スモールM&Aにひそむ地雷。あなたは避けられますか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 曲尾 悟志

<プロローグ:そこに地雷がありますよ>

「サラリーマンを辞めて、300万円で会社を買って経営者になれますか?」

「M&Aマッチングサイトにある案件を買いたいのですがどう思いますか?」

「交渉相手から連絡がないのですが、、、」

現在、スモールM&Aは大注目されています。どのマッチングサイトも大盛況で、譲渡側(売り手)も譲受側(買い手)も右肩上がりで増えています。補助金がでたり、書籍も多く、またセミナーなども活発に行われている状況ですが、活況になればなるほど当然ですがトラブルも増えています。

ネットショッピングでもときおり詐欺が話題になりますよね?M&Aは、モノの売買ではないので、より複雑です。交渉プロセスの中にある「無数の地雷」を知らずに踏んでしまうと・・・買収金額だけでは済まない金銭的な損失を被ることも。さらには金銭的な損失だけで済めばまだ傷は浅い方だと言えるほどのことも起こりうるのです。

ちなみに、300万円で売られている会社は、300万円あれば買えるのか?

そもそも300万円は、適正な価格なのか?

今回はそのあたりにも触れながら、スモールM&Aについてご説明いたします。

スモールM&Aとは

M&Aは、企業の合併買収のことです。今流行りのスモールM&Aとは、明確な定義はありませんが、中小企業や個人事業主、個人の間で、売上が数百万円から3億円未満程度、また企業/事業の譲渡(買収)価格が数百万円から数千万円(1億円以下)程度で取引される案件を指しています。

M&Aの代表的なスキームについて

M&Aの代表的なスキームは、株式譲渡と事業譲渡です。譲渡対象が会社全部か一部かという違いがあります。株式譲渡の場合は、資産や負債、許認可や従業員、取引先など全てを原則引き継ぎます。事業譲渡は、事業部門や店舗だけを売買したい場合や簿外債務等リスクをヘッジしたい場合などに使われます。

起業独立のパターンによるメリットとデメリット

なぜ今、スモールM&Aが注目されているのか、その背景を簡単に説明します。

起業独立を考えたときに、大雑把な分け方になりますが、3パターンの選択肢があります。

自分の知識や経験、資格や人脈を活かして会社を設立(個人事業主含む)するゼロイチ起業パターンと、フランチャイズに加盟するフランチャイズ起業パターン、既にある会社や事業を承継するスモールM&A引き継ぎ起業パターンです。

各々のメリットとデメリットをシンプルに考えてみます。

ゼロイチ起業

メリットは、自分の好きなこと、やりたいことを好きなタイミングや方法でできること。

デメリットは、儲かるか儲からないかわからないこと。初期は信用がないこと。

フランチャイズ起業

メリットは、知識や経験がなくても資金があればできること。

デメリットは、契約に縛られること。働いてくれる人材の確保が容易でないこと。

スモールM&A引き継ぎ起業

メリットは、現在までの過去が見えること。リソースを引き継げること。

デメリットは、自分が望む案件がいつ市場にでるかわからないこと。手続きや契約が複雑で専門知識や経験がないとトラブルにつながることも。

経営者としての経験がない状態で、ゼロイチ起業するのは怖いというのは自然な感情です。家族から反対されるケースもあります。コンビニがよくニュースで取り上げられますが、フランチャイズ起業では、雇われていた時と何ら変わらないどころかよりブラックな環境に身を置く可能性もあります。

その点、スモールM&A引き継ぎ起業においては、自分が経営者にはなりますが、売り手の社長様を会長や顧問として、一定期間(半年から2年程度が一般的です)修業させていただきながら引き継ぎができるという、経営者の勉強をしながら経営者になれるという環境に身を置くことも可能となる為、私も積極的にお勧めしています。

M&Aにひそむ地雷。あなたは避けられますか?

従来のM&Aは、譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)共に、M&Aのアドバイザーや専門会社に個別相談するところから始まります。しかし、スモールM&Aの特徴は、ネットのマッチングサイトを利用することで、M&Aアドバイザーや専門会社に相談しなくても売買ができる点にあります。

ここに初めの地雷があります。そもそもM&Aは、相対取引になりますので、最終譲渡(買収)価格は、当事者同士が納得した価格であり、時価という要素も加わります。

マッチングサイトで掲示されている譲渡価格はあくまで売り手側の希望価格であり交渉に入るための目安でしかありません。中古自動車の売買と似ていますが、違うのは、基準となる客観的な相場データが少なすぎること、また単なるモノの売買では済まないことにあります。あなたは、バリュエーション(企業価値評価)できますか?

