起業アイデア 第8回 学習テーマ【開業資金とアイデアの関係】

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

「やらない」発想が、開業資金を削減する

解説

【モデルケース】

元美容師の髪沼恵美子さん(51歳・仮名)は、子供の成長を機にサロンの開業 を決意した。だが、好立地ともなると、開業資金は低く見積もっても2000万円は必要。手持ち資金は500万円しかない。さらに、カットには自信がある が、現場を離れている間に流行ったカラーに自信がない。要するに、資金も技術も足りない。ところが髪沼さんは、その両方の悩みを同時に解決する方法を思い つく。半年後、彼女はわずか400万円で一等地に美容室をオープンした。店は毎月黒字。一体、彼女はどうやって、こんなに少ない資金で開業できたのか? そして、どんな店舗運営をしているのだろうか?

【座学編で学んだこと】

美容室 といえば、一般的には1 階の店舗物件か、悪くてもテナントビルの 2階物件に開業するのが常識。だが髪沼さんが借りたのは、何とオフィス用の物件だったのだ。通常、店舗物件では入居時に保証金として賃貸料の10ヵ月分は 要求される。対してオフィス物件なら、住居物件と同程度の敷金・礼金で済むケースが多い。この違いは大きい。

もっとも美容業界関係者なら、 この話は「ウソだ」と思うはず。なぜなら、オフィス物件には給排水設備が整っておらず、新たにそれを設置することにも現実味がないからだ。美容室は大量の 水を使う。さらに排水には、パーマ液や染料、毛髪などが交じるため、それらを浄化・除去する設備も不可欠なのだ。

では、髪沼さんはどうした のか? 彼女は給排水設備を取り付けなかった。つまり給水も排水しない。要はシャンプーもパーマもカラーリングもしないということだ。彼女がオープンさせ たのは、カット専門美容室だった。それにしても髪沼さんはなぜ、こんな店を考えつくことができたのだろう? 「ないないづくし」が功を奏したのだ。「資金 がない」「技術がない」。ならいっそ資金はかけない、カラーもやらない。そう開き直った。自分で責任を取れる範囲での開業を考えたことが、こうしたアイデ アを生むもとになった。

「資金がない」や「技術がない」は、決してデメリット一色ではない。他店がやらないことをやるのも大事だが、他店が やっていることをやらないという発想も、差別化のポイントになる。いいアイデアがあれば、開業資金の削減と好業績を同時に実現できるのだ。

 

【実践編で学んだこと】

髪沼さんのように「やらない」発想で、差別化と開業資金削減を同時に果 たせるケースは他にないかを考えてみた。

実際、すでにたくさんの「やらない」ビジネスが誕生している。付け爪を使わないネイルサロン。デザ インを行わないWEB制作会社。塗装を行わない自転車工房……。このちょうど反対で勝負する起業家もいる。付け爪だけをつくってネット販売するネイルアー ティスト。デザインだけを行うWEBクリエイター。自転車や家電などに、ユーザーの好みの塗装を施すペインター……。もうひとつ実例。カットはいっさい行 わず、カラーだけを行う美容室もある。まさに髪沼さんの反対側をいくビジネスモデルである。

つまり、複数の営業品目や作業工程があるのが当 たり前のビジネスなら、その数だけ、分割・独立させて事業化することができるわけだ。当然、こうしたビジネスは、もともとの「総合的」なビジネスに比べ て、開業コストも運転コストも大きく下げられる。

事業創出とは、「あるといい」のに「ない」を発見し、考案し、開発し、製造し、市場へ投入 していくこと。そう聞くと、新しいモノやコトを発想せねばと思いがちだが、そこが考え所。モノやサービスがあふれている日本には、「これやあれが、ないも のがあるといい」のにというニーズも山ほどあるのだ。それを見つけられれば、低資金でニーズを捉えた新事業を生み出すことができるだろう。
 

 


【新たに学ぶ!今週のポイント】

古いビジネスも「やらない」発想で再生できる!

「ゆっくりとお風呂に浸かった後で食事が楽しめる 店」。こんな業態が都心にあったらいいのに……と思ったら、これが実在していた。事業アイデア発想の基本は、すでに何度も学んだとおり、「別々のものを組 み合わせる」ことである。この店の場合は、「銭湯」と「料亭」の合体ということになるだろうか。

だが、この店の誕生の経緯は、実のところ、 合体ではなく削除だったのだ。同店は元々日本旅館である。ホテルに客を奪われて久しい東京のこの老舗旅館は、「宿泊」「食事」「入浴」という3つの基本 サービスの中から、何と「宿泊」をカットしたのである。「飯抜き」や「風呂抜き」はすでに存在するが、旅館の本懐ともいうべき宿泊を削除するとは驚きであ る。しかし決断のかいあって、同店は「宿泊客の少ない旅館」から「入浴できる楽しい料亭」へと見事に再生したのである。(ちなみに希望すれば宿泊もでき る)

要するに「やらない」発想を用いれば、既存ビジネスすらニュービジネスに生まれ変われるのだ。そもそも、サービス業をはじめとする多く の従来ビジネスは、高成長経済に呼応して次々とサービスや機能を付加してきた歴史がある。だが、低成長あるいはマイナス成長の時代においては、「高い料金 を支払ってまで、アレコレ提供してもらわなくていい」のが買い手の常識だ。したがって顧客ニーズに対応したければ、付加してきたものを外していけばいい。 ただし、どのサービスを外すのかが問題。「それを外したことで、新たな価値を顧客に提供できる業態に変身できるかどうか」。これが選択の基準となる。

こ れから事業モデルを考える場合は、まず、進出予定分野の既存ビジネスが、どのような機能装備を標準としているかをよく理解し、そこから何かを削除すること で新業態が生み出せないかどうかと考えてみる方法もある。

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