起業・経営FAQ:事業譲渡で従業員をそのまま引き継いでも大丈夫?

この記事は2026/02/25に専門家 鈴木 圭史 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局


事業譲渡による従業員承継時の雇用契約と労務リスクについて

ポイント/結論

Q. 事業譲渡による従業員承継時の雇用契約と労務リスクについて教えてください

  • 事業譲渡の場合、雇用契約は自動承継されず、個別同意と再契約が必要です。
  • 給与や勤務条件の不利益変更には従業員の同意が必須となります。
  • 未払い残業代などの潜在労務債務は原則として売主側に帰属しますが、実質対応が必要なケースも。
  • デューデリジェンス段階で勤怠記録・給与台帳・社会保険加入状況を必ず確認してください。
  • キーパーソン従業員の残留意思確認が事業継続の成否を左右します。

鈴木 圭史

この質問への回答者

鈴木 圭史(すずき けいじ) 社会保険労務士・海事代理士

ドラフト労務管理事務所代表。「問題解決のドラフト提案と分かりやすい説明」を強みに、労務監査、IPO支援、派遣法対応から船員労務まで幅広く対応。人材派遣会社での実務経験を活かし、関西ならではの親しみやすさで難解な労務問題を端的に解決し、企業の健康経営を支援している。

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質問

現在、飲食店舗のM&A(事業譲渡)による買収を検討しています。売主からは、現従業員も引き続き雇用してほしいとの意向があり、可能な限り現行体制を維持したまま事業を引き継ぐ想定です。

ただ、株式譲渡ではなく事業譲渡となるため、従業員の雇用関係がどのように扱われるのか、また労務面でどのようなリスクがあるのかを整理したくご相談いたしました。

具体的には以下の点について教えてください。

  • 事業譲渡の場合、従業員の雇用契約は自動的に承継されるのか
  • 再契約が必要な場合の実務対応
  • 給与や勤務条件を変更することは可能か
  • 未払い残業代や社会保険未加入などの潜在債務は引き継ぐのか
  • 従業員が引継ぎに同意しない場合の対応

買収後の労務トラブルを未然に防ぐため、事前に確認すべきポイントについてアドバイスをいただけますと幸いです。


専門家による回答: 事業譲渡による従業員承継時の雇用契約と労務リスクについて (回答者:社会保険労務士・海事代理士 鈴木 圭史氏)

回答者
鈴木 圭史
鈴木 圭史(すずき けいじ)
社会保険労務士・海事代理士 ドラフト労務管理事務所代表
「問題解決のドラフト提案と分かりやすい説明」を強みに、労務監査、IPO支援、派遣法対応から船員労務まで幅広く対応。人材派遣会社での実務経験を活かし、関西ならではの親しみやすさで難解な労務問題を端的に解決し、企業の健康経営を支援している。

事業譲渡によるM&Aにおいて、従業員承継は最もトラブルが生じやすい論点の一つです。株式譲渡とは法的整理が大きく異なるため、正確な理解が重要となります。

雇用契約は自動承継されない

まず前提として、事業譲渡の場合、雇用契約は自動承継されません。雇用主が売主から買主へ変わるため、従業員一人ひとりと新たに雇用契約を締結する必要があります。したがって、従業員の同意がなければ雇用を引き継ぐことはできません。

実務上は、譲渡契約締結前後のタイミングで、

  • 労働条件通知書
  • 雇用契約書
  • 就業規則の説明

を提示し、個別に同意取得を行います。

給与や勤務条件の変更について

次に、給与や勤務条件の変更についてですが、原則として可能ではあるものの、不利益変更に該当する場合は従業員の同意が必要です。特に、給与減額、労働時間延長、休日減少などは慎重な説明と合意形成が求められます。

潜在労務債務の整理と責任範囲

労務リスクの観点で最も重要なのが、潜在債務の整理です。

未払い残業代、未加入社会保険、有給休暇未管理などの問題があった場合、法的責任は原則として売主側に帰属します。ただし、従業員との関係性や事業継続性の観点から、買主側が実質的に対応せざるを得ないケースも少なくありません。

デューデリジェンス段階での必須確認事項

そのため、デューデリジェンス段階で以下の確認を必ず行ってください。

  • タイムカード・勤怠記録
  • 残業時間実態
  • 給与台帳
  • 社会保険加入状況
  • 就業規則の有無

キーパーソン従業員の残留確認

また、キーパーソン従業員の引継ぎ同意可否は、事業継続に直結します。店長・料理長・バーテンダーなど、売上に影響する人材については、譲渡前に面談機会を設け、残留意思を確認することが望ましいでしょう。

従業員が承継に同意しない場合の対応

従業員が承継に同意しない場合、売主との雇用関係は譲渡と同時に終了し、買主側での雇用義務は生じません。ただし、人員不足リスクを想定し、採用計画を並行検討しておくことが実務的です。

事業譲渡における従業員承継の主要論点まとめ

まとめますと、事業譲渡における従業員承継では、

  • 雇用契約は自動承継されない
  • 個別同意と再契約が必要
  • 不利益変更は同意必須
  • 潜在労務債務はDDで精査
  • キーパーソンの残留確認が重要

の5点が主要論点となります。

買収価格や収益性だけでなく、「人材が引き継げるか」という視点が事業価値を大きく左右します。契約締結前に労務DDを実施し、必要に応じて譲渡契約に補償条項を盛り込むことを推奨いたします。

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