起業アイデア 第11回 学習テーマ【開業資金と運転資金】

第1クール

十分な運転資金が、起業後のピンチを救う

解説

【赤字でも事業は続く!?黒字なのに事業が続かない!?】

外国語に堪能な語藤真希さんは、企業 向け語学研修サービスで起業を果たした。事前に営業を進めていたこともあり、独立直後からいくつかの企業で研修がスタート。だが開業 2ヵ月にしてピンチが訪れる。クライアントからの入金予定はまだ先なのに、オフィスの家賃や講師へ支払う資金が不足してきたのだ。どうすればいいのか?

こ れはいくつもの解決方法がある。が、その前に根本的なことを理解しておいてほしい。「事業は、赤字・黒字に関係なく、お金さえ回っていれば、いくらでも続 けることができる」ということだ。

たとえどんなに赤字を出していても、どこかから資金を持ってきて、それで支払いに充当すれば、事業を続け ることはできる。反対にものすごい黒字でも、売り上げを回収する前に支払いを迫られ、その資金が用意できなければ、事業を続けることはできなくなってしま う。語藤さんのケースは、後者に近い状態である。

【支払いの延期依頼は、できれば避けたい】

要 するに、資金が回ればいいのだ。資金が回るというのは、支払うべき相手との間で合意した金額を、合意した時期に払えることと解釈していい。したがって語藤 さんができることのひとつは、相手と合意した金額や時期を変更してもらうこと。「何日後まで待ってほしい」。あるいは「今はこの額でお願いします」などと 相手に依頼することだ。

だが、これは信頼関係のある相手に対してでなければ、難しい方法である。語藤さんの事業の命脈である講師たちから 「そんなことでは、やめる」と言われては大変だ。実績のない時期に支払いを滞らせることは、よほどの事情がない限り何としても避けるべきである。

最 悪、家賃に関しては、契約時に収めた敷金(保証金)から家賃相当分を一旦充当してもらい、入金になったタイミングでその分を返させてほしいと、オーナーに 交渉する方法はある。

【全額が無理なら一部でも早めに入金してもらう】

語藤さ んが最初に取るべき手段は、やはりクライアントに対して予定時期よりも早く入金してもらうよう依頼することだ。本来は「研修完了の月に請求を起こし、支払 いはその翌月末日に銀行振込で」などと約束しているはずだ。これを支払い条件と言うが、この条件外のことを例外的に認めてほしいと頼むのだ。

当 然、「約束と違う」と反論されるだろうが、ここは頑張りたい。クライアント側も、それを突っぱねたせいで語藤さんの事業が潰れ、研修が中止になってしまう ことは望んでいないだろう。請求予定額の全額が無理なら半額、あるいは家賃は前述の方法でクリアして、最低でも講師への支払い相当額だけでも早く払っても らうなど、粘りに粘りたい。

【安全な借り入れや資産売却で資金確保】

しかし実 際には、早く払ってもらうことも、支払いを待ってもらうこともできない場合がある。その時は資金を借りてくる。ただし、条件のいい公的資金などは、急には 借りられない。かといって、キャッシングや消費者金融などの資金は、金利が高く、返済するのが大変だ。やはりここは家族など、身近な人に頭を下げるのが一 番である。

また、生命保険や各種の共済などに加入しているのなら、その掛け金の範囲内で一定額を無審査で借りることができる「契約者貸付」 という制度があるので、それを活用してもいい。さらに自動車や貴金属などを持っているのなら、これを担保にして借り入れたり、いっそ売却して資金をつくる こともできる。資金を回す方法はいろいろあるのだ。

【開業資金を減額してでも運転資金を】

そ うは言っても、こうした事態は、本来十分に避けられたはず。独立を考えると、開業資金の算出や、クライアントの獲得にばかり目を奪われて、独立してからの 「運転資金」をおざなりにする人は実際少なくない。だが、どんなに安く始めて、どんなにたくさん仕事を受注できても、資金が回らなければ、それで事業はア ウトである。

語藤さんのように、起業直後は往々にして入金がないのに、出費が続くという状態になりがちだ。だから、そのズレを計算して、あ らかじめ数カ月分の支払い相当額を準備しておくことが大切。また、クライアントとトラブルになり、想定していた金額を請求できなくなったり、ひどい時に は、相手が倒産して入金されなくなったりということもある。そうなっても持ちこたえられる資金が準備できていれば文句なしだ。

 

今週のキーワード<半分> 

仮に自己資金が 200万円あるなら、開業資金として使うのはその半分以内にして、残り半分の 100万円以上を支払いのための運転資金と
する。また、語藤さんのように自己資金が 100万円しかないなら、これを半分に分けるのは難しいので、事前に国民生活金融公庫や自治体
の公的融資制度を活用して、あと 100万円を借り入れておくことだ。いずれにしても運転資金なしで起業することは絶対に避けなければなら
ない。