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上場と非上場の資金調達の最大の違いは「特定」か「不特定多数」かによる

銀行融資以外の資金調達の方法は主に以下の三つです。
(1) 株式の発行(以下、公募増資」と言います)
(2) 転換社債型新株予約権付社債の発行(以下「CB」と言います)
(3) 社債の発行
これらは未上場の時でも実行は可能です。上場と非上場の違いは、先ほど申し上げた、「不特定多数の人」に株式や債券を買ってもらうか、「特定の人」か、というところにあります。
非上場の時は、買ってもらう人を自ら探さなくてはなりません。その人の買ってくれる金額によって資金調達の総額も決まってしまう。上場すると、「今回●●億円の資金調達をするために株式を発行します。皆さん買ってください」と公表すると、興味を持ってくれた投資家が手を挙げてくれます(実際には証券会社が販売してくれるのですが)。未上場のときよりも大きな資金を調達することも可能になります。これは上場の大きなメリットです。
株式は「成長」を見て、社債は「安定」を見るのが基本スタンス

CBも、広い意味で社債であり、格付けが発行に左右されます。ただし、最近は証券会社が一括でCBを買い取るケースがあります。証券会社は買い取った CBを株式に変えて、自社の顧客(投資家)に販売するという方法です。格付けのない会社にとっては非常に便利な方法として、数年前に発行ブームになりました。ただし、その中には株価が下がると発行する株式数が増えて引受先(証券会社や投資ファンドなど)の持ち株比率が大きくなってしまうという、会社にとっては決してプラスにならない方法もあったのも事実です。
上場したらやっぱり株価が「命」
したがって、やはり上場後にもっとも実行しやすいのは新株を発行して不特定多数の投資家に株式を買ってもらう「公募増資」になります。

例えば、利益が2 億円で発行済み株式数が1万株の場合;
利益2億円÷発行済株式数1万株=1株当たり利益20000円
3000株の増資をすると、
2億円÷1.3万株=15,384円。 ▲4,615円少なくなります。
これを「株式の希薄化」と言います。
少し専門的になりますが、株価は1株当たり利益×株価収益率(●●倍)で算出されます(株価の決まり方については、次回にくわしくご説明します)。先ほどの式で見るとどうなるでしょうか。
(増資前) 1株当たり20000円×株価収益率20 倍=400000円
(増資後) 1株あたり15384円×株価収益率20倍=307680円
▲92320円も株価が下がることになります。
公募増資をしたら株価が下がってしまうのですから、これまでの株主からしたらたまったものではありません。ここまで下がると分かったら株主は下がる前に売却しようとするでしょう。多くの人が売却したら株価は下がる。結果として、想定していた株価で実行できずに、公募増資が中止になってしまうこともあります。
公募増資をするためのポイントはシンプル
したがって、上場後に公募増資をする時の条件は以下の二つ;
(1)株価が高いときに増資をして、発行する株式数をできるだけ少なくする(希薄化を防ぐ)
(2)1-2 年後の利益が上がるという見込み数字がある時に増資をする
なぜ(2)のときに増資をしやすくなるのでしょうか。これは株価の形成の仕組みが関係してきます。次回にくわしくご説明しますね。

