返済不要な5つの資金調達方法とは?メリット・デメリットを解説

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 引地 修一

創業当初や事業が軌道に乗り始めたころには、何かと事業資金が不足しやすくなります。

しかし、融資には厳しい審査があるため財務状況がよくなければ利用できませんし、不足する資金のすべてを自己資金で補填するのもむずかしいといえます。

そこで活用したいのが「返済不要の資金調達」です。

この記事では、返済不要の資金調達の種類や特徴、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

返済不要の資金調達とは?

「返済不要の資金調達」とは、資金の提供を受けた場合でも、返済する必要のないタイプの調達の手法です。

代表的なものとして、以下の5つがあります。

  1. クラウドファンディング
  2. ベンチャーキャピタル
  3. エンジェル投資家
  4. 助成金・補助金
  5. ファクタリング

それぞれで特徴や難易度が異なるため、会社の状況や実力にあわせた利用が必要となります。 

本来、返済不要の資金調達手段には、「国や自治体の主催である」や、「正式な出資である」などといった、納得のできる理由や仕組みがあります。

しかし近年、返済不要の資金調達としてTwitterやインスタグラムなどのなどのSNSを利用した詐欺被害の報告が増えています。 詐欺については、主催元が怪しい、きちんとした仕組みがないなどということがほとんどです。

「返済不要」という言葉に騙されずに、これらの点によく注意して安全・最適なものを選ぶようにしましょう。

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クラウドファンディングでの資金調達

「クラウドファンディング」とは、インターネットを使って事業に協賛してくれる人から資金を集める手法です。リターンよりもその企業を応援する気持ちやプロジェクトに賛同するという観点から出資することが多いので、自社の魅力やプロジェクトの内容を具体的かつ分かりやすく提示することが大切です。

<クラウドファンディングのメリット>

  • 新商品、新サービスの提供を広く社会に訴えることができる
  • 少ないコストで比較的、簡単に始められる
  • 返済のリスクが少ない

<クラウドファンディングのデメリット>

  • 調達の規模を明確にしておかないと商品、サービスの提供等の適切な対応ができなくなる
  • サイトの立ち上げや運営を専門の業者に依頼する場合、それ相応の手数料や経費負担が発生する
  • 貸付型、事業投資型、株式型は、「金商法」の対象となるため、事業規模と資金計画、費用、手続き等を勘案して取り組む必要がある

クラウドファンディングには、5つの種類があり、それぞれに特徴があります。

融資型

「融資型クラウドファンディング」とは、インターネットを通じて個人投資家から集めた資金を原資とし、クラウドファンディング業者が希望する企業に対して融資を行うタイプの方法をいいます。

投資をした個人投資家は、融資先から返済された元金・利息を分配金として受け取ることができます。 

融資型クラウドファンディングに投資する場合には、貸付先企業の信用状況をよく確認し、倒産や支払い不能のリスクがないかを十分に考慮する必要があります。

購入型

「購入型クラウドファンディング」は、資金を集めたい企業がインターネットを通じて募集金額を設定し、応募してくれた方へ金額に応じた商品やサービスを提供する仕組みです。

現在、日本で行われているクラウドファンディングの主流であり、資金を提供した人に対し、その金額に応じて、「自社商品やサービスの割引購入権」や「プレミアムパーティーへの招待」などを提供する形式となっています。

寄付型

「寄付型クラウドファンディング」は、主に「社会貢献的な活動」や「慈善的活動」を行っている団体が活動費を獲得する目的で寄付を集めるための仕組みで、その多くが、震災復興や発展途上国に対する支援などを目的に行われています。 

資金の提供を受けたときも他の形式のクラウドファンディングと異なり、出資者へのもの・サービス・お金などのリターンが必要ない、もしくは小さいところに大きな特徴があります。

株式投資型

「株式投資型クラウドファンディング」とは、インターネットを通じて、非上場株式に対して出資してもらい、出資者へは企業の業績に応じた配当を渡すというものです。 

以前は禁止されていましたが、2015年に金融商品取引法が改正され、実施が可能となりました。

資金調達者の事業規模や事業実績に応じて出資額や配当が変動するため、資金計画や費用等を考慮しながら取り組むことが大切です。

ファンド型

「ファンド型クラウドファンディング」とは、特定の事業に出資してもらい、その事業から得る利益を分配金として還元する形式になります。

融資型と似ていますが、融資型が融資の元本と利息から配当を出すのに対し、ファンド型の場合は選択したプロジェクトの売上げや利益にから分配金を出す点が異なります。

ベンチャーキャピタルからの資金調達

「ベンチャーキャピタル」とは、VCとも略し、ハイリスク・ハイリターンによる積極的な投資を行う投資会社のことをいいます。

創業会社や未上場会社を対象とした投資により、リターンを得ることを目的とすることから、ベンチャーキャピタルからの投資はスタートアップやベンチャー企業におすすめの資金調達方法です。

