農業法人 Vol.3 株式会社の農家は過去3年で倍増。その理由とメリット、そして中小企業農業に新規参入する際の平均投資額について

事業計画

執筆者: ドリームゲート事務局


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こんにちは。農業専門コンサルタントの岩崎です。

前回のコラムでは農業ビジネスをはじめる時の大まかな流れについてご紹介しましたが、ご興味はお持ちいただけましたか?

ところで、株式会社の農家数は過去3年で倍増していることをご存じですか?

株式会社の農業生産法人の数は、2010年で1696社あったものが、2013年には3169社とほぼ倍増しています。そのメリットのひとつは、農業生産法人として認められることで、一般企業では考えられないほど有利な農業系の融資や助成金を使えることがあげられます。

そして、全国農業会議所の調査によると、新規就農時にかかった初期投資額は、露地野菜で475万円、施設野菜(ビニールハウス)で777万円となっています(生活費は除く)。

この投資金額が高いかどうかは別として、今回のコラムでは農業ビジネスのお金事情や初期投資の内訳、また急速に増えている農業生産法人について解説したいと思います。

1.農業生産法人? 実は普通の会社ですが、この名称のほうがメリットがあります。

中小企業が法人として農地を取得するには、農地法で定められている農業生産法人の要件を満たし、農業委員会の許可を得る必要があります。(農地賃借の場合は必ずしも農業生産法人の要件を満たす必要はありません。)

「農業生産法人」と聞くと、「学校法人」や「医療法人」のような特殊な法人をイメージされるかもしれませんが、「農業生産法人」というのはあくまで一定の要件を満たした法人に対する任意の呼び名で、実態は普通の株式会社です。あと、農事組合法人という形態もありますが、それはこの後に解説します。

以前に「株式会社」として活動していたころは、農業者の方には怪訝な顔をされることがほとんどでしたが、あるときから「農業生産法人」を取得して名刺を渡すようになったところ、農業者の仲間と思っていただけたのか、その対応の違いに驚いたことがあります(^_^;)。名前の違いだけなのですが、不思議なものです。

つまり、農地の賃借であれば一般法人でも可能ですが、要件をきちんと満たして農業生産法人として認められれば一気に信頼度が増し、その他にも多くのメリットがありますので、これから農業ビジネスに参入する中小企業は、地元農業者の協力を得ながら、次にあげる「農業生産法人の要件」を満たしておくことをお勧めします。

2.農業生産法人の設立要件は?

農業生産法人の設立には次の4つの要件を満たす必要があります。

A「法人形態要件」
B「事業要件」
C「構成員要件」
D「業務執行役員要件」

では、各要件について簡単にご紹介しましょう。

A「法人形態要件」
法人の形態は下記のいずれかになります。

① 株式会社(非公開会社に限る=株式譲渡制限会社)
② 合名会社
③ 合資会社
④ 合同会社
⑤ 農事組合法人(出資制に限る=2号法人)

農事組合法人というのは聞きなれない名称ですが、農業生産をするための法人で、原則農民の方のみが組合員であること、そして事業内容が農業および農業関連事業に限られることが条件になります。

一般的に中小企業が農業参入する場合は、後述する出資制限や役員要件の関係上、グループ会社として株式会社を別途設立して、農業生産法人の要件を満たす方法が現実的です。
株主比率や役員要件の関係上、既存の法人を農業生産法人にするのは現実的無理があります。

