製品デザインの不正競争防止法による保護
~無印良品VSカインズホーム事件~

法務・知的財産

執筆者: 森下 梓

無印良品VSカインズホーム事件

昨年、株式会社良品計画、いわゆる無印良品が、大手ホームセンターを運営する株式会社カインズに対し、製品デザインが類似していることから不正競争防止法に基づいてユニットシェルフの販売差止めを求める事件がありました【東京地裁平成29年8月31日判決<平成28年(ワ)第25472号>】。従来、不正競争防止法に基づく製品デザインの保護は限定的に解釈されてきましたが、この事件は、シンプルな形状を有するユニットシェルフについて不正競争防止法による保護を認めたことで、大きな話題となりました。

不正競争防止法による製品デザインの保護の可能性

不正競争防止法は、営業秘密の保護等、企業の公正な競争を促進するために設けられた法律であり、工業的に生産される製品のデザインの保護は、原則としては意匠法によって図られるものです。しかし、意匠は登録を前提とした制度であるため、意匠として登録されていない製品は保護されません、また、意匠権には20年の存続期間が定められているため、期間が満了した製品には保護が及びません。加えて、アパレル等、製品のライフタイムが著しく短い業態の場合、登録までに費用と時間のかかる意匠法による保護は現実的ではありません。

そのため、より柔軟に製品デザインを保護することのできる制度や法律の運用が求められており、不正競争防止法による製品デザインの保護も、その一環といえます。
不正競争防止法には、2条1項3号に製品デザインの保護に関する規定が置かれています。これは他者の商品を模倣することや、譲渡などの取引行為を禁止するものです。
しかし、当該規定は、デッドコピー規制のための最小限の保護を定めたものであり、日本で最初に販売されてから3年を経過した製品については、保護を受けることができません。そのため、長年にわたり販売されてきた工業的製品の保護は、これとは別の規定であり、主に商品の名称等の不正使用を防止する規定に求められることになります。

また、不正競争防止法の規定に基づいて、製品デザインの保護を求める場合、「特別顕著性」と「周知性」の要件が必要となります。特別顕著性とは、簡単に言えば、そのデザインが、他の製品デザインと比較して、顕著な特徴を有しているかというものです。一方、周知性とは、そのデザインが継続的に使用された結果、利用者が、デザインを見て特定の会社名等を認識できるかというものです。しかし、製品の機能的要請に基づくデザインについては主に特許法が保護すべき領域であると考えられており、不正競争防止法に基づく工業デザインの保護は限定的に解されています。無印良品vsカインズホーム事件においても、争いとなった製品がユニットシェルフという工業製品であったため、『特別顕著性』と『周知性』が認められるか否かに注目が集まりました。

事案の内容

本件で争われた製品のデザインは、以下のとおりです。

東京地裁平成29年8月31日判決より引用

左が株式会社良品計画の製品、右が株式会社カインズの製品です。一見して分かるとおり、両者は極めて類似しています。また、それと同時に、これらのユニットシェルフが非常にシンプルなデザインを採るものであり、機能とは無関係の装飾が存在しないことが分かるでしょう。

すでに説明したように、従来、このように機能的な形態を有する製品については、不正競争防止法の保護が及ばないと判断されることが多かったといえます。しかし、本件では、無印良品のユニットシェルフに特別顕著性を認め(周知性も認めています)、差止めを肯定したのです。

その理由としては、やはりカインズのユニットシェルフが、その細部に至るまで無印良品の製品と酷似していたことが大きいでしょう。すでに述べたように、不正競争防止法には商品のデッドコピーを規制しようという思想があり、本件では、たとえ工業的製品であっても、周知になった製品を模倣して先行事業者の営業努力にただ乗りすることは許されないとの判断が働いたものと考えられます。

なお、その後本件はカインズにより控訴されましたが、控訴審も、地裁の判断を維持し、無印良品による差止めを肯定しました【知財高裁平成30年3月29日判決<平成29年(ネ)第10083号>】。

ベンチャービジネスにおける不正競争防止法の役割

このように、無印良品事件は、シンプルな形状の工業的製品について、不正競争防止法による保護を認めました。さらに、店舗の外観について同様に不正競争防止法による保護を認めた例もあります。

製品を販売する際には、特許や意匠が取られていないからといって、ヒット商品のデザインを安易に模倣すべきではありません。たとえその製品が販売後3年を経過しており、不正競争防止法2条1項3号違反の可能性がなくなっていたとしても、良く知られている製品の形態を模倣すると、本件のように先行者から差止めを受ける可能性があります。

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執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 森下 梓氏
(弁護士法人内田・鮫島法律事務所)

技術のわかる弁護士・弁理士として、知財・法務アウトソーシングサービスを展開している。数多くの中小企業、ベンチャー企業に対して知財戦略コンサルティングを行い、少ない資金で事業を守るための効率的な権利・ライセンス等を取得することで、資金調達、競合他社参入防止に貢献。その他、契約書・訴訟経験も多数。。。。

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