またM&Aを行う上で、最も重要で注意を払わなければいけない点は、秘密保持です。売り手及び買い手は双方で、秘密保持契約を結んでから交渉がスタートします。

あなたは、今までの人生で、秘密保持契約を結んで交渉した経験がありますか?

秘密保持契約に違反すると交渉が中止になるだけでなく、相手方から損害賠償を請求される可能性もあります。うっかり家族や友達に相談すること自体がアウトなのです。

マッチングサイトでは、1つの売り案件に対して、複数の買い手が手を挙げます。買い手は、売り手から選ばれなければ交渉を継続することができません。

交渉開始は、テキストメッセージでのやりとりになります。

そのメッセージ内容で、売り手さんから選ばれますか?

失礼や不足はないですか?上から目線だとまず選ばれません。

ちなみに、連絡(返事)がないことはよくあることです。

売り手は、複数いる買い手の中から熱意や背景、資金力や提案内容などを精査して、トップ面談をする相手を決めます。

トップ面談では、お互いの自己紹介や質疑応答、譲渡対象会社の見学などを行ないます。信用できる相手なのか、交渉を継続していいのかを判断する大事な機会でもあります。

ちなみに、トップ面談では絶対にしてはいけないことがあります。ご存知ですか?(知りたい方はご相談ください)

トップ面談終了後、買い手が引き続き交渉を継続したい場合は、売り手に対して、意向表明書を掲示します。意向表明書とは、わかり易く説明すると、ラブレターみたいなものです。買収方法や買収金額などの提案条件を盛り込んだ資料を提出します。

ネットを検索すれば、M&Aに関連する契約書や資料等のフォーマットも探すことは可能ですが、そのフォーマットで本当に大丈夫ですか?法的拘束力をもたせる項目ともたせない項目を理解していますか?口頭であっても書面でのやりとりであっても、致命的な回避できない問題に発展することもありますので、細心の注意が必要です。

売り手は、買い手の意向表明書を精査して、交渉を継続したい場合は、双方で基本合意契約書を締結します。基本合意契約書には、これまでの交渉で合意している条件などを明記します。通常、独占交渉権の付与や交渉期間なども記載します。

基本合意契約書が締結されたのち、買い手サイドの専門家によりデューデリジェンス(法務、財務や税務、労務等の調査)を行ない、リスクの洗いだしやそのリスクの解消方法などを検討し、最終的にM&Aを実行するか否か、または条件面の再交渉に入るかなどを決定します。

マッチングサイトを利用される買い手の中には、費用や時間がかかる為、M&Aアドバイザーや専門家をつけず、デューデリジェンスをしない方も見えますが、全くお勧めできません。M&Aにおいては、売り手より買い手の方が遥かに高いリスクを抱えています。デューデリジェンスを実施したところで、売り手に悪意があればリスクを全て取り除くことはできませんが、だからと言ってしない理由にはなりません。

デューデリジェンスが終了して、お互いが納得できる条件や内容であれば、最終譲渡契約書の締結、その後クロージングとなります。

「300万円で会社を買いなさい」

「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」三戸政和著
この本を読まれた方もお見えになるとおもいますが、後継者がいない中小企業経営者様の中には廃業するなら第三者に承継したいと考える方もいらっしゃいます。

また、ゼロから起業するのではなく、既にある会社/事業を買ってビジネスをしたいと考える起業独立希望者も増えています。

ここで誤解を解いておきますが、売り手側が掲示している譲渡金額を仮に300万円とします。では、300万円あれば買えるのか?というと、NOです。

交渉プロセスにおける交通費や宿泊費用だけでなく、店舗や工場があるのであれば、別途保証金が必要であったり、契約や登記に係る費用もあります。買収後の運転資金も必要となります。さらに、金融機関からの借り入れに対する連帯保証解除が条件であれば、あなたが保証人になります。

ちなみに、M&Aアドバイザーや各種専門家にデューデリをお願いするのであれば、譲渡(買収)金額にもよりますが、最低150万円~の手数料も必要になります。

M&Aをビジネスにしている会社によって、顧客対象や報酬体系・金額、サービス内容等も異なりますので、どの会社を選べばいいのかは非常に難しい点でもあります。

上記をケチるとどうなるのか?