B「事業要件」
こごては会社法人形態をとる場合を前提として記述します。農事組合法人の場合は要件が異なりますのでご注意ください。

必要な要件を一言でいうと、「農業および農業関連事業の売上高合計が過半(1/2以上)を占めること」が要件となります。

農業関連事業というのは、具体的には、加工・卸・販売に加え、資材製造、レストラン・農家民宿運営、農業体験など様々な事業を含みます。

2005年(平成17年)9月から農業関連事業の範囲を拡大する措置が全国展開され、要件を満たしやすくなりました。

C「構成員要件」
構成員とは出資者(株主)のことです。
農業生産法人の場合、構成員が下記のいずれかに該当する必要があります。

① 農地等を提供した個人
② 常時従事者(原則として年間150日以上。法人の農業および農業関連事業への従事も含む)
③ 地方公共団体、農地保有合理化法人、農業協同組合、農業協同組合連合会
④ 農作業を法人へ委託している個人
⑤ 継続的取引関係を持つ個人・法人
 ・法人から物資の供給を受ける者又は法人の事業の円滑化に寄与する者
 ・農業生産法人、食品加工業者、生協・スーパー、産直契約する個人、
 ・農産物運送業者など
 ・農商工連携事業者等
  ※3年以上の取引契約を書類で締結することが必要

また議決権については下記の制限がありますので、注意が必要です。
<議決権の制限>
・農業関係者が総議決権の4分の3以上を占めること
・加工業者などの関連事業者の場合は、総議決権の2分の1未満まで可能(特例)

D「業務執行役員要件」
業務執行役員とは、農業生産法人の取締役をさします。下記の①および②の要件を満たす必要があります。

① 取締役の過半が法人の農業(関連事業含む)の常時従事者(原則年間150日以上携わっている)であること
② ①に該当する役員の過半が、原則年間60日以上農作業に従事すること

経理や営業、マーケティングなども農業常時従事者として対象に含まれます。

以上が、農業生産法人の要件となります。

農業生産法人の認定
上記の条件・準備が整ったら、いよいよ農業生産法人の認定です。株式会社として農業生産法人になる場合は、会社法に基づく通常の法人設立手続きをした後に、農業委員会へ農地権利移転についての許可申請を行います。

農業委員会が審査し、農地の権利移転を許可することで、農業生産法人としても認められたことになります。

また農業生産法人としての要件は、農地権利取得後も引き続き満たしておく必要があります。毎年事業年度終了後に、農業委員会への報告書の提出が義務づけられています。

3.農業生産法人は過去3年で倍増。そのメリットと今後

冒頭でも紹介しましたが、株式会社の農業生産法人の数は、2010年(平成22)年に全国で1696社あったものが、2013年(平成25年)には3169社とほぼ倍増しています。

そのメリットのひとつは、農業生産法人として認められることで、一般企業では考えられないほど有利な農業系の融資や助成金を使えることがあげられます。

融資については、農業改良資金、スーパーLなどが有名です。詳しくは下記をご覧ください。

<融資>
JAの農業融資
http://www.jabank.org/loan/nougyo/

日本政策金融公庫 農林水産事業 主要資金金利一覧
http://www.jfc.go.jp/n/rate/rate.html

<助成金>
農の雇用事業
http://www.maff.go.jp/j/new_farmer/nouno_koyou.html

六次産業化関連
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/6jika.html

また他のメリットとして、業務分担をし組織的農業ができることがあげられます。

ある大手農業生産法人では、ビニールハウス100棟ほどの農地を、それぞれ栽培管理チーム、収穫チーム、出荷調整チーム・営業チームといった形で従業員を組織化しています。各作業をマニュアル化することで、初心者でも効率的に作業ができる環境を作り、中山間地の雇用創出に貢献されています。

地域の担い手として、ある程度の規模で今後も継続的に農業をしていくためには、農業生産法人による組織的な農業は個人的に必須だと感じています。
農業生産法人の要件は今後も緩和されていく方向にあります。
最新の要件については、農水省ホームページ等で確認してくださいね。

<企業等の農業参入について>
http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/sannyu/kigyou_sannyu.html

4.農業ビジネスに必要な具体的な金額、気になるお金事情を解説。

農業ビジネスを始めるときに必要な初期投資はいくらくらいだと思いますか?

