美容室の事業計画書フォーマットと作り方をわかりやすく解説

この記事は2024/04/15に専門家 上野 光夫 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

美容室の開業費用の平均は940万円(日本政策金融公庫「創業の手引き」より)といわれていますが、同データによると65%の方が金融機関から開業資金を調達しています。一方で廃業率は1年以内が6割、3年以内が9割、つまり3年以内に90%が廃業するというデータが出ています。

金融機関から開業資金を調達する際に必要となる「事業計画書」ですが、事業計画書をつくることは融資のみならず、ビジネスの成功のためにも必要不可欠です。

この記事では、美容室を開業予定の方が首尾よく資金調達し、事業が成功するために必要となる事業計画書の書き方について説明します。

- 目次 -

美容室開業の事業計画書を書く前に注意すべき3つのこと

事業計画書を作るうえで欠かせないのが「基本的なことを整理してから書く」ことです。

事業計画書で整理すべき項目は多岐にわたるため、いきなり書きはじめてしまうと、うまくまとめられなかったり、内容が重複してしまいます。

事業計画書を作る前には次の注意事項を確認したうえで、項目を整理してから取りかかることをおすすめします。

①なぜ事業計画書が必要なのか?計画を作る理由を知っておく

事業計画書とは「これから始めようとする事業の設計図」です。

頭にうかんでいるプランを計画として書き出すことで、不足している情報やあいまいな部分を明確にできるだけでなく、矛盾点やまちがい、計画の甘さに気づくことができます。

よくまとまった計画は金融機関から融資を引き出すための強力な武器となります。

②届出は、事業計画書の作成前に準備が必要

美容室を開業するには、およそ以下の手順が必要となります。

  1. 情報の整理と事業プランの作成
  2. 立地の確認と店舗の契約
  3. 必要な資金の見積もり
  4. 開業届や法人設立手続き、保健所などへの手続き
  5. 融資の申込み
  6. 開店準備(内装、スタッフ募集、設備や消耗品の購入、集客活動)
  7. 開業

※ これらの手順は、状況により入れ替わる場合があります。

美容室を開業するには、次の要件を満たさなければなりません。

  • 届出を出して、保健所による施設の検査を受けること
  • 従業者数が常時二人以上の美容所の場合は、管理美容師を置くこと
  • 管理美容師は、三年以上美容の業務に従事し、一定の講習を受けたものであること

美容室を開業する場合には保健所に「美容所の開設届」を提出し、所長の確認を受けなければなりませんが、この手続きは融資申し込み前に必要となります。

また、届出には施設の検査や一定の書類の提出が必要となるので、早めに準備しておきましょう。確認を取らずに営業した場合、罰金や営業停止処分となることがあります。

届出について不明点がある場合は、営業予定地を管轄する保健所や専門家に確認すれば、手続きの漏れや二度手間をなくすことができます。

③美容室の開業に必要な資金と利益の目安を知っておく

店舗を借りて美容室を開業する場合には、物件の取得費の他にも、さまざまな費用がかかります。小規模な店舗で開業する場合でも、まとまった資金が必要となるため、どの程度の費用がかかるのかを見積書の金額にもとづき把握しておきましょう。

美容室の開業資金の目安は、以下のとおりとなります。

引用:新たに美容業を始めるみなさまへ 創業の手引+

店舗の規模や立地にもよりますが、開業資金はおよそ6001,500万円ほど必要となります。

また、これ以外にも、開業から3ヶ月~半年くらいの運転資金も用意しておくとよいでしょう。なお、上記のケースをモデルにした損益の目安は、以下のとおりとなります。

<1ヶ月あたりの損益のイメージ>

従業員2名を想定(営業利益には個人事業主の所得が含まれる)

参考:https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/service/service13.html

設備資金、運転資金とは?

設備資金とは、事業で使用する設備の購入にかかる資金です。一時的に発生するのが特徴です。これには車両や内装費、什器の購入費など、美容室だと椅子やシャンプー台、パーマの機材などが該当するでしょう。

これに対して、運転資金とは、設備資金以外で事業の運転に必要となる資金です。継続的に発生するのが特徴です。家賃、人件費、仕入れ代金などがこれに該当します。

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創業者の借り入れには、日本政策金融公庫の「新規開業資金」がおすすめ

独立したての方は信用力が少ないため、通常の金融機関からの借入れが困難です。

しかし、日本政策金融公庫(日本公庫)の新規開業資金は、創業者のみを対象とした融資制度で、多くの方が利用しています。

申し込みの要件も通常の融資より容易で、融資がスピーディーなどの特徴があるため創業者におすすめです。

日本公庫では申し込みの際に「創業計画書」の提出が必要ですが、業種に応じた創業計画書のテンプレートを用意しているので、そちらを使うと作成がしやすくなります。

「創業計画書」作成時に注意すべき3つの項目

創業計画書をはじめてつくる方は、日本公庫の記載例を見ただけではなかなかイメージがつかみにくいかもしれません。ドリームゲートでは、記載項目ごとに詳しくその内容や書き方を紹介していますので、こちらの記事もあわせてご参考ください。

