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課題・悩み
離婚協議を進めるにあたり、夫が経営する会社の財産分与上の扱いについてご相談させていただきました。
当該会社は夫が創業した会社で、現在も代表取締役として経営しており、
株式はすべて夫名義で100%保有しています。
私は株式を一切保有しておらず、名義上は会社の所有権には関与していない状況です。
このような場合でも、離婚時の財産分与において、会社そのものの価値(株式評価額)が
分与対象として算定される可能性があるのか、法的な考え方を整理したくご相談させていただきました。
具体的には、
・株式名義が夫単独であっても、会社価値は財産分与の対象となり得るのか
・対象となる場合、どのような前提や条件で判断されるのか
・婚姻期間中の会社成長分のみが評価対象となるのか
といった基本的な考え方について、まずは一般論ベースでご教示いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
回答: 夫が株式を100%保有する会社でも、 離婚時に会社価値は財産分与の対象になりますか? (回答者:大部 博之氏)
「提案力とフットワーク」で中小企業の参謀として活躍する大部弁護士。売掛金回収、労務問題、M&A、事業再生まで幅広く対応し、臨床法務・予防法務・戦略法務を総合的に実践されています。
アニメ専門学校の再建支援や米国企業との訴訟など豊富な実績を持ち、どんなことでも気軽にご相談いただけます。
ご相談内容を拝見いたしました。
結論から申し上げますと、株式を夫が100%保有している場合であっても、一定の条件のもとで会社価値が財産分与の対象として考慮される可能性はあります。
財産分与の対象となるか否かを判断するうえで重要となるのは、当該株式が婚姻前に取得されたものか、婚姻後に取得されたものか、また婚姻期間中にどの程度価値が増加したかという点です。
一般的な整理としては、次のように考えられています。
まず株式を婚姻前から保有していた場合、その取得時点の価値は特有財産として扱われ、原則として財産分与の対象外とされます。
一方で、婚姻期間中の事業活動を通じて会社の価値が増加した場合、その増加部分については夫婦の協力関係のもと形成された共有財産と評価され、分与対象として考慮される余地があります。
他方、株式を婚姻後に取得した場合には、名義が夫単独であっても、原則として共有財産と評価される可能性が高くなります。
なお、実務上は株式そのものを分割するのではなく、株価評価を行ったうえで、その評価額を基準に金銭で清算する方法が取られるケースが一般的です。
これは、経営権の安定や事業継続への影響を回避する観点からも合理的とされています。
株価の算定にあたっては、会社の純資産、収益力、将来性などを踏まえた評価手法が用いられますが、非上場会社の場合は評価方法によって金額が大きく変動するため、専門家による算定が必要となることが通常です。
また、分与の割合は、原則として2分の1ずつが基本ですが、以下の場合には修正されることもあります:
・経営者の特殊な能力や努力が顕著な場合
・配偶者の貢献度が特に高い場合
まとめますと、株式を夫が100%保有しているという事実のみをもって財産分与の対象外と直ちに判断されるものではなく、取得時期および婚姻期間中の価値増加部分の有無が重要な判断要素となります。
個別事情により結論は大きく変わりますので、株式取得時期、婚姻期間、事業成長過程、会社経営への関与度などを整理したうえで、具体的な評価を行うことが望ましいといえます。


