ドリームゲート認定アドバイザーの田中琢郎です。10,000件以上の経営者の融資や、事業資金調達の相談対応実績を持つ株式会社ファイナンスアイの創業者でもあります。2014年から株式会社ファイナンスアイを創業し、日本全国の起業家・中小企業の経営者・個人事業主の皆様にファイナンスという強力な武器を提供しています。
起業時の開業資金、起業後の事業拡大や運転資金など経営者には常に資金の課題がついてまわります。政府系金融機関などの創業融資制度も存在するため、是非活用を検討してもらえればと思います。今回は、創業融資の審査のポイントについて、起業家・経営者を支援してきた10,000件以上の経験を踏まえて解説します。
- 目次 -
創業時に受けられる融資制度とは
開業時・事業拡大などの際には、資金調達が必要になります。開業時に利用できる融資には、実績の乏しい事業者に向けた創業融資制度があります。創業融資は、「金利が安い、返済期間が長い、比較的調達できる金額が大きい、担保不要」などのメリットがあり、利用できる場合、創業融資を積極的に活用することをおすすめします。創業融資にもさまざまな種類があり、今回は、創業融資制度の中身をくわしくご説明いたします。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫には、創業融資に対応する制度がいくつか存在します。そのなかでも新創業融資制度は、これから起業する人または事業を開始してから2期以内の人を貸付対象とした代表的な創業融資制度です。新たに事業をはじめるため、または事業開始後の設備資金や運転資金として融資を受けられます。
自治体による制度融資
個人事業主向けの創業融資制度として、自治体の制度融資(創業融資)があります。制度融資(創業融資)とは、地方自治体と金融機関と信用保証協会の3つの機関が連携して実行する融資のことです。各地方自治体が独自に制度融資を実施しており、自治体によって対象者や利用条件が異なります。
たとえば、東京都千代田区の創業者向けの制度融資では、会社設立時の登録免許税の減免の特例が受けられるメリットなどがあります。しかし、自治体、金融機関、保証協会と3つの審査を経る必要があることから、融資決定までの期間は日本政策金融公庫の創業融資制度よりも長くなる傾向があります。
地方銀行や信用金庫の融資
個人事業主向けの創業融資制度として、地方銀行や信用金庫から創業融資を受けることもできます。ここでは、信用保証協会の保証付き融資について説明いたします。
地方銀行や信用金庫へ融資を申込む際に、同時に金融機関を窓口にして、信用保証協会の保証も申請します。以下が申請の流れになります。
①信用金庫の窓口で信用保証協会保証付き融資への申込みもあわせておこなう
②信用保証協会で保証審査を実施する
③信用保証協会保証で保証が認められれば、信用金庫は信用保証協会が発行した「信用保証書」を根拠に融資をおこなう
金融機関と信用保証協会と2か所にておこなわれることから、期間は2カ月程度と日本政策金融公庫の創業融資よりも長くなる傾向があります。また、信用保証協会保証付融資は信用保証協会に保証料を支払う必要があり、トータルのコストは日本政策金融公庫の利息と比べ高くなる傾向にあります。
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融資獲得のポイント
①適正な事業計画を策定しているか
②策定した計画を遂行する十分な能力があるか
これは金融機関の視点では「融資した資金の返済ができるか」を確認する意図があります。しっかりと練りこまれた計画は、さまざまな観点からの検証がされており、金融機関の面談でも融資担当者からの質問に十分耐えることが可能です。そのため、結果として「確実に返済できる可能性が高い」と判断される事業計画になります。
日本政策金融公庫の創業支援
日本政策金融公庫は、創業・スタートアップを支援するため、多くの融資制度を制定しています。制度には各々特徴があり、ここでは日本政策金融公庫の創業支援に関する制度を説明します。
新創業融資制度
新創業融資制度は、これから起業する人または事業を開始してから2期以内の人を貸付対象とした制度です。新たに事業をはじめるため、または事業開始後の設備資金や運転資金として、3000万円を限度に融資を受けられます。
