【新型コロナウイルス感染症関連】融資に関する情報まとめ(3/11時点)

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 上野 光夫

今年2月中旬から、新型コロナウイルス感染症関連の各種の公的融資制度が発表されています。飲食店など大きな影響を受けている企業は、厳しい実態の中で、一刻も早く利用したいとお考えでしょう。

しかし「うちは融資を利用できるのだろうか?」「どんな手続きをすればいいの?」「どこに相談すればいいの?」など、分からないことが多いと思います。

そこで、融資制度を利用するための手順や、審査にパスするためのポイントなどを解説します。

3月4日の記事と重複する部分もありますが、併せてお読みいただけると理解が深まると思います。
※本記事は2020年3月11日執筆時点での各機関の情報を元にしています。変更が生じる可能性がありますので最新の情報を確認していただくようお願いいたします。

どんな融資制度が設けられているか

新型コロナウイルス感染症関連で、設置された主な制度は「日本政策金融公庫」と「信用保証協会」の2つがあります。

(1)日本政策金融公庫

政府系金融機関である日本政策金融公庫では、「新型コロナウイルスに関する相談窓口」を全国の支店に設置しており、窓口と電話で対応しています。

融資制度では、「経営環境変化対応資金(セーフティーネット貸付)」「海外展開・事業再編資金」「衛生環境激変特別貸付」の3つが主なものです。

さらに3月10日には、以下の追加支援策が発表されました。

「新型コロナウイルス感染症特別貸付」

(概要)

  • 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、最近1カ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して、5%以上減少した方。
  • 当初3年間の金利が基準金利からマイナス0.9%
融資限度額 国民生活事業:6,000万円、中小企業事業:1億円
利下げ限度額 国民生活事業:3,000万円、中小企業事業:1億円
特別利子補給制度

(概要)

上記「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を利用した中小企業者等のうち、以下の要件を満たす方は、融資後3年間利子補給を行う。

つまり当初3年間は「無利子」となる。

  • ①個人事業主:要件なし
  • ②小規模事業者(法人):売上高15%以上減少
  • ③中小企業者(①②を除く):売上高20%以上減少
補給対象上限 国民生活事業:3,000万円、中小企業事業:1億円
マル経融資の金利引き下げ(新型コロナウイルス対策マル経)

(概要)

商工会議所等の経営指導を受けた小規模事業者への融資制度「小規模事業者経営改善資金融資」(マル経)において、新型コロナウイルス感染症の影響によって売上が減少した事業者について、金利を引き下げる。

  • 最近1カ月の売上高が前年又は前々年の同期と比較して、5%以上減少した方。
  • 当初3年間の金利が通常の貸付金利からマイナス0.9%
融資限度額 別枠1,000万円

(2)信用保証協会

信用保証協会とは、中小企業が銀行や信用金庫など民間金融機関から融資を受ける際に、保証をする公的な機関です。

新型コロナウイルス感染症に関して、民間金融機関からの融資を受けやすくするために、「セーフティネット保証 4号」を設置し、「セーフティネット保証 5号」の対象業種を拡げました。

東京都など、一部の自治体では、保証料を補助する制度もあります。

(例:東京都)

新型コロナウイルス感染症対応緊急融資「感染症対応」

・要件

「最近3カ月間の売上実績」又は「今後3か月間の売上見込」が令和元年12月以前の直近同期と比較して、5%以上減少している方。

・融資限度額:2億8,000万円(ただし無担保は他の保証制度を含めて8,000万円以内)

・保証料率:東京都が信用保証料の全額を補助

また、3月10日には、以下の追加支援策が発表されました。

◯「危機関連保証」

・売上が前年同月比15%以上減少する中小企業・小規模事業者に対して、一般保証、セーフティネット保証に加えて、更なる別枠(2.8億円)を措置。

融資利用に際しての手順

次に、どのような判断で相談や申し込みをすればいいか、解説します。

(1)基本姿勢

特別の制度ができたからといって、大急ぎで相談窓口へ駆け込むのではなく、しっかりと準備することが大切です。

日本政策金融公庫、信用保証協会、民間金融機関、市区町村などの窓口は、かなり混雑していることが推測されます。

そこへ何も準備せずに行っても、具体的な話ができないため、かえって時間がかかる可能性があるからです。

あらかじめ自社の状況をしっかりと把握して、どの制度に合致しそうかなど、事前準備をして相談に臨むことをお勧めします。

(2)資金調達の必要時期と金額を確認する

新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業は、不安から「一刻も早く資金調達したい」とお考えだと思います。

でもその前に、いつ頃までにどれくらい必要になるのかについて、冷静に分析をしてください。そのためには当面(1年間くらい)の資金の出入りを予測する「資金繰り表」を作成して、資金不足の時期と金額を算出することが重要です。

資金繰り表を作成することで、金融機関の審査でもプラスにはたらきます。

(3)どの制度に申込すればいいか

どの制度が適しているか検討するために、次のような点について確認してみてください。

①営んでいる業種

飲食業や旅館業などを営んでいる方は、日本政策金融公庫の「衛生環境激変特別貸付」に該当する可能性があります。

この制度に該当すれば、融資実行までのスピードが比較的速いと推測されます。

最近1カ月の売上を計算して、昨年の同月か一昨年の同月と比較して、10%以上減少していれば、対象になります。

10%以上減少していない場合、あるいはその他の業種の場合でも、日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付」の対象になる可能性があります。

