日本政策金融公庫の審査落ちをする人の6つの原因と成功のポイント

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 田中 琢郎

ドリームゲート認定アドバイザーの田中琢郎です。10,000件以上の経営者の融資や、事業資金調達の相談対応実績を持つ株式会社ファイナンスアイの創業者でもあります。2014年から株式会社ファイナンスアイを創業し、日本全国の起業家・中小企業の経営者・個人事業主の皆様にファイナンスという強力な武器を提供しています。

日本政策金融公庫は、多くの起業家・経営者が活用する資金調達先になります。政府系ということもあり、民間の金融機関とはちがう視点で審査をおこなっています。この記事では、審査落ちの原因や成功するためのポイントについてお伝えしていきます。

専門家からのヒトコト
コロナ禍のゼロゼロ融資の返済が始まり、すでに不良債権化しているというニュースが報道されています。日々、さまざまな起業家・経営者の融資を支援する現場にいると、最近はとくに審査がきびしくなっている傾向にあると感じます。

新創業融資の審査基準(全体のサマリ)

日本政策金融公庫は、創業・スタートアップを支援するため、無担保・無保証人で利用可能な「新創業融資制度」を制定しています。本制度は、新たに事業をはじめる方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象としており、ほかの融資制度との併用により利用可能です。

新創業融資は、創業前や創業して間もない方を対象とした制度です。そのため、一般的な融資のように決算書を中心とした審査ではなく、創業準備にあたる自己資金の貯蓄や創業者本人の経歴、経験、取得資格などや、将来ビジョンにあたる事業の見通しや強み、投資計画、収支計画について審査を受けることになります。審査においては、適正な事業計画を策定しているか、策定した計画を遂行する能力が十分あるかを確認することになります。

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日本政策金融公庫の融資実態

日本政策金融公庫は国の機関ではありますが、融資についてはしっかりとした審査があります。適正な事業計画を策定しているか、策定した計画を遂行する能力が十分あるかを確認できない場合は、希望融資額を減額されたり、融資が受けられなかったりすることも十分ありえるため、しっかりとした準備をおこなう必要があります。

融資の通過率

日本政策金融公庫の融資通過率は、50%~60%といわれており、約半数の方が融資にとおらない結果となります。審査落ちをした理由を改善し、最低半年程度の期間を空け、再度申込みすることも可能です。しかし、日本政策金融公庫から審査落ちの理由を明確に伝えられていない場合、何をどこまで改善すれば、融資可能となるのかについての基準を自分で確認する必要があります。確認せずに再度挑戦しても、また審査落ちという結果になってしまうでしょう。

また、最近、ゼロゼロ融資の返済が滞っており、大きな社会問題となる可能性も出てきました。このまま返済遅延などが増加すると、金融環境が縮小され、新規融資希望者の審査がきびしくなる可能性もあります。

融資が失敗する事例

ここではじっさいに融資が成功しなかった例を紹介していきます。融資の審査に通らないのは、このような部分が要因になっているという事実を知り、自分自身に置き換えて参考にしてもらえればと思います。

【融資に失敗したAさんの状況】

独立して起業を検討しているAさんは、内勤中心であったことから、経験が無くても十分利益が出せるというふれこみの某フランチャイズに加盟を検討していました。

数か月分の生活費の蓄えはありましたが、ここ最近、出費が嵩み、蓄えは減り、リボ払いの残高も増えることとなりました。また自宅の固定資産税の支払いも忘れており、最近急ぎ支払いをおこないました。

FC本部からは日本政策金融公庫の創業融資であれば、十分審査はとおると進められ申込みをおこなったものの、結果は不認可となりました。さて、Aさんの何がいけなかったのでしょうか。大きなポイントは以下の3つです。

  • ①自己資金が不足している。
  • ②起業する業界での経験がない。
  • ③税金の支払いを遅延している。

この3つが審査に悪い影響を与えることになりました。さらに、Aさんが融資審査で提出した事業計画や投資計画は、FC本部から渡された資料を転記して作成しており、この部分も大きなマイナスになったと想定されます。

それでは、これらの要因をくわしく確認していきたいと思います。

専門家からのヒトコト
FCを活用して独立・起業される方も多いです。ファイナンスアイでもFCで起業される方の資金調達を多くサポートしています。注意してもらいたいのは、FC本部は融資の専門家ではありません。FCに加盟されるとしても、まずは自分事として事業を練りこまれることをおすすめします。