全く架空の詐欺案件にお金を払ってしまったり、買収後、社員の方から未払い残業代金を請求されたり、退職金の積み立てがされていない場合は、退職金を払うことになったり、簿外債務があった場合には最悪、自己破産するしかありません。

地雷は、あちこちに埋まっています。売り手が悪質な意図を持って挑んでいる場合は、M&A取引のプロでも完全に見抜くことはできません。今回は、買い手目線での説明となっていますが、悪質な買い手や専門家も当然います。

専門家の選び方

モノやサービスの売買、不動産やフランチャイズなど権利売買であってもトラブルが生じることはありますが、M&Aは、会社/事業に含まれるヒト、モノ、カネ、そしてビジネスモデルや法律、権利など非常に多岐にわたる膨大な事項を限られた時間の中で精査する必要があります。

専門家をつけることは必須ではありませんが、取り返しがつかない致命的なトラブルを回避する為に、交渉前から専門家をつけることをお勧めいたします。

専門家の種類

M&Aを利用して、会社/事業の譲受(買収)をされる場合、あなたの側について交渉や各種査定(デューデリジェンス)を行ってくれる専門家が必要となります。従来は、売り手側と契約しているM&Aのアドバイザーが「仲介」という形で契約をまとめる役割を引き受けていましたが、昨今は、利益相反行為を避ける為に、売り手と買い手双方に異なるM&Aアドバイザーをつけることが増えてきました。

また交渉段階において、譲受側(売り手)の会社/事業を精査(デューデリジェンス)する為に、法務面を弁護士、財務や税務面を公認会計士や税理士、雇用関係を社会保険労務士、その他必要な精査項目があれば、各種専門家に依頼する必要性が生じます。このあたりは、M&Aアドバイザーがビジネスモデルの精査を含め必要なチームを組織化してフォローする役割も担っています。

M&Aアドバイザーの探し方

誤解を恐れずに申し上げると、M&Aの世界では、対象となる会社/事業の売買価格により、専門家の報酬(手数料)が決まります。よって、規模が小さい案件においては、サポートしてくれるM&Aアドバイザーがまだ少なく、報酬体系も異なります。

着手金や中間金等が必要だったり、成功報酬だけで請け負ってくれるM&Aアドバイザーもいます。まずは、ネットで検索をしてみて、費用面だけでなくサポート体勢や実績を調べてみてください。最近は、スモールM&Aに関する各種セミナーやイベントも増えてきました。情報や事例の収集を兼ねて積極的に参加してみてください。

ご相談について

ドリームゲートでは、起業独立をお考えの方に、スモールM&Aを使った引き継ぎ起業という新しい選択肢をご提案する為に、起業M&A部会を立ち上げました。

M&Aアドバイザーだけでなく、弁護士・公認会計士、税理士など各種専門家も参加しておりますので、お気軽にご相談ください。

M&A部会はこちら>>

参考情報

サイト情報

スモールM&Aが注目されてきた背景には、インターネット上のマッチングサイトの登場が挙げられます。従来は秘密裏に行われていたM&Aの譲渡(売り)案件を誰でも閲覧でき、サイトに登録することで交渉まで行えるようになりました。

代表的なM&Aマッチングサイト

Batonz      https://batonz.jp/

TRANBI  https://www.tranbi.com/

経済産業省 中小M&Aガイドライン
相当なボリュームがありますが一読されることをお勧めいたします。

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001.html

書籍

この1冊でわかる! M&A実務のプロセスとポイント

サラリーマンが小さな会社の買収に挑んだ8カ月間:個人M&A成功のポイント

さいごに:メッセージ

買い手としてスモールM&A引き継ぎ起業をされるなら、謙虚な姿勢、誠実さが求められます。M&Aにおいての実務知識や買収を検討されている会社や事業に対しての理解、経験も軽視しないでください。

交渉においては、買い手のメリットは、売り手のデメリットになるという視点を忘れないでください。

私は、売り手として株式譲渡、事業譲渡及び買い手として株式譲受、事業譲受をしてきた経験があります。その経験を活かして、M&Aのアドバイザーもしていますが、交渉相手は、感情がある人間です。

経営者様であっても、M&Aを経験されたことがある方は非常に稀です。不確実性が高い取引です。だからこそ、安易な判断や流行で気軽に取り組むことは避けて欲しいと願っています。

あなたのお役に立てる機会があれば幸いです。

執筆者プロフィール:

ドリームゲートアドバイザー 曲尾 悟志 / BRUSH UP co.,ltd. / 一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 認定M&Aアドバイザー
新しいモノの見方は、ギフトです!起業する際の選択肢の1つとして、M&A起業(引き継ぎ)をお勧めします。
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