また、信用や実績がなくとも、事業内容に見るべきものがあれば支援を受けられるため、実績のない企業にとっては頼もしい資金調達方法といえます。

<ベンチャーキャピタルのメリット>

  • 調達できる額が大きい。(通常の創業融資などでは3,000万円程度に制限されるが、ベンチャーキャピタルでは億単位の支援が可能)
  • 個人保証や担保が不要 

<ベンチャーキャピタルのデメリット>

  • 審査が厳しい
  • 新規性や発展性のあるビジネスプランでないと支援が受けにくい
  • ベンチャーキャピタルによっては、成績悪化や将来性がないと判断された場合、株式の買戻しや経営へ介入されることもある

投資機関の特徴から見た場合のベンチャーキャピタルの種類は、大きく分けて次の4つとなります。

  1. 政府系ベンチャーキャピタル
  2. 金融機関系ベンチャーキャピタル
  3. コーポレートベンチャーキャピタル
  4. 事業会社系ベンチャーキャピタル

政府系ベンチャーキャピタル

政府系ベンチャーキャピタルは、国や公的機関が運営しているベンチャーキャピタルです。

通常のベンチャーキャピタルが、投資先の企業の上場後にその株式を売却してリターンを得るのに対し、公的ベンチャーキャピタルは、株式の売却よりもその企業からの配当を主な目的とし、継続的に企業の成長を支援するという特徴があります。

また、 資金調達を受ける企業にとっては、「長期にわたる安定経営を期待できる」、「売却による株主の変更や株式の買戻しなどを求められる可能性が少ない」、「資金調達を成功させることで、企業の評価につながる」といったメリットがあります。

しかし、一方で「審査基準が厳しいものが多い」、「比較的、調達できる資金額が少ない」、「事業活動や結果に関する細かな説明を求められる」といったデメリットもあります。

金融機関系ベンチャーキャピタル

金融機関系ベンチャーキャピタルは、銀行や証券会社、保険会社などが設立しているベンチャーキャピタルで、資金力が豊富なことから投資額も大きい傾向にあります。 

「大きな額の資金調達が期待できる」、「グループの総合力を生かした、さまざまなバックアップを受けやすい」、「幅広い顧客層やネットワークを生かせる」などのメリットがあります。

しかし、一方で「リスクの高い事業への投資を避ける傾向が強い」、「原則として投資が主目的であるため、事業シナジーやアライアンスを目的とした事業に向かない」といったデメリットもあります。

コーポレートベンチャーキャピタル

コーポレートベンチャーキャピタル(CVCともいう)とは、投資会社が社外のベンチャー企業に対して出資やその他の投資を行うことを目的にファンドを設立する形式をいいます。

CVCを作る目的はいろいろありますが、基本的にはリターンそのものよりも、自社事業と関連のある事業に投資することで得られるシナジー効果に重点を置く傾向が強いといえます。

ファンドの方法には、自社が直接的に投資を行うもののほか、自社の子会社や関連会社としてベンチャーキャピタルを作って行う、他のベンチャーキャピタルと共同でファンドを作るなどがあります。

CVCを利用するメリットとしては、「CVCからの投資を通じて、母体である事業会社と強固な関係性を構築できる」、「規模の大きい会社から投資を受けることにより、社会的な信用が増す」ということがあげられます。

デメリットとしては、「投資会社の存在が表面化した場合、他の同種の会社からの支援を受けにくくなることがある」、「経営に介入され、希望通りの事業がしにくくなりやすい」などが考えられます。

独立系ベンチャーキャピタル

独立系ベンチャーキャピタルとは、特定の親会社をバックにもたない、独自の資本のみで経営しているベンチャーキャピタルです。 

金融機関系ほど大きなところは少ないですが、ベンチャーキャピタルごとに経営方針や目的が異なっているから、支援の方向性についても独自性が強いといえます。

独立系ベンチャーキャピタルによる支援については「独自の出資方針を有していることが多いため、他のベンチャーキャピタルで断られた案件でも取り上げられやすい」、「創業当初の企業であっても、支援を受けやすい」などのメリットがあります。

しかし、「ベンチャーキャピタルによって、投資の大きさにバラツキがある」、「純粋な投資目的の場合が大半のため、リターンを最優先とした支援となりやすい」といったデメリットもあります。

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助成金や補助金の活用

助成金や補助金は、企業に対し事業の実施にかかる経費の一部を国や自治体が助成・補助する制度です。

助成金は、厚生労働省が行う資金支援を中心としたものとなりますが、一定の要件を満たせば誰でも受給できるという特徴があります。

これに対して、補助金は助成金以外の省庁や団体が行う資金支援を指すことが一般的です。しかし、補助金的な内容の場合でも、助成金の名称が使われていることがあります。

助成金や補助金を活用するメリット・デメリット

助成金や補助金については、次のようなメリットとデメリットがあります。

<助成金のメリット>

  • 返還不要で資金の調達ができる
  • 厚生労働省の助成金は、必要な要件を満たせれば誰でも受給できる
  • 助成事業を行うための経費が少なくて済む(原則、雇用や労働環境の改善などをすればOK
  • 比較的、簡単な手続きをするだけで申請できる

