【相談事例】「アラスカでラーメン店を開きたい」
そういう夢をかなえた話

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 松島浩史

アメリカに在住の日本人(アメリカ国籍)の方から、ドリームゲートを通じてのご相談。
アラスカ州では、まだラーメン店がないのでやりたいのだが、ラーメンを作ったことがないとのこと。
ラーメンの作り方の指導を含め、その他諸々をサポートしてほしい、というものでした。

こうして海外での飲食店開業支援がスタートしました。

ビジネスとして成立するレシピを目指して

早速、レシピの準備をはじめました。

考えなければいかないことは、アラスカの食材と日本の食材は違うので、同じレシピを組んでも困難が待ち受けているということです。
例えば、日本の食材で完璧なレシピができたとして、それを再現できる食材がそろっているか、再現できたとして、それがビジネスに乗るような価格で提供できるのかどうか、という点を意識しなければいけません。

また、日本人がおいしいと感じるものと、アラスカの人たちのそれが一致するかどうか、そういうことでなかなかうまくいかない場合もあります。

そこで、日本における準備はメールやSKYPEを使ってコミュニケーションし、現地でラーメンのスープを作るキーとなる食材があるのかを、調べてもらうことから始めました。

アラスカ州での食材調達事情からスープを考える

豚骨、鶏ガラ、乾燥昆布については、問題なく手に入り、価格も割と安いということでした。
野菜類、ニンジン、玉ネギ、にんにく、生姜は問題なくあります。
それと、乾物、乾燥シイタケは、意外にも出回っていますが、鰹節がとても高いようですので、スープには使えないというのがわかりました。

次に、醤油、味噌、日本酒、みりんはありますが、銘柄が限られますので日本のようにさまざまな味の中から好みをチョイスするということはできません。

ここまでわかれば、大体どんなラーメンスープができそうか、理解できました。
豚骨スープ、鶏ガラスープは問題なさそうです。
また、味を作る「返し」も、味噌・醤油などは作れそうです。

ラーメンづくりに欠かせない「麺」の調達

次に重要な、麺の部分。
これは、いきなりゼロから作り上げるには、麺機が必要ですし、小麦粉などもさまざまな中から選ばねばなりません。

また、ラーメンの麺を作るためのカンスイは、食品添加物として認められないので、重曹で代用しなければならず、ハードルが高く、店で作るのはあきらめました。

私の知り合いに、カリフォルニア州の製麺屋さんがいて、そこから空輸できるか打診しましたところ、快くOKをいただきました。

ちなみにここのラーメンの麺はカンスイを使わずとも、おいしい麺であることは、確認できていました。

アメリカ仕様の厨房で実現できるラーメン仕込みを考える

さて、日本でできる準備は整いました。
いよいよアラスカへ乗り込みます。
シアトルで乗り換えアラスカへ到着し、まずは厨房と調理器具の確認からです。

アメリカの飲食店のキッチンは、タフなつくりで、また、機器の高さが日本より高くできていています。
というわけで、腰高の火口のため日本と同じように、大量にスープを作ることはできません。

仕込みの1回あたりの量は限られています。
そこから逆算して、ビジネスが成り立つように、ラーメンの価格や分量など頭に入れておきます。

アラスカならではの食材で至高のスープづくり

さて、いよいよ食材を求めに市場を回ります。
最初から決めつけてスープを作るのではなく、価格しだいでは使ってみたいものがあるかもしれません。
市場の食材は、アラスカならではの海産物が安い。
例えば、鮭は、種類も豊富ですし、日本での価格とは大違いです。
鮭を使ったラーメンも面白いと思いましたが、その横に、大きなヒラメが目に留まりました。

「オヒョウ」と呼ばれるヒラメですが、その大きさは日本のそれとは比べものになりません。
お魚屋さんに相談し、格安で鮭とオヒョウのあらを買って試作に入ります。

試作は何度も数えきれないほど繰り返し、限られた⾷材の中で、豚⾻系のラーメンと、⿂を使った清湯系のラーメンを完成させました。
完成させたレシピは、⼯程表へ落とし込み、しっかり現場指導をして引き継いできました。
その中でも、アラスカのハリバットのアラは、⾝がたくさんついているにもかかわらず、活⽤されていませんでした。

