起業するならM&Aが断然有利な10の理由

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

起業の方法には大きく3種類あります。まず、何もないところから全て自分で立ち上げていく「ゼロイチ起業」。そして、フランチャイズに加入してビジネスの枠組みを提供してもらう「FC起業」。もう一つが、小規模な事業案件を譲渡してもらって始める「スモールM&A起業(以下、M&A起業)」であり、これは「引継ぎ起業」とも言い換えられます。

今回は、起業家支援事業を中心に、6つの法人と1つの社団法人の経営者でもある、ドリームゲートアドバイザーの曲尾悟志(まがりお・さとし)さんに、このM&A起業をとりまく昨今の環境を解説いただき、コロナ禍のために先行き不安な経営環境において、M&A起業が有利な理由を教えてもらいます。

曲尾さん自身、起業家支援以外の現在、経営されている事業はほぼM&Aによる事業譲渡や株式譲渡で取得されたものだそう。売り手・買い手の両方の経験をふまえて、M&A起業に適した案件事例なども伺っていきます。

2025年までに後継者不足となる中小企業127万社は、宝の山!

「起業をするならM&Aを活用する」というお話の前にまず、現在のM&A市場がどのような状況にあるのかを、教えてください。

曲尾:中小企業庁の発表によれば、2025年までに、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人。その約半数の127万人が後継者未定で、廃業する可能性があります。ちなみに、この127万人、127万社というのは日本企業全体の1/3に当たる規模。

言い換えれば、後継者を求めている会社や事業もそれに近い規模で存在していることになります。起業を目指す人にとっては、宝の山といえるでしょう。

この状況には国も危機感を持っており、それを受け、個人事業・中小企業のM&A市場におけるガイドライン制定であったり、事業承継・事業譲渡のマッチングプラットフォームの整備、また、各地に「事業引継ぎ支援センター」を設けるといった環境整備が進みつつあります。たとえば、日本政策金融公庫でも事業承継マッチング支援を行っているほど(https://www.jfc.go.jp/n/finance/jigyosyokei/matching/about.html)。まさに、圧倒的なチャンスが到来しているタイミングなわけですね。

曲尾さんは起業支援をされてきて、これまでに約3000人をサポートされています。そもそもM&A起業というのは、どのような方にマッチしているものだとお考えですか?

曲尾:私が、M&A起業するのによい世代だと思うのは、30代後半から40代前半。社会である程度キャリアを積まれた人たちです。皆さん、結婚されたり、自身や周囲が課長や部長に昇進したりするのをきっかけに、キャリアについて考えるタイミングがあるでしょう。しかしながら、経済は先行き不透明で、今いる会社もどのような将来が描けるのか分からないと。そうして先を考えた時に、転職を検討するほか、人によっては起業も魅力的な選択肢となり得ます。

なかでもM&A市場に、後継者を求めている会社が売りに出ている、あるいは今後売りに出される環境にある今であれば、M&Aという手段による起業が、より現実的に思えるのではないでしょうか。実際、M&A市場は急激に成長しています。このコロナ禍によって、さらに売り手も買い手も増えている状況があるのです。

本業の収入減を補う副業や、本格独立に向けたステップとしてのM&A起業

売り手が増えているのは感覚的に分かる気がしますが、買い手が増えているのはなぜでしょうか。増えている買い手というのは、どのような層ですか?

曲尾:本業への不安を高めている人々です。業種にもよりますが、大手企業でも今はリモートワークがかなり導入され、そのために残業がなくなり、定常的に得られていた残業代が減っているという状況があります。また、この夏のボーナス支給は厳しいものでしたが、冬も減額や支給ゼロという、さらに厳しい傾向が見込まれています。だからといって、転職を考えようにも、今は多くの企業が必死の経営状況にあり、仕事はあっても積極採用までは考えにくい環境です。

そこで独立を考える人にとって、ゼロイチ起業は荷が重くても、M&A起業であれば、まず案件を探してみるだけでも市場リサーチができます。また、勤務先企業においても最近はリモートワークの普及と並び、副業規定も緩やかになってきていますので、まずは今いる会社に所属しながら、M&Aで取得した会社や事業を副業的に、第2の収入源とすることを考えればよいのです。もちろん、取得した事業の状況が見えてきた段階で、今の会社を退職することもできます。

このように、本業の収入減を補うためや、起業準備のトレーニング、また、本格的な独立への移行ステップとして、M&A起業を活用する人が増えているのです。

なるほど。不確かな時代に、より保険をかけて生きていくための手段に、M&A起業がなり得るわけですね。では改めて、売り手が増えているというのは、どういうことでしょうか。