また、信用保証協会の「セーフティネット保証 5号」も、指定業種が決められています。ご自身が営む事業の業種が該当しているか、確認しましょう。

②売上実績と見通しの確認

最近1カ月間の売上について、金額を確認してください。次に、今後数か月の売上について、予測してください。

このような状況の中で予測するのは難しいかもしれませんが、できるだけ実現可能性の高い予測に努めてください。

さらに、昨年同期、1昨年同期の金額を確認しましょう。
(注:売上実績については、帳簿や預金通帳など証拠書類を求められます)
その数値が、各制度の以下の要件に合致するかチェックしてください。

日本政策金融公庫「衛生環境激変特別貸付」

最近1カ月の売上が、前年同月または一昨年同月と比較して10%以上減少

信用保証協会「セーフティネット保証 4号」

最近1カ月の売上が前年同月に比して20%以上減少

信用保証協会「セーフティネット保証 5号」(業種指定あり)

2月以降直近の3カ月の売上が前年同月比で5%以上減少
(2月以降3カ月の売上高が算出可能になるまでは、直近の売上高と売上高見込を含む計算でも可)

以上の数値要件に合致すれば、その制度が利用できる可能性があります。
(該当要件はこれだけではないので、他の要件もチェックしてください)

また、3月10日に追加発表された支援策についても、それぞれ数値要件がありますので、ご確認ください。

③信用保証協会の制度利用の留意点

信用保証協会の「セーフティネット保証 4号・5号」は、いずれも「売上高等の減少」が要件になっており、市区町村長の認定を受ける必要があります。

ご自身の事業所がある市区町村の窓口がどこにあるか、確認しましょう。申請書がホームページからダウンロードできる市区町村もありますので、チェックしてみてください。

ただし、実際に融資するのは、銀行や信用金庫など金融機関です。

「まずは認定を受けねば」と考え、真っ先に市区町村の認定を受けて、その後に金融機関へ申込する方も多いのですが、それは得策ではありません。

事前に金融機関へ相談しておけば、適する制度や手順など、最善の方法についてアドバイスを受けられる可能性があるからです。

④売上要件や業種要件に該当しない場合

「まだ今のところは売上が減少していないけど、今後かなり減少する見込」といった場合や、「セーフティネット保証 5号」の対象業種でない場合でも、融資が受けられないとは限りません。

日本政策金融公庫では「セーフティネット貸付」、信用保証協会は他の保証制度で利用ができる可能性があります。


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審査にパスするためのポイント

新型コロナウイルス関連の融資は、非常事態を乗り越えるための政策目的はありますが、それでも融資なので、「審査」があります。

通常の融資よりも、審査の難易度は下がると推測されますが、100%の企業が利用できるわけではありません。

そこで、審査にパスするためのポイントについて解説します。

(1)担当者とは冷静に話をする

多くの企業が深刻な影響を受けているので、不安や焦りの気持ちが強いと思います。でも、担当者と話をするときは、冷静に対応することが重要です。

担当者に対して、いらだちをぶつける、「融資してくれるのは当然」といった態度、逆に懇願しすぎる姿勢などは、避けましょう。

経営者として、冷静に自社の実態と見通しを説明する、あきらめずに難局を乗り越える前向きな改善策を示す、といった姿勢を心がけてください。

(2)実績と見通しを明確に

売上・収益の実績推移をしっかり把握して、直近までの損益計算書を準備することが不可欠です。新型コロナの影響について、時期や状況を説明できるようにしておきましょう。

また、当面(1年くらい)の資金繰り表を準備しておくと説得力が高まります(資金繰り表には、今回受ける予定の融資も盛り込みます)。

(3)複数制度の併用もあり得る

必要金額が大きい場合や、資金を急ぐ場合などは、日本政策金融公庫と信用保証協会の同時申込も、可能性を拡げる観点からあり得る手段といえます。

日本政策金融公庫がNGでも、信用保証協会の制度がOKという可能性があります(その逆もありえます)。

融資実行までのスピードは、込み具合などによって差があるので、同時並行での申込によっていずれか早いほうを利用することができます。

また、必要金額が大きい場合も、双方へ申し込みすることで、トータルとして十分な金額を利用できる可能性が高まります。

ただし、同時利用する場合でも、完全に重複する資金使途(一つの機械を購入する設備資金を双方に申し込むなど)はNGです。


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まとめ

新型コロナウイルスの影響は、いつ収束するか予測できない状況です。経営者の皆様は、先行きの不安が大きいと思います。

公的融資を賢く活用しながら、この難局を乗り越えていきましょう。

 

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 上野 光夫
(うえの みつお)/資金調達コーディネーターⓇ/中小企業診断士

(株)エムエムコンサルティング代表。元日本政策金融公庫の融資課長として5000名以上の起業家を支援した上野アドバイザー。現在は、資金調達の専門家として活躍されております。融資を検討されている方はぜひご相談ください。
著書「事業計画書は1枚にまとめなさい」「起業は1冊のノートから始めなさい」など。

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ドリームゲートアドバイザー 上野 光夫氏

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