対象者の要件 | ・新たに事業をはじめる方または事業開始後税務申告を2期終えていない方 ・創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金をお持ちの方 ・新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方 |
資金の用途 | 設備資金、運転資金 |
融資限度の金額 | 3,000万円(うち運転資金1,500万円) |
返済期間 | 運転資金7年以内、設備資金20年以内 |
利率 | 2.40%~3.70%(令和5年11月1日現在の基準金利) |
担保・保証人の有無 | 原則、無担保無保証人 |
新規開業資金
新規開業資金は、新たに事業をはじめる人または事業開始後おおむね7年以内の人を対象に、7,200万円を限度に融資を受けられる制度です。資金の使い道は設備資金および運転資金に限られていますが、新創業融資制度やそのほか融資制度との併用が可能です。
対象者の要件 | ・新たに事業をはじめる方または事業開始後おおむね7年以内の方 ・新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方 |
資金の用途 | 設備資金、運転資金 |
融資限度の金額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
返済期間 | 運転資金7年以内、設備資金20年以内 |
利率 | 2.10%~3.40%(令和5年11月1日現在の基準金利) |
担保・保証人の有無 | 代表者の保証は原則必要となりますが、以下制度を利用することで不要になります。
担保を不要とする融資制度および経営者保証免除特例制度を利用した場合、不要 以下、経営者保証免除特例制度を利用するための要件になります。 |
■経営者保証免除特例制度を利用するための要件
①次の(a)から(c)までのすべての要件を満たす方が対象です。ただし、「物的担保の提供をいただく場合」は(a)の要件を、「新規開業後おおむね5年以内であって、技術・ノウハウなどに新規性がみられる方など」は、(a)および(b)の要件を満たしていればご利用いただけます。
(a)法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていることについて、公庫において確認ができること。
(b)税務申告を2期以上実施していること。また、公庫からの普通貸付または生活衛生貸付の借入れがある場合は、取引状況に問題がないこと。
(c)減価償却前経常利益が直近2期連続赤字ではなく、かつ、直近の決算で債務超過ではないこと。
②取引金融機関において代表者保証の免除に関する協調対応が見込める方、または取引金融機関から代表者保証を免除された借入残高のある方
③事業承継・集約・活性化支援資金または生活衛生事業承継・集約・活性化支援資金を適用してご融資を受けられる方
生活衛生新企業育成資金<特例貸付>
生活衛生関係の事業を創業する方、または創業後おおむね7年以内の方を対象とした融資制度です。必要な資金について、振興計画認定組合の組合員の方が振興事業貸付を利用した場合、設備資金
1億5,000万円~7億2,000万円、運転資金 5,700万円を上限に、組合員以外の方は設備資金
7,200万円~4億8,000万円を上限に融資を受けられます。税務申告を2期終えていない方は、新創業融資制度との併用が可能です。
対象者の要件 | 生活衛生関係の事業を創業する方または創業後おおむね7年以内の方
新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方 |
資金の用途 | 設備資金、運転資金 |
融資限度の金額 | 振興計画認定組合の組合員:設備資金 1億5,000万円~7億2,000万円、運転資金 5,700万円組合員以外:設備資金 7,200万円~4億8,000万円 |
返済期間 | 運転資金7年以内、設備資金20年以内 |
利率 | 税務申告を2期終えていない方:2.40%~3.70%(令和5年11月1日現在の基準金利)
税務申告を2期終えている方:2.10%~3.40%(令和5年11月1日現在の基準金利) |
担保・保証人の有無 | 代表者の保証は原則必要となりますが、以下の制度を利用することで不要になります。
