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世界屈指の大企業、アマゾン
2018年2月、インターネット通信大手アマゾン・ドット・コムの時価総額は世界3位になりました。この時点での時価総額トップはアップルであり、2位はアルファベット(グーグル)です。また、世界富豪ランキングでは、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスがマイクロソフト創業者のビル・ゲイツを抜いて世界1位になっています。卓越した経営センスによって創業からわずか四半世紀で、世界のトップまで登り詰めたジェフ・ベゾス。創業時においても、素早い経営判断で会社名の軌道修正をしていました。
アマゾン創業時の会社名は、意外なネーミング
創業者にとって、会社の名前は特別な思い入れがあります。また、その会社名が商品名やサービス名と同じである場合、その想いはより一層強くなります。創業者であるジェフ・ベゾスは候補となる名前を無数に書き出し、その中から1つを選んで会社名を決定しました。その会社名はアマゾンではなく、「カダブラ」でした。「カダブラ」は、おまじないの文句や魔法の呪文として使われる「アブラカダブラ」に由来して名付けられています。とても意外でユニークなネーミングですね。
その後、ジェフ・ベゾスは「カダブラ」というインターネットサービスを立ち上げるべく、1994年7月、米国ワシントン州に、会社「カダブラ」を登記しました。
会社名を考えるとき、このように、すでにある単語を省略したり、文字を追加したりして造語にする手法は良く用いられます。理由として、ユニークかつオリジナリティがある名前とすることでドメイン名が取得しやすく、かつ商標も登録しやすくなることが挙げられます。
アマゾンの誕生
カダブラ社は、会社登記後に事業を開始しましたが、すぐに会社名についての問題に直面します。取引先や顧客との電話のやりとりで、カダブラ “Cadabra”のことをカダバー”Cadaver”(日本語で「死体」)と聞き間違える人がいたことです。会社名からネガティブなイメージが連想されることに気付いたジェフ・ベゾスは、直ぐに会社名の変更作業に着手します。会社登記の完了後に、会社名の変更を即座に決断することは容易ではありません。ましてやドメイン名を取得し、関係者や協力者とネットワークを構築した後では、到底躊躇してしまうでしょう。しかしカダブラはインターネット企業ということもあったため、会社名の候補となったドメイン名を取得しつつ、他の候補からも選考したようです。このとき候補に挙がった会社名は、「awake.com」「 browse.com」 「bookmall.com」「aard.com」「relentless.com」 などです。実は、これらのドメイン名のうち、「awake.com」「 browse.com」「 relentless.com」をURLとして入力すると、今でもアマゾンのウェブサイトが表示されます。また、「bookmall.com」というドメイン名はアマゾンのウェブサイトへ転送されないものの、アマゾンが現在も所有しています。
その後、会社名に「A」から始まる単語を探していたこともあり、辞書から「アマゾン川」という単語を見つけ、1994年11月1日に、amazon.comというドメイン名を取得しました。ジェフ・ベゾスはアマゾン(世界最大級の川)というネーミングが気に入り、直ぐに会社名の変さらに至りました。会社登記をしてから、わずか4ヶ月のことでした。
商標によるネーミングの保護
アマゾンは社名変更後、直ぐに「AMAZON」「AMAZON.COM BOOKS」「AMAZON.COM WAREHOUSE BOOKS」「IF IT’S IN PRINT, IT’S IN STOCK」などの商標登録を出願し、その後3年間で計15件もの商標登録を出願しています。その中には、1997年2月18日に出願された商標「ALEXA(アレクサ)」もあります。「Alexa」は現在、スマートスピーカーのアマゾンエコーに搭載される人工知能のネーミングにも使用されています。
アマゾンは自社ブランドの保護に力を入れており、他社が、アマゾン所有の商標権と似ているネーミングを商標登録しようものなら、徹底的に戦いを挑んでいます。近年では、他社の「Amazern」「FireFix」「AmazonCurtains」「FIRECHAT」「Kintab」「skindle」「amazee」などの商標登録の防止に成功しています。
一方、アマゾンの商標「FIRE」「prime」の登録に対し、商標権を有する他社からの抵抗にあったりもしています。
商標権は、ブランドの起点であり、ブランドを確立するための法的な拠り所になります。商品名、サービス名としてネーミングを使用する際には、まずは商標登録しておくことが非常に重要となります。
ロゴの変遷
アマゾンのロゴは、事業の成長やデザインの流行とともに数年ごとに変更しています。以下に、その変遷を示します。有名な話ですが、アマゾンのオレンジ色の矢印は「A」→「Z」を示してます。これはアルファベットの始端から終端までを指し、幅広く商品を取りそろえるという意味が込められています。
スタートアップ・ベンチャー企業の、商品・サービス・会社の名前
スタートアップ・ベンチャー企業が、事業に使用するネーミングで気をつけることは何でしょうか。答えは簡単です。オリジナリティのあるネーミングで、他社の商標権を侵害しないことです。オリジナリティがあるかをチェックする簡単な方法は、トップレベルドメインの .comや .jp でドメイン名の空きがあり、ネット検索の検索結果数が非常に少ないことです。
他社商標権の有無は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で検索することができます。
商標権については専門的な知識と認識が求められます。気になることがある場合には、知財の専門家である弁護士や弁理士に相談することが大切です。
当社が提供する“AIを活用した商標登録”
当社では、独自開発のAI技術を使ったオンライン商標サービス「Cotobox」、昨年11月からベータ版を公開しています。
思いついたネーミングを、検索画面で検索することで簡単に同じ又は似ている登録商標が存在しているかをチェックすることができます。また、わかりにくい商品やサービスの区分も、自分の商品・サービス内容を入力するだけで簡単に検索することができます。特許庁手続きは提携弁理士に依頼するだけ、依頼後の情報交換はすべてCotoboxプラットフォーム上に記録され、いつでも確認することができます。徹底した定型業務の自動化により、リーズナブルかつシンプルな料金体系を実現。ぜひ、お試しください。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 五味 和泰氏
(cotobox株式会社 代表取締役/はつな知財事務所 代表)
早稲田大学理工学部卒。南カリフォルニア大ロースクール卒。
弁理士。自らベンチャー企業を立ち上げ、オンライン商標サービスを提供。今まで知的財産権に縁がなかった中小企業・小規模事業者に対して知財サービスへのアクセスの容易化を目指している。