曲尾:売り手の意向には、ポジティブなものとネガティブなものが考えられます。

前者は、この会社は自分の器では先が見えるが、新しい経営者に変われば可能性があるし、まだ伸びる余地があるとして、売却を考えるパターン。そして後者は、残念ながらその会社や事業はすでに死に体であるパターンです。たとえば、業種・業態が企業の成長サイクルの中で完全衰退期にあり、どうにもならない。オペレーションが全てアナログで、時代にそぐわない。そのような問題があってM&A市場に出てくるケースは少なくありません。そして実は、後継者不足や高齢による継続困難が売却の理由として前面に出されているものの中にも、そうした本質的な課題を抱えている案件があったりするのです。

そのように玉石混交だとすると、買い手としては何に留意すべきでしょうか。

曲尾:やはり、デューデリジェンス(対象企業の価値・リスク調査)の専門家であるプロに、目利きは頼るべきでしょう。また、それ以外にもM&Aにはさまざまな作法があります。たとえば、売り手企業とは守秘義務契約を交わしていますので、従業員や取引先にそれと気づかれるような行動は厳禁です。また、マッチングプラットフォームを見て、初めて交渉メッセージを送る際に、熱意だけを語りすぎてもよくありません。M&Aでは売り手1社につき人気がある案件だと10人以上からアプローチがあるものなので、どういうメッセージが相手に響くのか。そうしたノウハウが大事なのです。ですから、M&A起業支援のプロにぜひ相談してもらいたいですね。

「既にあるビジネスフローを使える」ことこそ、M&A起業の最大のメリット

いよいよ、M&A起業が有利な理由を伺っていきたいと思います。他の起業方法に比べて、どのようなメリットがあるのでしょうか?

曲尾:では、箇条書き的に挙げてみましょう。まず、先ほど述べたように、M&A起業なら、

  1. 本業の収入減を補える
  2. 本格的な独立へのステップとして起業準備の練習になる

というメリットがあります。さらに、

  1. 既にあるビジネスフローを使える
  2. 一般人や新規参入者よりも関連人脈を得やすい
  3. SWOT分析をリアルな数字で行える
  4. 事業計画書が具体的なので融資を得やすい
  5. 業態変更や部分的な撤退・売却が自由に行える
  6. 事業自体の再譲渡で損切りも可能
  7. 自分にとって良い条件の案件を選べる
  8. 取得後に、自分の都合に合わせてカスタマイズできる

こうしたことが言えます。

M&A起業なら、10のメリットがあるわけですね。③から、さらに解説いただけますか。

曲尾:この「既にあるビジネスフローを使える」というのは、M&A起業の最大のメリットです。

そもそも起業を考える時に大事なのは、自分がその事業について「知らない」「知っている」「できる」かどうかを見極め、それをふまえて進めること。知らないことは想像もできませんし、もちろん実際に行うこともできません。

そして、ビジネスをする上で必要になるのは、「仕入れ」「販売」「フォロー」というビジネスフローです。また、ビジネスを構成するのは「商品」「顧客」「販売方法」によるビジネスモデルで、これに「LTV(ライフタイムバリュー)」、つまり、どうやって自分たちの製品やサービスを知ってもらって顧客になってもらい、常連やファンとしていくのかを加えたものが、全てのビジネスの土台となります。

ゼロイチ起業であれば、これらをどう考え、構築していくかが難題ですが、M&A起業なら、そのプロセスに労力を費やさずにスタートラインに立てますね。

曲尾:その通りです。ビジネスフローができており、製品・サービスと必要な設備・什器、従業員、仕入先、取引先などがある状態から始められるわけですね。特に、案件にはよりますが、収益が見込める状態で始められるのは大変有利です。例えて言えば、飲食店をする時にレシピも材料も調理器具も料理人も、さらに食べたいと言ってくれる人まで揃っている状態で始められるようなものです。

餅は餅屋で、たとえ自分にその業界の経験がなかったとしても、M&Aを使えば事業運営ができてしまうということ。不慣れな業界や業態にもチャレンジできるわけで、これは①の本業の収入減を補う際にも有利な理由となります。

また、シンプルに「経営」だけを考えても大きなメリットです。初めて経営者になろうという時には、自分が思っている以上に知らないことだらけなもの。サラリーマンとして仕事をしてきて、得意な業務や専門領域はあるでしょう。それを生かして独立したい、と思うのも自然なことです。しかし、サラリーマンでは分からない「経営」について、M&A起業であれば、前社長が会長や顧問に就任してくれたり、時間をかけて引継を行ってくれる案件を選ぶことも可能。経営者の勉強をしながら経営者になれるのです。

万が一、事業がうまく行かなければ「再譲渡」で損切りも?!