<助成金のデメリット>

  • 実施している官庁や団体が少ない
  • 助成額が大きくないものが多い
  • 新規雇用や雇用維持など、対象となる事業が偏っている

<補助金のメリット>

  • 返還不要で資金の調達ができる
  • 補助金を受給した場合には、その技術力やビジネスプランが評価される
  • 助成金と比較して、支援する金額の大きいものが多い

<補助金のデメリット>

  • 受給するには審査を通過しなければならない。そのため、申請すれば誰もがもらえるわけではない
  • しっかりとした事業計画を提出しなければならない
  • 公募期間が短く、受給までに時間がかかるものが多い
  • 受給をするには、経営者が補助事業にかかる経費の全額を立て替えなければならない

エンジェル投資家による出資

「エンジェル投資家」とは、その企業の経営理念や将来性に賛同し、支援や資金調達の協力をしてくれる人や企業のことをいいます。

 エンジェル投資家が投資をする目的は、「次世代の起業家を応援する」ということにあるため、出資に対するリターンへの強制が少なく、返済を気にすることなく独自性を維持した経営をしやすいといえます。

したがって、金融機関からの融資の対象にはなりにくいが、社会や人々の生活に変革を与えるような事業や、これまでになかった利便性を提供する革新性の高い事業を行う方に向いているといえます。

支援の方法は、出資という形で行われるのが一般的ですが、中には低利での貸し付けという方法がとられることもあります。

エンジェル投資家の出資を得る方法とメリット・デメリット

エンジェル投資家とのコンタクトのとり方としては、

  • セミナーや交流会で人脈を広げる
  • マッチングサイトに登録してPRする
  • 取引先や金融機関へ紹介を依頼する
  • 商工会議所へ支援の依頼をする

などといった方法が一般的ですが、中には詐欺まがいのものもあるため、あまり条件の良い話には注意してください、

<エンジェル投資家による出資によるメリット>

  • 資金の返還の必要がない(出資の場合)
  • 経営の支援を受けられる可能性が高い
  • 投資を通じて人脈を広げることができる 

<エンジェル投資家による出資によるデメリット>

  • 一口あたりの金額が小さいものが多い
  • 必要な額が集まりにくい
  • 経営面に介入されるケースもある

ファクタリング

「ファクタリング」とは、利用者が保有する売掛金(=売掛債権)をファクタリング業者に譲渡・売却することで、売掛金の回収を待たずに資金調達をすることができるサービスです。

ファクタリングの一番大きな特徴として、「金利が非常に高い」ということがあげられます。ファクタリングは融資ではなく債権の譲渡または担保のため、利息制限法による金利を超えて手数料を設定することができます。

そのため、金利ベースで計算した場合には、年利100%を超えるケースも少なくありません。また、将来分の売上げを現金化してしまうため、一度、利用したら途中でやめることがむずかしくなります。

その他にも、情報が漏れることにより信用を失う危険性もあるため、通常の資金調達手段ではなくリスクを伴うものと考えると良いでしょう。

ファクタリングで資金調達する際のメリットとデメリット

ファクタリングには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

<ファクタリングのメリット>

  • 短時間での資金調達が可能なため、急な資金需要に対応できる。
  • 借入れではなく債権(売掛金)の譲渡・売却のため負債にならず、決算書のオフバランスができる。
  • 売掛先会社の信用力により審査や評価をするため、利用する会社の財務状況が悪い、新設会社で信用が低いといった場合でも資金の調達ができる。

<ファクタリングのデメリット>

  • 手数料が高い。(年利換算で、実質手数料120360%
  • 売掛金の額面以下での調達しかできない。
  • 債権譲渡登記などの手続き費用がかかる場合がある。
  • 関係先にファクタリングをした事実が知られる可能性がある。(売掛債権先企業への通知など)

返済不要な資金調達方法を活用しよう

返済不要な資金調達方法を活用することで「資金繰りを改善することができる」ということ以外にも、「資金以外の支援を受けられる」、「社会的信用力の向上につながる」といったメリットを享受できることもあります。

ただし、それぞれで利用の難易度や条件が異なるため、自分の状況にあった方法を十分に考えて活用しましょう。

また、ベンチャーキャピタルや補助金の利用では、厳しい審査があるため、十分な時間を取って準備をすることも必要といえます。

ドリームゲートでは事業プランの立案や計画書の作成に精通した専門家が多数、在籍しているので、ベンチャー企業との交渉や補助金・助成金の申請などでお困りの場合には、お気軽にご相談ください。

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執筆者プロフィール:引地 修一/Ichigo(一期)行政書士事務所

創業者と経営者の資金調達から事業再生、記事取材までを幅広くサポート。
保有資格:行政書士、事業再生士補、事業再生アドバイザー、宅地建物取引士、古物商

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