Vol.20 上場準備期間のリスク対処法

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
上場準備は何かとコストがかかるのに加え、準備期間中故に経 営戦略にいくつかの制限が加えられてしまいます。また、上場準備に関わる関係者も複数にわたるため、彼らの不祥事など会社の力の及ばないところで上場計画 が頓挫したり、最悪の場合は大きな経営戦略の変更を強いられるケースもあります。このように、何かとリスクの多い上場準備期間の対処方法について、今回は みていきます。

大規模なM&Aの自粛など、制限が多い上場準備期間

  これまでのコラムでご説明してきましたように、上場審査項目には「最低直前期一年間の運用が必要」という項目がたくさんあります。例えば、監査役監査の実施・ 運用、内部監査の実施・運用、取締役会や監査役会などガバナンス体制の運用、予算統制、適時開示体制の運用などなど。上場準備をしている会社は未公開企業 とはいえ、上場企業さながらの社内管理体制が構築されていなければならないためです。これらの項目は、上場後も問題なく会社運営を行うことができるかを確 認するために、直前期一年間はこれらを運用するよう主幹事証券会社および証券取引所が要求しています。

 この「最低直前期一年間の運用が必 要」な審査項目が、直前期の途中まで適切に運用されていたものの、何らかの経営戦略上の理由にて、期の途中に大きな変更をしなければいけなくなることがあ ります。この場合、主幹事証券会社や証券取引所は「再度六カ月~一年間の運用状況を確認したい」と運用期間の延長を要求することがあります。そのため経営 戦略上は役員の変更や組織体制の変更などを柔軟に行うべきであるところ、上場準備期間中もしくは上場審査期間中の変更は簡単にできないことになります。

  また、組織体制の変更などの社内の体制だけでなく、自社と同じ規模の会社を買収したり、子会社化することも基本的に上場のタイミングを延ばしてしまう要因 になります。M&Aはタイミングが非常に重要ですが、そのタイミングが上場準備期間中に当たり、上場のタイミングを優先させるとなるとその M&Aは断念せざるを得なくなります。

 このように上場準備期間中、特に上場審査期間中は何かと経営戦略を制限されることが多く、 会社経営にとってはリスクの高い期間だといえます。よって、上場準備は可能な限り短期間に、かつ効率的に遂行することが重要といえます。
 

自社ではどうしようもない主幹事証券、監査法人の不祥事

 ここ最近企業の不祥事が相次いでいま す。これは事業会社に限ったことではなく、上場準備に深く関わる証券会社や監査法人にもいえることです。

 もし証券会社が不祥事を起こして しまい、主幹事を降りることになった、もしくは監督当局から業務停止命令が出され発行会社の株式を引き受けられなくなったなどの場合には、当然、上場スケ ジュールに影響を与えてしまいます。

 また、監査法人の不祥事で過去二期分の監査証明が使えなくなった場合は、他の監査法人が期の途中から 監査を引き受けてくれない限り、最低でも二年間は上場が延びることになります。

 このように上場準備を進めている会社に起因しない理由で上 場が延期になったケースを、最近よく耳にします。よって、主幹事証券会社や監査法人を選ぶ際には、世間の風評的にコンプライアンス意識が高い会社かどうか を確認するなど、慎重に判断した方がよいと思います。とはいえ、主幹事証券会社や監査法人のコンプライアンス意識に関する風評を確認したところで、これら の不祥事を防げるわけではありません。主幹事証券会社やメインの監査法人以外にも、もう一社何でも相談できるパートナーを側に置くことが上場準備を効率的 に進めるためにも有効です。
 

本当に信頼のおけるパートナーを側に置くこと

  上場準備は一般的にどの会社も初めて行う作業であり、どのように作業を進めればよいか、どうすれば効率的に準備が進められるか分からないのが普通だと思い ます。一般的に主幹事証券会社や監査法人が適切に指導を行い、上場まで導くものですが、その指導内容に疑問を感じることも少なからず出てくると思います。 また、ここ数年上場を目指す会社がたくさんあることから、証券会社や監査法人自体も手一杯になり、なかなかスケジュールどおりに動いてくれないこともありま す。 そのような場合に備え、主幹事証券やメインの監査法人以外のアドバイザー的な役割を担うパートナーを側に置くことは非常に有効です。

  パートナー企業としては、主幹事証券以外の証券会社やIPOコンサルティング会社を活用するのがよいと思います。主幹事以外の証券会社であれば、主幹事証 券会社の指導内容が本当に正しいものなのか、特定の審査上の問題点について別の解決方法がないのかなど、「セカンドオピニオン」として活用するのは非常に 有用です。

 また、常に上場準備の状況を共有することにより、主幹事を交代せざるを得ない状況に陥った場合でも、ある程度スムーズにその交 代が可能になります。ただし、主幹事以外の証券会社を活用する場合、一般的に対応してくれるのは営業部門の方になると思われますので、上場審査に関する技 術的な問題の場合は適切に対応ができない可能性もあります。その場合は、IPOコンサルティング会社を活用するのが望ましいです。IPOコンサルティング 会社は証券会社の引受担当者が設立していることが多いので、そのような技術的な問題にも十分対応が可能です。また、IPOコンサルティング会社は他の証券 会社や監査法人にもネットワークを持っていますので、非常事態の場合でも別の証券会社を紹介してくれるケースもあると思います。

 上場を果 たしたある経営者の方がおっしゃられていたのですが、「本当の主幹事以外に『心の主幹事』を側においておくと、上場準備に際しては非常に心強い」と、私も 思います。

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