M&A起業が有利な理由の、③だけでこの充実ぶりですが(笑)、④以降はいかがでしょうか。

曲尾:「一般人や新規参入者よりも関連人脈を得やすい」というのは、実際に起業してみると想像以上に助けとなるものです。その会社の歴史や実績、信用がありますから、その界隈で話が通りやすかったりするんですね。

そして、⑤の「SWOT分析をリアルな数字で行える」というのは、③に次ぐ、M&A起業の大きなメリットです。そもそも起業するにあたっては、外部環境や内部環境を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) 4つのカテゴリーで要因分析するSWOT分析が重要です。

ゼロイチ起業の場合には机上の空論になりがちですが、M&A起業であれば、それをリアルな経営数字や環境に基づいて行えるわけですね。その結果、弱み・強みが明確なため、あなた自身がその弱みをカバーできたり、あなたの苦手なところをその会社や事業の強みで補っていくことができます。

たとえば、対面販売のみのショップや飲食店であれば、オンラインのネット販売を導入したり、そこまで費用をかけなくてもSNSを活用して販売チャネルを広げることが可能でしょう。そうしたことも分からない、あるいは技術的にできないでいる会社というのは意外に多いのです。つまり、あなたができること、あなたの強みが生かせるわけです。

次の⑥「事業計画書が具体的なので融資を得やすい」というのも、魅力的ですね。

曲尾:そもそも日本政策金融公庫でも事業承継マッチング支援を行っているくらい、M&A起業には積極的です。融資についても、事業承継・集約・活性化支援資金という枠があり、初めて起業する人にとっては創業融資よりも使い勝手がよいかもしれません。

そして、⑦「業態変更や部分的な撤退・売却が自由に行える」や⑧「事業自体の再譲渡で損切りも可能」は、まさにM&A起業ならではのメリットです。たとえば、フランチャイズ本部からの制約が多いFC起業と違い、オーナーが事業のあり方や運営方法を自由に変えられます。また、残念ながら経営が思うように行かなかった場合も、FC起業なら契約解除に違約金が生じる可能性がありますし、ゼロイチ起業では売れる状態にまでまだなっておらず、廃業にもコストがかかるかもしれません。

しかし、M&A起業であれば、再びその事業を売りに出すことが可能です。通常、M&Aの場合は、最低3年分の決算書類を求められるのが通例なので、3期を終えないと市場で価格をつけにくい。今のような、経済の先行きが見えづらい時代には、大きなメリットでしょう。それならばと、手を出しやすいともいえます。また、事業全体を売るほか、部分的に売却するという選択肢もあります。

どういう条件であれば、自分は起業できるかが発見できる

⑨の「自分にとって良い条件の案件を選べる」というのは、当たり前のような気もするのですが、どういうことでしょうか。

曲尾:これは、「どういう条件であれば、自分は起業できるかが発見できる」とも言い換えられます。実は「起業したいが、何をやればいいかが分からない」という人が意外に多いのです。のべ3000人の起業支援を行ってきた私の感覚では、起業を希望する人の約5割がそう。そもそも起業するのに最初にやるべきは情報収集なので、起業したいが、何をやればいいかが分からない人にはまず、M&Aプラットフォームを覗いて、世の中にあるさまざまな業種、規模のビジネスというものに、目を慣らすことをお勧めします。

それで気にいった案件があればドリームゲートのM&Aアドバイザーに相談して、交渉オファーを出してみるのです。これは、本番を前提とした練習のようなもの。案件を当たり、交渉するプロセスの中で、先方の会社や事業についての知識をより深め、自分にできるかどうかをシミュレーションする練習です。良い案件であればさらに交渉を進めてもよいでしょう。

ある意味では、何をやればいいかが分からなくてもビジネスを始められるのは、M&A起業ならではといえそうですね。自分では思いも寄らなかった業界や業態と出会えるかもしれません。

曲尾:そうなんです。実は、これは私の実体験でもあるのです。ある地域限定で、1階にある路面店物件を探していたのですが、いわゆる商業一等地のため、物件自体が出てきません。そんな時、たまたま入った、オフィス印刷も請け負う印鑑店で雑談をしていたところ、オーナーが育児や介護で大変だという話になったのです。それがきっかけで、実はその株式譲渡を受けることとなりました。その場所の不動産(物件)に価値を見出してのことで、印鑑・印刷業には全く興味がなかったのですが、やってみると非常に面白いビジネスでした。立地が良いので、印鑑や印刷をきっかけに起業や商売そのものに関するいろいろな相談が持ち込まれてくるのです。キャンペーンなどを仕掛けることにより、売上も順調に伸ばしています。

これは、偶然の縁だったかも知れませんが、自分では思ってもみなかった、経験がない事業でもビジネスとしてできるし、収益を上げられるという実例です。ぜひ参考にしてみてください。