審査落ちする6つの原因

日本政策金融公庫は、公的機関としての役割を持っています。しかし、資金の貸し手として融資資金がしっかりと返済をされることを期待しています。そのため、適正な事業計画を策定しているか、策定した計画を遂行する能力が十分あるかについて審査します。適正な事業計画ではない、計画を遂行する能力がないと見なされたことが原因となり、審査落ちにつながる場合が多くなっています。次からこの原因をくわしく確認していきましょう。

専門家からのヒトコト
金融機関の目線で見て、自分がこの事業を実現できると思ってもらえるかが重要です。そして、短期的な視点よりも中長期で経営していく事業なのかも重要です。

①自己資金が足りていない

まず、日本政策金融公庫の制度では、自己資金がゼロでも融資を受けることが可能です。しかし、創業融資において審査がとおらない理由の多くが、自己資金が少ないからという理由になっています。これは、制度上設けられている条件を満たしている=融資審査にとおるではなく、自己資金ゼロでも審査はおこないますという意味と考えてよいでしょう。

創業融資における自己資金不足は、創業に対する準備が不十分であると見なされます。創業融資はほかの調達方法と比べ、優位な点が多くありますが、返済が必要であることは変わりません。自己資金が少ないということは、相対的に融資の金額が大きくなるため、結果として事業で稼がなければならない金額が大きくなります。

このことから、自己資金の不足を過剰に融資で補おうとすることは、適正な事業計画ではないと判断されます。なお、一般的に希望する融資金額の1/3程度を自己資金として準備しておくのが一般的といわれています。

②実現可能な事業計画がない

事業計画のもっとも重要な部分は、売上から利益までを記載した収支計画になります。融資する側は、問題なく返済可能かを事業計画書によって判断する必要があります。そのため、創業者は計画をデータなどの具体性のある根拠に基づいて作成しなければいけません。

またFC加盟の場合でも、通常、売上保証などがないことが一般的です。したがって、FC本部が作成した資料をそのまま提出した場合、日本政策金融公庫からの質問に回答ができないことになります。このことは、事業における自らの責任を十分理解しているのかという疑念を抱かせることになるため、十分注意する必要があります。事業計画について日本政策金融公庫からの質問に回答できない場合、計画を遂行する能力がないと見なされてしまう可能性があります。

③説得力のある資金計画ではない

資金計画は、事業計画を実現するために必要な資金の使い道を示したものです。そのため、投資の内容はしっかりと吟味し、この投資が事業計画の何に繋がるのかをしっかり説明する必要があります。事業計画との連動が十分説明できない場合は、過大な投資であると見なされ、減額される可能性や適正な事業計画ではないと融資を断られる可能性もあります。

④信用情報に問題がある

創業融資においては、創業者=会社と捉えられます。これは、法人設立の有無を問いません。そのため、創業者の信用情報は非常に重視されます。破産などの法的整理をおこなって間もない場合、CICなどの信用情報に問題がある場合、公共料金や家賃などの支払い遅延や税金の滞納、分割払いがある場合などに関しては、非常に審査がきびしくなります。

⑤業務経験がない

創業前、創業間もない時期に利用する創業融資は事業の実績に基づく融資判断が困難になります。そのため、創業前の業務経験が審査の重要なポイントになります。とくに未経験の分野で創業を検討する場合、何故、未経験でも上手くいくと考えているのかをしっかり事業計画において伝えていくことが必要です。利益を出せる根拠が不十分であると判断された場合、適正な事業計画ではない、計画を遂行する能力がないと見なされてしまいます。

⑥面談で落ちるポイント

書類提出後は、日本政策金融公庫担当者との面談が実施されます。この面談では、書類では伝わりにくい創業者自身の情報と書類内容との整合性を確認されることになります。

面談が理由で落ちる最大のポイントは、日本政策金融公庫担当者から「信用できない」と思われることです。とくに次のような部分には注意してください。

■面談時のポイント

  1. 態度や言葉遣いが横柄である
  2. 服装がだらしない
  3. 書類の記載が間違っている
  4. 書類に検討ちがいの記載をしている
  5. 自身の事業計画の説明ができない
  6. プレゼンしている内容がコロコロ変わるなど一貫性がない

創業者本人の信用ができないと判断されてしまうと、書類そのものの信ぴょう性もなくなり、それ以上融資審査を継続することができなくなります。

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審査通過成功のポイントは事業計画

日本政策金融公庫の審査のポイントは明快です。「適正な事業計画を策定しているか」と「策定した計画を遂行する能力が十分あるか」の2点となり、これは「融資した資金の返済ができるか」を見ています。