税務申告を2期終えていない方 新創業融資制度との併用で原則不要 税務申告を2期以上終えている方 担保を不要とする融資制度および経営者保証免除特例制度を利用することが可能 |
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
技術・ノウハウなどに新規性がみられる方、日本ベンチャーキャピタル協会の会員(賛助会員を除く)など、または中小企業基盤整備機構もしくは産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けている方(見込まれる方を含む)が新規開業をおこなう場合、利用頂ける制度です。
ほかの融資制度と異なり、以下3点の特徴があります。
特徴1:期限一括返済
最終回の一括払いとなり、それまでの間は、利息のみの支払になります。そのため、融資期間中は元金の返済負担がなく、月々の資金操り負担を軽減することができます。
特徴2 業績に応じた金利設定
業績が低調なときは、金利負担が小さい設定となっています。そのため、安定的な返済計画を立てることができます。
特徴3 疑似出資
資本性ローンによる借入金は、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができます。そのため、財務体質を強化することができます。また、資本性資金でありながら、株式ではないため、既存株主の持株比率を低下させることもありません。
対象者の要件 | 1 融資制度
次の(1)から(5)までのいずれかの融資制度の対象となる方 (1)新規開業資金 2 そのほかの条件 次のすべての要件も満たす方 |
資金の用途 | 該当する融資制度に定める設備資金および運転資金 |
融資限度の金額 | 7,200万円(別枠) |
返済期間 | 5年1カ月以上20年以内 |
利率 | 融資後1年ごとに、直近の業績に応じて、返済期間ごとに次の2区分の利率が適用されます。資本性ローンは利益が出ると、金利が高くなるしくみとなっており、多くの投資をおこなうベンチャー企業には金利負担の少ない運用が可能になります。 |
担保・保証人の有無 | 無担保・無保証人 |
事業承継・集約・活性化支援資金
融資制度の概要
地域経済の産業活動の維持・発展のために、事業の譲渡、株式の譲渡、合併などにより経済的または社会的に有用な事業や企業を承継・集約化する中小企業者の資金調達の円滑化を支援する融資制度です。
資金の用途 | 事業譲渡に関わる費用(設備、運転資金) |
融資限度の金額 | 7億2千万円 |
返済期間 | 設備投資20年、運転資金7年 |
利率 | 案件毎に異なりますがおおむね2.5%以内 |
担保・保証人の有無 | 別途協議 代表者保証は必要 |
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東京都で受けられる創業支援
東京都は、新規の創業資金や創業後の事業資金を円滑に調達していただけるよう、東京都、東京信用保証協会、金融機関の三者が協調する東京都中小企業制度融資『創業』を制定しています。
東京信用保証協会の創業融資
融資対象 | 都内に事業所(個人事業者は事業所または住所)があり、東京信用保証協会の保証対象業種を営む中小企業者で以下3点のいずれかに該当する方
・現在事業を営んでいない個人で、創業しようとする具体的な計画を有している方 区市町村の認定特定創業支援等事業による支援または商工団体などによる創業支援を受け、証明を受けた場合、融資利率を0.4%優遇 |
資金の用途 | 該当する融資制度に定める設備資金および運転資金 |
融資限度の金額 | 3,500万円 |
返済期間 | 設備資金10年以内(据置期間1年以内を含む)、運転資金7年以内(据置期間1年以内を含む) |
東京信用保証協会の創業経営者保証不要型
東京信用保証協会の創業経営者保証不要型の融資制度にはスタートアップ創出促進保証の制度があります。
融資対象 | 国の「スタートアップ創出促進保証制度要綱」の要件に該当するもの |
資金の用途 | 運転資金・設備資金 |
融資限度の金額 | 3,500万円 |
返済期間 | 融資期間10年以内(据置期間 1年以内または3年以内を含む) |
利率 | 【固定金利】 融資期間に応じて変わります 3年以内‥‥‥‥‥‥1.5%以内 3年超 5年以内‥‥‥1.6%以内 5年超 7年以内‥‥‥1.8%以内 7年超‥‥‥‥‥‥‥2.0%以内 【変動金利】 |