参考:5分でわかる、日本公庫の事業計画書PDFの見方を解説
参考:創業計画書の書き方マニュアル

以下では、とくに創業計画書で重要となる3つのポイントについて解説します。

①経営者の略歴

創業者がこれまでどの程度の経験をしてきたかは、審査の上でも非常に重視されます。

望ましい実務経験の目安としては「6年以上」ですが、それ以下の年数であっても経歴内容によっては、融資を受けることは十分可能です。ただし、この年数が1~2年などと極端に短い場合には、融資審査も厳しいものとなると考えた方がよいでしょう。

もし受賞歴や特別な経歴(美容師コンテストに入賞した、店長として勤務したことがある)などがあれば、評価のポイントとなるので、忘れずに記載してください。

②取扱商品・サービス

この箇所では、取扱商品・サービスの内容/セールスポイント/販売ターゲット・販売戦略/競合・市場などについて記載します。

取扱商品・サービスについては、取扱予定の商品等の品目や名称、金額、数量などを記載しますが、以下の点にも注意してください。

  • サービスについて
    その内容や流れを図にすると理解してもらいやすくなります。
  • セールスポイントについて
    他と差別化できている部分やオリジナルの工夫などを中心に説明します。
  • 販売ターゲット・販売戦略について
    「●●地区に在住する30~50歳の男性サラリーマンで年収〇万円」のようにターゲットが明確にイメージできるように絞り込みます。
  • 競合・市場について
    文章で説明するだけでなく、営業エリアの地図に競合先を落とし込んだ資料を用意するなどすると、わかりやすいものとなります。

③事業の見通し(月平均)

通常は、創業〜1年目、1年目以降の2年分について損益の見通しを作成します。

主な項目は、売上高、売上原価(仕入高)、経費(人件費、家賃、支払利息など)、営業利益です。

実現性の薄い計画で無理に黒字の計画にするよりも、当初の期間は赤字でも整合性の取れた内容の方が評価されやすいといえます。

また、計画に記載する数値については、その根拠を明確にするための補足説明を入れるようにしてください。

損益計算のシミュレーション(単位:千円)

参照:https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/service/05028.html

創業計画書には、資金繰り計画もつけると説得力がUP!

創業融資で審査のポイントとなる項目には、「熱意が伝わる内容となっているか?」「不必要な資金はないか?」「売上げや利益に信ぴょう性があるか?」などがあります。

とくに資金繰りの箇所では「売上げの推移」や「経費・利益の内容」などが細かくみられるため、資金繰り計画も一緒に提出すると高い評価を得られやすくなります。

計画の作成には、日本公庫のテンプレート「月別収支計画書」の他、以下で紹介する事業計画書作成ツールなども活用できます。

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説得力のある収支計画が作れる3つのステップ

事業計画書で収支の計画を作成する際に欠かせないのが、「売上げや経費の根拠」です。根拠のない計画では、実現性や信ぴょう性の乏しいものとなってしまいます。

説得力のある収支計画を作るには、1ヶ月単位で作成し、次のような方法で計算するとよいでしょう。

①客数を予測する

客数は、店舗の席数をベースにして、利用者が何回転するかを予測する他、同業種・同規模の店舗データを参考にして求めることもできます。

ただし、回転数は時間帯や曜日などで異なるため、昼や夜、繁忙時と通常時などのように、実態にあわせて算定することで、より正確な見込みを立てることができます。

これ以外にも、1人のスタッフがどの程度の人数に対応できるかなどからも算出することができます。

②客単価を予測する

客単価は、自店のメニューをベースに組み立てると誤差が少なくなります。

具体的には、カット、カラー、パーマなどよく利用されるオーダーを想定し、それぞれにメニューで定めた金額をかければ、およその客単価が算定できます。この方法ならば、「なぜこの客単価になるのか?」という質問に対しても根拠をもって答えることができます。

③利益を計算する

売上や利益は、それぞれ以下の方法で算出します。

  • 売上げ 「客数×客単価×営業日数」
  • 粗利(あらり) 「売上げ-原価(シャンプー、パーマ液代など)」
  • 利益 「粗利-経費(人件費、家賃、水道光熱費、広告費、月々の融資の返済など)

収支計画を作るうえで重要なのが、「返済利益の確保」です。

毎月の返済額が10万円の場合、利益が5万円しかなければその月は返済ができないということとなります。

手持ちのキャッシュで返済が可能ならよいのですが、これができない場合には返済ができない月が発生してしまうことになります。

このような計画は審査でも大きなマイナスとなるため、十分に気をつけてください。

美容室の融資で役立つ無料の事業計画書作成ツール

美容室の事業計画書の作成では、以上のような点に注意する必要があります。

しかし、次のフォーマットを使えば、資金額を入力するだけで収支の目安がわかるため、簡単に事業計画書を作ることができます。美容室用のフォーマットもありますので、ぜひツールで事業計画作成してみてください。