適正な事業計画とは、しっかりと練りこまれ、「返済が確実にできる可能性が高い」と判断される事業計画になります。練りこまれた事業計画は、さまざまな観点からの検証がされており、日本政策金融公庫の面談における質問に十分耐えることが可能です。また、計画における練りこみは計画実施時における、営業施策の多様化に繋がることから、返済の実現性に対する信頼度合も高まります。

万が一審査落ちしてしまったら

融資審査待ちをした場合、まずその理由を確認することが重要です。審査落ちした理由の改善ができていない場合、再度挑戦しても同じ結果になります。

日本政策金融公庫をはじめとする金融機関は、否決の理由を伝えたがりません。そのため、否決の理由は金融機関側から明快にされることはあまりありません。しかし、これでは何をどのようにすれば融資がとおるのか見当もつかなくなってしまいます。このような場合、創業融資の専門家に相談し、アドバイスを受け、創業融資に再チャレンジすることも有効な手段になるでしょう。

希望金額の決め方

審査を通過できる希望金額は、どのように決めればよいのでしょうか。希望金額は、以下の項目を押さえて作成した投資計画に基づいて決定します。

  1. 売上に影響を与えない範囲で、可能な限りコストをおさえる
  2. 投資計画の中身を創業者がしっかり説明できるようにしておく
  3. 運転資金は、資金繰りの状況を見て、安全な事業運営ができる金額を希望する
  4. 融資金額は自己資金の3倍程度になるように調整する

よくある質問

自己資金ゼロで創業融資はとおりますか

「自己資金なし」で融資を受けるには、日本政策金融公庫が定める条件を満たすことと、そのうえで精緻かつ具体的な創業計画書(事業計画書)を作成する必要があります。とくにこの「具体的」という部分の説明がなかなか苦労します。じっさいには、これから開業する事業で「自己資金無しでも、この事業は必ず返済することができる」と日本政策金融公庫を納得させなければ、融資を受けることはできません。そのため、自己資金なしでの融資成功は非常にハードルの高いものになります。

専門家からのヒトコト
自己資金なしで公庫の創業融資を受けられるのかについては、以前の記事でもくわしく解説していますので、コチラもあわせて参考にしてください。

信用情報が悪い場合どのようにすればよいですか

CICなどの信用情報機関において、悪い情報が掲載されている場合は、その情報が無くなるまで融資審査はきびしくなります。まずは信用情報を積み上げて、一定期間経過後、ご自身で信用情報を確認し、挑戦するか否かを判断してください。

過去に自己破産していても審査にとおる?

過去に自己破産をしていても、7年以上経過しており、その後の個人情報に問題がない場合、融資を受けることはできます。ただし、自己破産したときの状況にもよりますので、ドリームゲートの認定アドバイザーなどの専門家に相談されることをおすすめします。

専門家からのヒトコト
融資のサポートを専門家に依頼するメリットについては、コチラの記事でもくわしく解説していますので参考にしてください。

まとめ

融資の審査に通過するには、創業計画書を見た日本政策金融公庫に「十分返済できる」と判断させる必要があります。しかし、当事者の意見だけでは、客観的とはいえません。そのため、計画が、客観的に返済可能であることを説明する必要があります。また、面談時の発言と創業計画に矛盾が生じても、日本政策金融公庫の担当者に不信感を与えることになるでしょう。

創業計画書を作成する大きな目的は、融資を受けることです。そのため、計画は客観性や具体性があり、実現可能と判断されることや、面談における矛盾が生じないことが必要になります。

このような目的から、第三者の専門家に創業計画書を確認してもらうことが計画のブラッシュアップにつながります。そのため、創業計画作成当初から積極的に確認してもらうことで融資の確度を大きく高めていけるでしょう。

ドリームゲートには、創業融資をサポートする認定アドバイザーが多く在籍しています。悩みがあれば、まず一度専門家に相談されることをおすすめします。初回面談は無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

執筆者プロフィール:ドリームゲートアドバイザー 田中 琢郎
(たなか たくろう) /株式会社ファイナンスアイ

「まずは私に相談してください」を合言葉に、無料メール相談はもちろん、電話・LINEで無料相談を受け付け、困った経営者に寄り添う資金調達の専門家です。落ち着いたお人柄で親身に話を聞いてくださいます。資金繰り・創業融資で困ったらまずは田中アドバイザーへ。

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ドリームゲートアドバイザー 田中 琢郎

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