そのアラで作ったラーメンは、透明感があるスープですが、コクがあり、私どもの感覚では、⽇本でもなかなかないくらいおいしいレベルに仕上がりました。

飲食店の開業における「お店の味(スタンダード)」を考える

さて、バタバタと商品を開発したこの味が、現地の方たちに合うのでしょうか。
私どもは、何件か海外飲食店のプロデュースを手掛けておりますが、日本に住む日本人の味覚は、日本の中でしか通用しません。

一方、飲食店が走り出したら、レシピの変更は非常にリスクを生じさせます

例えば、ある発言権の強い人に、もっと甘くして言われたとき、熟慮せず甘く調整してしまえば、そのお店の味(スタンダード)が変わります。
スタンダードが変わるということは、無言の承認者(そのお店のファン)を遠ざけてしまいかねません
周囲の方は親切心で忠告するのですが、味覚はパーソナルなものです。
全員が納得するものは、存在しないと思わなければなりません。

ターゲットの範囲を特定し、その中心の味覚に合わせていかなくてはなりません

ということは、その忠告者がターゲットの中心に値するプロフィールなのかということを考慮しなければいけません。
また、今回アラスカという極寒の地において、私どもの認識している平均的味覚が違っているかもしれません。
そこで、メニューレシピを確定する前に、試食会を開いて集まっていただき、修正点をヒアリングすることとなりました。

レシピ確定前の試食会で分かったこと

実際に試食会を開いて感想を聞いたところ、やはり、想像とは違いました。
まず、極寒の地における傾向を発見しました。

寒い地域は、油脂分が多いものを嗜好するということ。
皮下脂肪を増やそうとするのでしょうか。

それと、アラスカは日本人ばかりでもなく、韓国からの方々も多く、辛い味付けも用意しなければいけませんでした。

アメリカならではのメニュー戦略

味の方向性が大方定まりましたが、あとはメニュー構成です。
アメリカにおいて、専門店=ファストフードという認識であることは、以前からわかっていました。
ラーメン専門店にしてしまうと、ハンバーガーなどのメニュー価格帯で戦わなくてはなりません。

それでは、まだラーメンが浸透していない海外では、ビジネスとして難しくなります。
それを避けるためにも、お食事感を増やすメニュー戦略が必要になります。

レストランの価格帯でビジネスをしていくためには、休日に家族で楽しめるラインナップにする必要があるのです。

そこで、副菜(ぎょうざ、からあげ、コロッケなど)や、ロール寿司、デザートを増やしました。
ラーメンはスープが3種(とんこつ、魚介、そのミックス)、返しが3種(塩、味噌、醤油)を選べるようにし、計9種のラーメンのラインナップにしました。

デザートは、アメリカに方々の健康志向にフィットした豆乳で作ったものです。
こうやって、週末のディナーに耐えうるメニュー構成に仕上げました。

いよいよオープン

いよいよオープンが迫り、メニュー表のデザインに入ります。
やはりポイントポイントに写真が入ったメニュー表にしなければいけません。
撮影機材も持ち込んでおり、商品撮影を開始。
メニュー表が出来上がったのは、プレオープンの当日でした。

プレオープンでは、お世話になった方々や、身内の方々をご招待し、レストランのメニューをふるまいます。
皆さん、おいしいと言ってくださる中、さまざまなご意見も出てきます。
それを無視するわけでもないのですが、味や量はもうすでに試食会を経て調整を済ませているので、ここでの調整はしません。
あくまでも運営上、うまくいくための対策だけに絞ります。

そうやって、無事、レストラン未経験の方がアラスカで初めてのラーメンレストランをオープンさせることができました。
我々は、数日現場を手伝って、うまく運営できているのを確認し、後ろ髪を引っ張られる思いでアラスカを後にしました。

海外で飲食店を開業するという「夢」を叶える

今ではアメリカで、ラーメンは流行の日本食ですが、オープン当時はまだ浸透してなくて、忙しくなかったようですが、徐々にリピーターが増えて、シアトルに新たに店舗を出すことになりました。

はじまりはドリームゲートへの一つの質問から、やがて人々の人生が変わった経験を体験しました。

私どもにとっても、支援した方々が成功していくことは、本当にうれしいことです。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 松島浩史氏(いい繁盛店株式会社)

飲食コンサルタントとして、さまざまな業態の飲食店向けにコンサルティングを行う傍ら、ご自身でもデリバリーサービスを行う経営者としてご活躍をされております。
幅広い人脈と知見を活かして国内のみならず海外進出に関してもさまざまなご経験を基にアドバイスをいただけます。

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ドリームゲートアドバイザー 松島浩史氏

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