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売れる美容室にするために絶対しておいた方がよい3点

開業後も集客できる美容室とするためには、はじめによく考えておかなければならないポイントがあります。

これをしっかり作ることで、説得力のある事業計画書になるだけでなく、実際の経営を成功させるための重要な要素となります。

①コンセプトを決める

事業計画書の作成は、コンセプト作りからはじまります。

まずは、セールスポイントとなる強みや専門とする技術など、価格以外の価値を見つけ、差別化できないかを考えましょう。単純な安売りや安易なプランは長続きしないだけでなく、他店との競争を引き起こす原因となります。

②ターゲットを定める

ターゲットの設定では、自分の店にどんなお客が来てほしいかということを考えます。とはいえ、自身のコンセプトやターゲットからかけ離れた設定では、集客は困難です。ターゲットの設定にあたっては、どのような人がどのような過程で来店するのかといったストーリーをイメージすると作りやすくなります。

ターゲットの設定は、できる限り具体的に、かつ詳細に行いましょう。これを「ペルソナ」といいます。

③他の店舗を研究してみる

コンセプトや経営方針を考える際には、他店を参考にするという方法が効果的です。

できるだけ多くの店舗を見て、自分に取り入れられるものがないかを研究しましょう。

具体的には、他店のコンセプト、セールスポイント、集客方法、サービスの提供方法などを参考にすることで、さらに計画をブラッシュアップすることができます。

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元日本公庫融資課長にインタビュー!美容室開業でよくある質問と答え

ドリームゲートではこれまで6万件の起業・経営の相談を受けてきていますが、その中で美容室の開業においてよくある質問と専門家からの回答内容について、ドリームゲートアドバイザーで、元・日本政策金融公庫の融資課長で現在は資金調達コーディネーター🄬として活躍されている上野光夫氏に聞いてみました。

Q.借入ありでも美容室開業のために融資を受けることはできますか?

上野アドバイザーの回答:借入があっても融資を受けられる可能性はあります。借入はできるだけ少ないほうがいいので、融資を申し込みするまでにできるだけ減らすことを心がけてください。

ただし、創業融資の場合、自己資金ゼロで全額借入の計画だとなかなか審査に通らないので、いくらか自己資金も貯めておく必要があります。

自己資金がそれほどない場合は、身内の方から返済不要の資金を提供していただく方法でカバーできる可能性があります。

Q.事業計画書の中の収支計画は何年分必要でしょうか?

上野アドバイザーの回答:できれば3年分は用意しておきましょう。美容室のように開業時にまとまったお金が必要になる業種では1年目で黒字化するとも限りませんし、日本公庫の融資審査においても3年分の収支計画を求められることがあります。

可能なら借入期間と同じだけの計画があると、審査担当に「しっかり考えているな」という印象をもってもらえます。

Q.6年前に親から譲り受けたお金をとっておいています。自己資金として認められますか?

上野アドバイザーの回答:6年間大事にとっておいたお金なら、自己資金として認められる可能性は高いです。ただし当時、親御さんから譲り受けた際の経緯などはしっかり説明できるようにしておく必要があります。入金してもらった際の通帳の写しなどはしっかり用意しておきましょう。

美容室の開業におすすめの本 厳選の3冊

事業計画を作るときには、書籍なども参考にすると、違った視点からさらに深い情報を得られます。ここでは美容室の開業の参考となる3冊の書籍をご紹介します。

決定版美容室の開業―3575軒の開業支援から導き出した店づくりの考え方

美容室に特化した事業計画書の書き方や税務の基礎知識、開業事例など、開業に必要な知識がまとまっています。また、開業スケジュール表や備品リストが付録でついているので、すぐに活用できます。

参考:https://www.amazon.co.jp/dp/490694180X/

美容室が10年後も変わらずに運営できているかはすべて開業時に決まる!

美容室経営の現状を踏まえ、長寿店舗にするためには何が必要かという視点から、物件探しから実際の経営の知恵までをまとめたもので、読者の評価も高い一冊です。

参考:https://www.amazon.co.jp/dp/4815007675

1人サロン経営で月額100万円を実現する7つの秘策

美容室に特化した内容ではありませんが、多くのサロンを成功に導いてきた著者による経営の実践的ノウハウが詰め込まれています。ターゲット・コンセプト・集客方法なども詳しく説明されていて、参考になります。

参考:https://www.amazon.co.jp/dp/486367497X

まとめ

美容室開業の場合、多くのケースでは融資での資金調達が必要となりますが、その際には事業計画書の内容が結果に大きな影響をおよぼします。金融機関に評価される事業計画書を作るには、熱意も必要ですが、その計画が現実的かつ実現可能であると納得させるものでなければなりません。そのためには、事業プランを見直す、資料などで計画の根拠を明らかにするなどの対策が欠かせません。また、計画を作るときには、公庫の記載例を参照するなどの他、こちらのようなツールを使うと作業を効率的に行うことができます。

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この記事の監修者
上野 光夫(うえの みつお)
資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士
(株)エムエムコンサルティング 代表
元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。
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執筆者プロフィール:ドリームゲート事務局

ドリームゲートは経済産業省の後援を受けて2003年4月に発足した日本最大級の起業支援プラットフォームです。
運営:株式会社プロジェクトニッポン
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