返済方法 | 分割返済(元金据置期間は1年以内)
ただし、申込金融機関において本保証付融資と原則同時にプロパー融資を実行する、または保証申込時においてプロパー融資の残高がある場合は据置期間を3年以内とする。 |
信用保証料 | 創業関連保証の信用保証料率(0.35~0.60%)に0.2%を上乗せした信用保証料から、東京都が3分の2を補助する。 |
保証人 | 不要 |
物的担保 | 不要 |
そのほか 金融機関および融資対象者の責務および報告など、そのほかの条件については、国の「スタートアップ創出促進保証制度要綱」の定めるとおりです。
大阪で受けられる創業支援
大阪で受けることができる創業時における融資支援制度はどのような制度があるのでしょうか。大阪府、大阪市による創業者向け融資制度の説明をいたします。
開業サポート資金(開業資金)
開業サポート資金(開業資金)は、大阪府内において、事業開始に関する具体的な計画を有し、新たに事業を営むために必要な準備を現におこなっている方や、業歴の浅い方で、金融機関などによる融資後のフォローアップを受けることができる方をサポートする融資制度です。
利用資格 | 以下の①~⑦のいずれかに該当する必要があります。
① 事業を営んでいない個人で、1カ月以内に個人で事業を開始しようとする方。 ② 事業を営んでいない個人で、2カ月以内に中小企業の会社を新たに設立して事業を開始しようとする方。 ③ 事業を営んでいない個人であって、事業を開始してから5年未満の方。 ④事業を営んでいない個人が、新たに設立した中小企業の会社で、会社を設立して5年未満の会社。 ⑤ 中小企業の会社が自らの事業を継続しつつ、2カ月以内に新たに中小企業の会社を設立して事業を開始しようとする会社。 ⑥ 会社が自らの事業を継続しつつ、新たに設立した中小企業の会社で、会社を設立してから5年未満の会社。 ⑦ 事業を営んでいない個人が、法人成り(個人で事業を開始したのち、新たに会社を設立して事業の譲渡により事業の全部または一部 |
資金の用途 | 設備資金、運転資金 |
融資限度の金額 | 3,500万円 |
返済期間 | 10年以内(据え置き期間は12カ月以内) |
利率 | 1.4% (ただし、女性・若者・シニア・UIJターン該当者は年1.2%) |
信用保証料 | 1%(ただし、法人の場合に代表者連帯保証をおこなわない場合は1.2%) |
担保 | 不要 |
開業サポート資金(地域支援ネットワーク型)
開業サポート資金(地域支援ネットワーク型)は、開業資金の要件に加えて、
主たる事業所が地域支援ネットワーク型取扱地域内にあり、かつ、地域支援ネットワーク型取扱金融機関本支店での利用を希望する次の①~⑧のいずれかに該当する方が利用可能です。融資後3年間、金融機関、商工会・商工会議所および大阪産業局のフォローアップが受けられるなど、支援対象となる方をサポートする融資制度です。
利用資格 | ①事業を営んでいない個人で、1カ月以内(産業競争力強化法第2条第29項第1号に規定する認定特定創業支援等事業による支援を受けた旨の市町村長発行の証明書を有する場合には、6カ月以内)に個人で事業を開始しようとする方。
②事業を営んでいない個人で、2カ月以内(産業競争力強化法第2条第29項第1号に規定する認定特定創業支援等事業による支援を受けた旨の市町村長発行の証明書を有する場合は、6カ月以内)に中小企業に該当する会社を新たに設立し、事業開始を予定している方。 ③事業を営んでいない個人であって、事業を開始してから1年未満の方。 ④事業を営んでいない個人が、新たに設立した中小企業に該当する設立後1年未満の会社。 ⑤事業を営んでいない個人で、事業を開始して1年以上5年未満であって、申込時点で地域支援ネットワーク型利用中の方。または開業後1年以内(開業時を含む)に、日本政策金融公庫の貸付を受け利用中の方。 ⑥事業を営んでいない個人が、新たに設立した中小企業に該当する設立後1年以上5年未満であって、申込時点で地域支援ネットワーク型利用中の会社。または設立後1年以内(設立時を含む)に、日本政策金融公庫の貸付を受け利用中の会社。 ⑦事業を営んでいない個人が、個人で事業を開始したのち、法人成りした個人で事業を開始して1年未満の会社。 ⑧事業を営んでいない個人が、個人事業を開始したのち法人成りした事業開始後1年以上5年未満であって、法人成り以前も含めて、申込時点で地域支援ネットワーク型を利用中の会社。または開業後1年以内(個人での開業時を含む)に、日本政策金融公庫の貸付を受け利用中の会社。 ⑤ 中小企業の会社が自らの事業を継続しつつ、2カ月以内に新たに中小企業の会社を設立して事業を開始しようとする会社。 ⑥ 会社が自らの事業を継続しつつ、新たに設立した中小企業の会社で、会社を設立してから5年未満の会社。 ⑦ 事業を営んでいない個人が、法人成り(個人で事業を開始したのち、新たに会社を設立して事業の譲渡により事業の全部または一部 |
