「お徳用」は本当に「お得」?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
「誰に、何を、ど うやって、いくらで売るのか?」。単一商品や単一サービスの価格から少し視野を拡大して、価格戦略全般に話題を広げましょう。

 

「スタンダード」と「お徳用」

  よく「お徳用○○」などと銘打った商品がありますよね。あれは何がお得なのでしょう?「スタンダードの商品に比して、値段の割には中身が多い」。だいたい そういう感じだと思います。3個入り500円の商品があるとします。それを2パック購入すれば1000円です。が、6個入り700円というパックを新たに 登場させれば、こちらが「お徳用」と呼ばれる商品になります。その商品が一定期間で消耗することがわかっている場合、「お徳用」にひかれる消費者は少なく ありません。 

 では、こんな違いだったらどうでしょう?スタンダードは同じく3個入り500円。一方、「お徳用」は4個入り600円。あ なたはこの「4個600円のお徳用」と「6個700円のお徳用」のどちらに魅力を感じますか? それとも「3個500円のスタンダード」でいいですか?

  という質問には、実はあまり意味がありません。それはあなたがどういう人なのかによって答えが変わってくるからです。どういうライフスタイルの人か、どの くらいの可処分所得がある人か、どの程度のサイクルで買い物に出掛ける人か……。もっと細かく言えば、その商品を保管するスペースをどう設けているのか、 などによって選択基準が変わります。

 正解は、狙う相手によって異なります。むしろ「3個ですら多いんだけどなあ」という人を狙うのであれ ば、2個400円とか1個300円とかの「お損用」のほうが好ましいかもしれません。

 

本当は増量イコール価格上昇、ではない

  さて、そうした「誰に売るのか?」論は いったん置いておき、今回頭に入れてほしいことは、同一製品であっても、分量やサイズが異なれば価格は異なるという「事実」です。

 「そん なの当たり前でしょ」と思いますか?思いますよね?

 でも、この当たり前が大事なのです。むしろ、当たり前と思ってもらえるからこそ、同一 製品であっても、分量やサイズを異ならせるだけで、価格も異ならせることが可能になるのです。

 「えっ?可能も何も、分量が増えれば原価も 増すんだから、価格も上がって当然では?」と思われますか?別に当然ではありません。原価が上がっても利益を縮小すれば、価格を維持することは可能です。 また、原価が上がっても他のコストを抑制できれば、価格を上げなくても利益をキープすることも可能なのです。

 しかし、「量が増えれば価格 も上がる」が世の常識なので、それを逆手に取り、増えた分量に比して価格の上昇幅を抑えておけば、消費者は「お得だ」と感じてくれるのです。

  この事実をより戦略的な観点で言えば、同一製品であっても、分量やサイズと価格とを異ならせることで、新たな価値を市場に提供できるということです。言い 換えれば、新商品を開発・製造せずとも、新価値を提供できるのです。これによって従来獲得できていなかった層に手が届いたり、競合商品に流れそうな従来客 を囲い込めたりできるのです。

 

低価格戦略には異なる二つの目的がある

  さて、あらためて「お徳用」ですが、これは言ってみれば低価格戦略の導入です。もっとも低価格戦略を導入する企業の目的は大きく二方向に分かれます。

  一つは、「お得感」の魅力で顧客数をキープしつつ、商品1個単位当たりの利幅を抑えても、数を多く早く出荷・販売することで保管コストや梱包コスト、物流 コスト、販売コストなどを引き下げ、結果的に、事業全体としての利益を上げるという狙いです。「お徳用」という場合、概してこの目的が主流でしょう。

  もう一つは、一定期間、利益を下げてでも(時には放棄してでも)、その製品の市場シェアをがっちり獲得し、競合を排除しようとする狙いです。携帯電話市場 などでこうした戦略が見られますね。かつてはファストフード市場がそうでした。また、日用品や食品のなかには、価格をスタンダード商品と同じにしたまま 「お徳用」ということで内容量を増量するケースもあります。これもシェア対策です。

 つまり、低価格戦略の裏には、コストダウン型の利益追 求モデルとシェア奪取型の利益追求モデルとがあるということです。前者の場合の価格決定は、自社の従来品よりも数量や品質がアップしたうえで割安であるこ とがポイントになります。後者の場合は、競合よりも劇的に安いことがポイントになります。価格の決め方は戦略目的によっても変わってくるものです。

 

従来品を「イケてない商品」に見せる作戦もある

  ちなみに「お徳用」が定着す ると、それがいつしかスタンダードになったりします。乾電池がそうですよね。昔はどこでも1本単位で購入できたのですが、今では単3電池などは4本セット や6本セットが常識化しています。

 割安の「お徳用」を常態化することで、販売効率や利益率の悪い小量モノや低単価モノを「ダメ商品」と消 費者に思わせ、売り場から消してしまうこともできるのです。

 こうした入れ替えを意図的・周期的に行う企業もあり、専門的にはそうした戦略 のことを「計画的陳腐化」と言います。「お徳用」が「新しい」だの「よい」だのと大騒ぎせず、自然に従来のものを「古い」「悪い」と感じさせる作戦です ね。

 

「お徳用」作戦は価格戦略+αで成就する

 もっ とも「お徳用」で成功を収めるためには、「価格をどう付けるか」だけを考えても意味はありません。内容量の変更やそれに伴うパッケージの変更も必要ですか ら、商品戦略とも密接ですし、また、従来品とサイズが異なるのなら陳列棚にどう配置するのかなど、流通戦略とも結び付きます。さらには、お徳用を発売して いることを知ってもらうためのさまざまなプロモーション戦略も必要になります。まさに「どう売るのか?」の知恵を総結集しなければならないのです。

 あ らためて、量と価格の「常識」を活用せよ!

 今回は、いろいろな事柄に触れたので要点を再度確認します。

 消費者は 分量やサイズが増すほど(サービス業であれば時間が長くなるほど、あるいは人手が増えるほど)、商品の価格は上がってしかるべきと思っているものです。そ の常識を逆手に取った「値付け」もできる、ということです。

 

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