Vol.6 主幹事証券会社の役割と選び方

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
IPOに向けては 社内管理体制の整備、申請書類の作成など、数年間かけてさまざまな準備・作業が必要となります。これらの作業を行い、IPOを果たすためにはさまざまなパートナー との円滑な連携を要します。その中でも主幹事証券会社と監査法人は極めて重要な役割を果たします。今回は、そのIPOの成否を左右すると言っても過言では ない主幹事証券会社の役割・選び方についてみていきます。

主幹事証券会社の役割

 主幹事証券会社がIPOにて担う役割は、公開準備指導、公開審査、株式の引受・販売の3つが挙げ られます。主幹事証券会社の主な役割は以下のとおりです。

1.公開準備指導

(1)資本政策の作成
会 社の中期経営計画や業績動向に応じてIPOの時期を設定し、適正な株主構成の構築、適切な投資単位の設定等の計画を作成します。

(2)社内管理体制の整備の指導および助言
公開会社とし てふさわしい社内管理体制を構築するために、予算制度の構築、内部監査制度の確立、規定の整備等を行います。

(3)申請書類作成に関する指導および助言
「Ⅰの部」や 「Ⅱの部」をはじめとする証券取引所への申請書類の作成を指導します。

(4) インセンティブプランに関する指導および助言
ストックオプションや従業員持株会など、申請会社のインセンティブおよび福利厚生方針 に応じたインセンティブプラン導入に関する指導を行います。

(5) 証券取引所との折衝
申請会社特有の問題がIPOに支障がないか取引所への事前相談、取引所による上場審査への回答の作成指導等 を行います。

2. 公開審査

(1)企業内容の審査、問題点の指摘、 改善指導
主幹事証券会社による申請会社の企業内容の審査、業績動向の審査を行います。

3.株式 の引受・販売

(1)公募・売出による株式の引受
IPO に際して申請会社が行う公募・売出し株数を引き受けます。

(2)公開価格の決定
ブックビルディング方式により公開価格を申請会社と協議の上決定します。

(3)株式の販売
申請会社より引受けた公募・売出株式を一般投資家および機関投資家に販売します。

主幹事証券会社選定のポイント

主幹事証券会社の選定にあたっては、以下のポイントを重視すべきと 考えます。

(1)申請会社の属する業界の動向、業界慣行、ビジネスモデルを理解しているか?
  各申請会社の収益動向やあるべき社内管理体制といってもその属する業界によってさまざまです。また業界特有の慣行があり、一般の会社とは異なる管理体制を採用 する方が望ましい申請会社もあります。これらの業界の常識を理解していない主幹事証券会社が担当に付いた場合、申請会社の主張が理解されず、公開準備作業 が非常に手間取るケースがあります。よって、申請会社が属する業界のことを熟知しており、同じ業界のIPOを数多く経験している証券会社を主幹事として選 定するのが望ましいです。

(2)豊富な新規公開実務の経験をもち、申請会社を適切にサポートしてくれるか?
  (1)の業界特有の慣行等を除けは、公開準備作業で苦戦するポイントは各申請会社で類似しております。また、常に証券取引所と上場審査に際して折衝してい る証券会社であれば、取引所の審査のポイントを熟知しています。また、公募価格の設定についても、経験の多い証券会社であれば投資家の声を常に確認してお り、適切な価格設定が可能です。よって、豊富な新規公開実務の経験を有する証券会社を主幹事として選定するのが望ましいです。

(3)強い販売力を有しているか?
 IPO相場が堅調であり、新興市場への上場であればさほど主幹事証券会社の販売力を気にする必要 はないかもしれませんが、東証1部へ直接上場するなどの大規模な会社の場合や、IPO相場が軟調な場合には、主幹事証券会社の販売力を重要視する必要があ ります。この場合、全国に多くの販売網を有している大手証券会社や、証券口座数を多数有する大手ネット証券会社のような強力な販売力を有している証券会社 が主幹事として望ましいといえます。

(4)IPO後もIRやファイナンス、M&A等にて優れた提案力を有している か?
 主幹事証券会社とは、IPO後もエクイティおよびデットによるファイナンス、M&Aのアドバイザー等としてお付き 合いを続けていきます。よって、IPOの実績だけではなく、その他の実績も加味して選定されるのが望ましいです。

 公開準備作業は数年間に わたり申請会社と主幹事証券会社が二人三脚で行う共同作業です。主幹事証券会社の選定おいて上記以外の項目で重要視すべきものとしては、証券会社の知名度 や販売力だけではなく、申請会社の担当者個人の能力や信用力が極めて重要になってきます。

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