資金の用途 | 設備資金、運転資金 |
融資限度の金額 | 3,500万円 |
返済期間 | 10年以内(据え置き期間は12カ月以内) |
利率 | 1.4% (ただし、女性・若者・シニア・UIJターン該当者は年1.2%) |
信用保証料 | 0.5%(ただし、法人の場合に代表者連帯保証をおこなわない場合は0.7%) |
担保 | 不要 |
大阪信用保証協会の創業経営者保証不要型
大阪信用保証協会の創業経営者保証不要型の融資制度には、スタートアップ創出促進保証の制度があります。大阪府内において、これから会社を設立される方、または設立後5年未満の会社の事業資金融資を受けることができる制度で、経営者保証は不要です。
※1期目の税務申告が未了の方が申込みをする場合、自己資金額が創業資金総額の10分の1以上あることが必要です。
利用資格 | 大阪府内において、これから会社を設立される方、または設立後5年未満の会社の方 |
資金の用途 | 設備資金、運転資金 |
融資限度の金額 | 3,500万円 |
返済期間 | 10年以内(据え置き期間は12カ月以内) |
創業時に活用したい日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫の創業融資制度は、制度として非常に充実していることから、これから創業をされる方が融資を検討する場合、まず利用を検討頂きたい制度です。金利は比較的安く、返済期間も長めに設定されており、事業の立ち上げには無理がありません。また、法人の場合は代表者の連帯保証がなく、代表者本人にリスクが及ばない制度となっております。
自己資金はどのくらい必要?
創業時においては、過去の業績はありません。そのため、創業者の実績である経歴や資格、自己資金が重視される審査になります。とくに自己資金については、融資を希望する金額の1/3程度を準備していない場合、審査はきびしくなってきます。
個人と法人で申込みはちがう?
個人と法人で審査のちがいはありません。個人事業主の方でも、法人を設立したとしても創業融資審査で求められるものは同じです。
運転資金と設備資金
事業を立ち上げるにあたり、設備投資部分を設備資金と呼び、事業の運営上かかる費用を運転資金と呼びます。日本政策金融公庫は、融資の返済が事業に与える影響を鑑み、これらの投資負担が最低限になることを望ましいと考えています。そのため、設備投資については事業に影響を与えない範囲でもっとも安くなる金額にて決定することが望ましいです。また、運転資金に関して代表者の所得は、融資金額に含まれないという判断をされることもあるため注意が必要です。
【創業融資】よくある質問
創業融資についてよくある質問をまとめました。
自己資金がゼロでも創業融資は受けられますか?
これは創業融資でとくに多い質問になります。
日本政策金融公庫の制度では、自己資金がゼロでも融資を受けることが可能です。しかし、創業融資において審査がとおらない理由の多くが、自己資金が少ないからという理由になっています。これは、制度上設けられている条件を満たしている=融資審査にとおるではなく、自己資金ゼロでも審査はおこないますという意味と考えてよいでしょう。
創業融資における自己資金不足は、創業に対する準備が不十分であると見なされます。創業融資はほかの調達方法と比べ、優位な点が多くありますが、返済が必要であることは変わりません。自己資金が少ないということは、相対的に融資の金額が大きくなるため、結果として事業で稼がなければならない金額が大きくなります。
このことから、自己資金の不足を過剰に融資で補おうとすることは、適正な事業計画ではないと判断されます。なお、一般的に希望する融資金額の1/3程度を自己資金として準備しておくのが一般的といわれています。
自己破産・債務整理でも創業融資は受けられますか?
