真のギグワーカー」になる準備を進めよう!
介護や子育て中の方も可能は範囲で、或いは、過去の私のように組織に馴染めないサラリーマンの方、通勤ラッシュのような生産性の低い時間にストレスをためている会社員の方は、ぜひ、「自分ブランド」という旗を立てて働く「真のギグワーカー」を目指してみてください。単純に空き時間に単発仕事をしている「人生の切り売り」とは違い、充実した時間を過ごすことができると思います。すぐには収入に結びつかないかもしれませんが、会社員であれば、生活の心配をせずに準備に取り組むことが可能なはずです。
人生100年、老後2000万円、不安なニュースばかりが聞こえてきますが、主体的に稼ぎを創り出すスキル(ブランド)を身に付ければ、副業から本業へと昇華させていくことも可能になるはずです。
多くの人が取り組めば、国によるルール整備や支援も進むことでしょう。
ですが、あなたの自由な生き方を実現するのは、まずは、あなた自身の取り組みからです。どの世代にもできる「真のギグワーカー」になるための準備。ぜひ、チャレンジしてみてください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 新井 一
(パーソナルビジネスブレインズ・コンサルティング事務所 代表)
起業18フォーラムの代表を務められている新井アドバイザー。会社員時代に起業した経験をもとにしたアドバイスは多くの支持を得ております。
2007年から独自のマーケティング理論を基にした集客メソッドを公開。全国で1,000回を超えるセミナーや10,000件以上の相談に応じるなどの実績を豊富にお持ちです。
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