時間をコントロールしやすい仕事を、M&A起業で叶えるのは、リスクに敏感な女性にこそ最適

そのほかにも、M&A起業のメリットをイメージしやすい事例などあれば、教えてください。

曲尾:実際にM&Aプラットフォームで見かけた、2つの事例を紹介しましょう。

まず、23区内にある小・中学生向けの学習塾の案件です。創業から10年近くで、黒字経営ですがオーナーの経営意欲が下がっているため、年度末での引継ぎを希望と、譲渡時期が明確です。引継ぎに時間をかけることも確約されており、集客手段もこれまでの失敗を含めて経験値があるなど、前経営者のノウハウをしっかりと活用できます。また、教室名や運営方法は変更も可能とされており、FC起業では望めないような自由度が魅力です。

この案件が、プラットフォームの手数料込みで230万円です。実際の起業にあたっては賃貸契約の巻き直しや従業員の雇用、新たなブランディングや宣伝活動、そして自分でもM&Aアドバイザーをつけることを考えると、トータルで300400万円で事業をスタートできるでしょう。ゼロイチ起業よりリスクがはるかに少なく、FC起業より自由度が高い、好例です。

もう1つは、ある地方の政令指定都市にある、小中高生向けのプログラミングスクールの案件です。譲渡金額は100万円~300万円で、こちらはまだ赤字経営です。引き継がれるのは、20名以上の生徒さん、物件の賃貸契約と取引先、従業員に運営ノウハウ、什器、パソコンといったものです。

この案件が面白いのは、ゆくゆくはこれを原型としてフランチャイズ展開が見込めること。プログラミング教育というのは公立校での必修化もあって、父兄の関心事ですが、実はまだプログラミングスクールの経営モデルの成功例というのが、確立されていません。そこで、このような多少の赤字ではありますが案件を引き継いで、SWOT分析を進めることで、地域を問わず通用するビジネスモデルとして全国展開できるかもしれないのです。このように、大きな夢につながるような案件もM&A起業には期待できたりするんですね。

それは、たいへん励まされる言葉です! ⑩の「取得後に、自分の都合に合わせてカスタマイズできる」には、ビジネスモデルを最適化して、横展開することも含まれるのですね。

曲尾:それもありますが、⑩でぜひ伝えたかったのは、育児や介護などでキャリアをストップされることの多い女性にこそ、M&A起業がお勧めだということです。育児期間は生活のリズムが変わり、制約だらけなもの。それで正社員もパートも厳しいとなったときに、自分の会社であれば、時短やスポット的に人の手を借りるなど、運営スタイルを自由にできるわけですね。

実は、私が起業支援をしてきた中で思うのは、男性より女性のほうが事業経営に向いているということなんです。のべ3000人の支援ケースのうち、成功したと思える比率は女性の方が高いです。女性は段取りもよく、リスクに敏感。女性の社会進出といって、男性主体の企業文化に合わせるよりも、自身で会社を所有してしまえばよいのです。時間や場所の制約もコントロールしやすいですし、M&A起業なら事業の土台ができており、運営イメージが具体的につけられます。引き継いだ後に営業時間を変えたり、誰かスタッフを雇ってもよいわけですね。

ウエディングドレスレンタルやパン屋さんなど、女性の細やかさが活かせる事業をはじめ、多くの業界・業態での成功事例もあります。これから女性で起業や独立、もしくは副業を考える方に、M&A起業をぜひ検討してもらいたいですね。

ありがとうございます。最後に、ドリームゲート会員にメッセージをお願いします。

曲尾:ゼロイチ起業、FC起業、M&A起業のそれぞれにメリットとデメリットがあります。大事なのは、知らないで除外するのではなく、知っておくこと。やるかどうかは、それからの判断です。大人気ドラマ半沢直樹でも扱われていましたが、M&Aは大企業だけに関係する手段というイメージも大間違いです。今は、個人でもM&Aができる時代です。

自分には関係ないと思っていたら、大変もったいないことです。最近ようやく興味や関心を持ってくれる人も増えていると感じますし、起業を考えるドリームゲート会員には、全員に知っておいてほしいと本当に思いますね。

Withコロナで先行き不透明な時代にも、最適な起業手段です。ぜひ一度、マッチングプラットフォームを覗いてみてください。そして、専門家に相談を!

 

執筆者プロフィール:

ドリームゲートアドバイザー 曲尾 悟志 / BRUSH UP co.,ltd. / 一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会 認定M&Aアドバイザー
新しいモノの見方は、ギフトです!起業する際の選択肢の1つとして、M&A起業(引き継ぎ)をお勧めします。
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