これも創業融資で非常に多い質問になります。まず、自己破産をされている場合、自己破産の手続き完了から7年以上経過するまでは、融資を受けることは困難になります。また、過去に事業をおこなって自己破産をされた場合、7年を経過したとしても、はじめての創業には当たらないため、創業融資の利用をすることはできません。
債務整理の場合は、整理した債務を完済してから5年を経過するまでは融資を受けることは困難になります。また、過去に事業をおこなって債務整理をされた場合、完済後5年を経過したとしても、はじめての創業には当たりませんので創業融資の利用をすることはできません。
未経験でも創業融資を受けられますか?
こちらは創業融資でとくに多い質問になります。創業前、または創業間もない時期に利用する創業融資は事業の実績に基づく融資判断が困難になります。そのため、創業前の業務経験が審査の重要なポイントになります。
とくに未経験の分野で創業を検討する場合、何故、未経験でも上手くいくと考えているのかをしっかり事業計画において伝える必要があります。利益を出せる根拠が不十分であると判断された場合、適正な事業計画ではない、計画を遂行する能力がないと見なされてしまいます。また、フランチャイズに加盟する場合であったとしても、経験の有無は問われますので、注意が必要になります。
創業融資で1,000万円以上の調達も可能ですか?
日本政策金融公庫の創業融資については、1,000万をひとつの上限として判断していると思われます。ただし、クリニックや認可外保育園などの大規模な設備投資を必要とする創業もあるため、業種業態による変動はあります。大きな融資が必要となる場合、日本政策金融公庫は、相応の自己資金や業界経験、より精緻な事業計画を求めてくることになります。また、日本政策金融公庫のみで必要となる資金を賄えない場合、民間金融機関と協調して融資をおこなう、協調融資の制度も活用できます。
事業承継(スモールM&A)で起業を考えていますが、創業融資は使えますか?
最近、事業承継による創業も増えてきつつありますが、制度として創業融資の利用は可能です。ただし、事業承継の場合は承継のスキームや承継元の状況、譲渡を受ける事業内容、受け手側の状況など、通常の創業融資と異なる観点で事業計画を作成する必要があります。事業承継での創業を検討されている場合は、上記の事項について専門家に相談し、しっかりとした対策を講じておくことが望ましいと思われます。
創業融資の相談は専門家へ
創業融資は、計画書を見た日本政策金融公庫に「十分返済できる」と判断させる必要があります。しかし、当事者の意見だけでは、客観的とはいえません。そのため、計画が客観的に返済可能であることを説明する必要があります。また、面談時の発言と創業計画に矛盾が生じても、日本政策金融公庫の担当者に不信感を与えることになるでしょう。
創業計画書を作成する大きな目的は、融資を受けることです。そのため、計画は客観性や具体性があり、実現可能と判断されることや、面談における矛盾が生じないことが必要になります。
このような目的から、第三者の専門家に創業計画書を確認してもらうことが計画のブラッシュアップにつながります。そのため、創業計画作成当初から積極的に確認してもらうことで融資の確度を大きく高めていけるでしょう。
ドリームゲートには、創業融資をサポートする認定アドバイザーが多く在籍しています。悩みがあれば、まず一度専門家に相談されることをおすすめします。初回面談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 田中 琢郎
(たなか たくろう) /株式会社ファイナンスアイ
「まずは私に相談してください」を合言葉に、無料メール相談はもちろん、電話・LINEで無料相談を受け付け、困った経営者に寄り添う資金調達の専門家です。落ち着いたお人柄で親身に話を聞いてくださいます。資金繰り・創業融資で困ったらまずは田中アドバイザーへ。
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