私も初めて農業生産法人を立ち上げ、経営をはじめたときには、「種と肥料とちょっとした機械があれば・・・と家庭菜園の延長で考えていましたが、実は予想もしない様々な費用がかかることに驚きました。

例えば、農地を賃借してビニールハウスでミニトマトを生産する農業をはじめると仮定しましょう。種、肥料、堆肥、農薬など以外にも次のような費用がかかります。

・農地代
農地賃借料は実はかなり安いです。全国平均で田んぼ12,257円(10アール/年)、普通畑9,782円(10アール/年)となっています。
(全国農業会議所 農地情報提供システム参照  http://agri.nca.or.jp/modules/chinshaku/ )

・ビニールハウス建設費
坪あたり1~1.5万円が相場です。100坪のビニールハウスを立てるなら100万~150万円ほどかかります。その他、虫除けネットや遮光カーテンを設置するなど追加費用がかかります。またビニールは厚さによって耐用年数がかわります。面積にもよりますが、通常2年ものならビニール代4~5万円程度が必要です。私が以前管理していたビニールハウスは特殊構造で1棟150坪ほどあったため、ビニール代だけで1棟あたり50万円近くしたのを覚えています(T_T)

・トラクター、小型耕耘機、収穫用手押し一輪車、動力噴霧器など
効率的に作業を行うためには農業機械は必須です。トラクターは新品で200万~300万円程度、良いものになれば1000万円を超えるものもあります。使う時期が限られるので、普段からメンテナンスをしておかなければ、故障も度々発生します。ちょっとした部品交換だけでも数万円かかることもありますので、意外とランニングコストがかかります。その他、細かい作業用に小型の機械も必要です。

・マルチ、ワイヤー、支柱、鉄管パイプ、誘引ヒモ、クリップなど
栽培に必要な資材はいろいろあります。ミニトマトの場合、家庭菜園のように1株ずつ支柱を立てるわけにはいきませんので、鉄管パイプとワイヤー、誘引ヒモ、クリップなどを使って、トマトを上から吊るします。一つ一つの小物の単価数十円~数百円としれていますが、1000株、2000株と植えていくので、合計するとそれなりの費用になります。

・潅水チューブ、エンジンポンプ
ビニールハウス内に散水するために水をエンジンポンプでくみ上げて、潅水チューブで散水します。潅水チューブも200メートル巻きで3000円程度の安いものから1万円以上するものまで様々です。毎日使うものなので数年で買い替える消耗品として考えましょう。

・出荷作業テーブル、梱包材、テープ、ラベル、プリンター、段ボールなど
出荷にかかる経費も馬鹿になりません。スーパーなどでよく見るミニトマトの200グラムパックで、1個10円程度です。小松菜などの葉物の透明袋で2~3円程度かかります。それにラベルをはりつけ、つぶれないように梱包材をいれた段ボール(1箱70円~100円)にいれて・・・を毎週何百箱と出荷するわけですから、必ず1個単位あたり原価計算しておく必要があります。

・保管用冷蔵庫
意外と重宝するのが収穫後の農産物を一次保管しておくための冷蔵庫です。特に夏場は朝に収穫・梱包したものをすぐに冷蔵庫へ移して夕方の発送まで保管しておく必要があります。5坪ほどの大型冷蔵庫は新品で100万円近くします。毎月の電気代も夏場は10万円近くかかることもあります。

以上、ざっと費用をあげてみました。想像以上に費用がかかることがご理解いただけた のではないでしょうか?

ちなみに、全国農業会議所「新規就農者の実態に関するアンケート調査」(平成13年3月)によると、新規就農時にかかった初期投資額は、露地野菜で475万円、施設野菜(ビニールハウス)で777万円となっています(生活費は除く)。

農業の場合、初期投資に加えて、資金回収できるまでの期間が長いので、先述した融資や助成金も上手に活用したいところです。

もちろん中古の機械やハウスを取得したり、自分で機械のメンテナンスをしたり、資材も繰り返し使えるように工夫することでコストダウンは十分可能です。

ある農業生産法人の社長は非常に倹約家で、中古で購入した機械を自らメンテナンスし長期間使った上に、最後は部品をばらして業者へ販売されていた方もいらっしゃいます。そこまでできるか?は別ですが、原価計算が難しい農業だからこそ、無駄な経費をかけない経営を心がけたいものです。

最後に

次回、最終回は「農業は儲かる?儲からない?」というテーマでお届けします。
お楽しみに!

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