経費を学べばいいことが待っている

会計・ファイナンス

執筆者: 李 顕史

「これは経費にできるのかな…」と思ったものについて、自分の判断で経費にしてしまうと、税務調査で指摘されかねません。しかし経費に入れることができるものについて経費にしないと、みすみす節税のチャンスを逃すのももったいないことです。

どこまで経費なの?と経営者誰もが悩みますし、使ったお金は経費にしたいのが人情で、そこで今回は経営者からの質問が多い次の4つの項目を取り上げて、経費に入れてよいかの判断基準を簡単に説明します。


自宅を事務所としても使っている場合、家賃は経費に入れるという質問はほぼ必ず聞かれます。原則は「売上に関係」したものは「経費」に入れることができる、というものがあります。

「自宅」にかかる費用   ⇒ 売上とは関係がない   ⇒ 経費にできない
「事務所」にかかる費用  ⇒ 売上と関係あり     ⇒ 経費になる

それでは、「自宅兼事務所」の場合はどうでしょうか。
個人事業主の場合と、会社の社長の場合で少し取り扱いが異なります。

1-1.個人事業主の場合

ア.売上に関係ある部分と、ない部分が混在する費用のことを「家事関連費」といいます。

「自宅兼事務所」にかかる費用も、「家事関連費」にあたります。家賃のほか、電気代、水道代、ガス代など光熱費のほか、電話代やインターネット料金などもそうです。
そして、この「家事関連費」のうち、経費になる金額は、「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合」のその「区分できる金額」とされています。

イ.どのようにして金額を区分(=家事按分)しているのでしょうか。

家賃の場合、仕事に使っている面積の割合で按分するのが一般的です。2階建て店舗兼住宅で、1階が店舗といった場合は、比較的簡単に按分できますよね。ただし同じフロアで仕事場とプライベートの場所が分かれていないような場合は注意が必要です。パーテーションなどで明確に区切り、明確に分けておくのが理想です。

また、ワンルームマンションの場合は、面積でなく使用時間で按分をする人もいます。使用時間を明確に区切って計算するという方法ですね。

いずれにしても、「明らかに区分」できているものでなければ経費として認められないので、注意してください。

1-2.会社経営者の場合

ア.社長名義で賃借している場合

「会社」と「社長個人」は別になるため、社長個人名義で賃貸借契約をしている場合、家賃は会社の経費にはならないのが原則です。

会社の経費とするためには、事務所として利用している部分について会社と社長の間で賃貸借契約(転貸借契約)を結び、会社が社長に家賃を支払う必要があります。この場合の事務所部分の区分は、個人事業主の場合と同様に面積按分などの合理的な方法によるものとします。

イ.会社名義で賃借している場合

「会社」が直接大家さんと賃貸借契約を結んでいる場合は、支払っている家賃は経費になります。そして、社長が会社に自宅部分の家賃を支払うことになります。

ただし、社長が会社に支払うべき最低限度の家賃の金額は、少し複雑な計算方法になりますので、税理士などの専門家に相談して下さい。

個人事業主法人
寝室などの部分は経費として認められない。仕事で使う場所を明確にしたら、一部経費にすることもできる。賃借物件の契約者が社長か会社により扱いが異なる。いずれにしろ、面積按分などの計算が必要。

2.税金でも経費になるものがある!

2-1.経費にならない税金のパターン

税金には、経費にできないものがあります。パターンは主に3つあります。

① 所得に対して課される税金
② ペナルティとして課される税金
③ 業務に関係のない税金

具体的には、主に次の3つです。支払はあるのに、経費には出来ないのです。

① 法人税 / 地方法人税 / 所得税 / 住民税
② 各種加算税 / 延滞税 / 過怠税
③ 相続税 / 贈与税
などです。

その他、交通違反の罰金など経費になりません。罰金はペナルティなのに、経費にするのはおかしな話であるという考えにもとづきます。

2-2.経費になる税金

経費になる税金もあります。
固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税、自動車取得税、軽自動車税、自動車税、重量税、軽油引取税、事業所税、事業税、消費税(税込経理処理を採用している場合)、法人税額から控除されない所得税

税金の種類に目がくらみそうです。細かいことは税理士など専門家に確認した方が無難です。

3.習い事やスポーツジムは経費になるか?

習い事やスポーツジムにかかる費用は、経費になるのでしょうか。結論から言うと、個人事業主や社長一人しかいない会社では、難しいでしょう。

3-1.将来の売上につながるという理由で、経費にできないか?

ア.たとえば、個人商社を営んでいる人が、業務の幅を広げるため中国での取引を視野に入れて中国語の会話スクールに入る、という場合に、そのスクール代金は経費に入るでしょうか。具体的に中国進出を考えており、その代金の価格が常識的なものならば、研修費などの経費にすることができると考えて良いでしょう。

それでは、イラストレーターが、何かしらの役に立つかもしれないといって、宅建の資格を取るための学校へ行くといって、その費用を経費にすることはできるでしょうか。この場合は業務との関連性はないため経費とすることはできないでしょう。

両者の結論の違いは、「業務との関連性が合理的に認められるか」という点にあります。中国語を習うことで商社の業務の幅が広がるということには一定の合理性が認められます。しかし、宅建の資格をとったからといって、イラストレーターの業務の幅が広がるとは、直接的には考えづらいです。

3-2.福利厚生費とすることはできないか?

それでは、習い事やスポーツジムの代金を、福利厚生費として経費にすることはできるでしょうか。
福利厚生は従業員のためのものであり、社長や事業主が利用できないわけではありません。スポーツジムの場合も同じです。

しかし、実態をしっかりみて判断した方がよいです。つまり、利用しているのが社長や事業主あるいはその家族ばかりだと、プライベートの個人的な支出とみなされます。

現実的には、一人社長の会社や個人事業主が、習い事やスポーツジムの費用を経費にすることは難しいといえるでしょう。

業務と関連のある支出なら経費として認められる。ただし、業務と関連のないプライベートな支出は認められない

4.社会保険料と国民健康保険・国民年金の処理は会社と個人で違う

社会保険料と国民健康保険・国民年金の処理は、会社と個人事業主で、それぞれどうなっているのでしょうか。

4-1.会社の処理

従業員を雇っている場合、従業員にかかる社会保険料の会社負担分は、会社の経費にできます。
従業員個人の負担分は、従業員の給与から天引きします。
なお個人事業主も従業員が5人以下の場合は、社会保険に加入することができます。しかし従業員5人以上雇用している個人事業主は少ないのが現状です。

4-2.個人事業主の場合

個人事業主の場合は通常国民年金と国民健康保険に加入することになります。市区町村の窓口で加入手続をすることができます。個人事業主自身の国民年金・健康保険は、事業の経費とすることはできません。確定申告において、社会保険料控除などの所得控除の制度で対応することになります。

法人個人
半分は従業員負担で、半分は会社負担。会社負担分は経費として計上可事業の経費とはならず確定申告時に所得控除で対応

最後に、こんな質問も多いのです。領収書をもらい忘れた場合はどうするか?です。

領収書がもらえない場合、もらうのにも躊躇する場合があるかと思います。たとえば冠婚葬祭や初詣でお守りを購入した場合です。
一般に領収書をもらうのになじまないものはなくても構いません。その代わり代金を払ったことを証明する帳簿をきちんとつけてください。また領収書をもらい忘れた場合でも経費として計上可能です。これは法人・個人事業主は問いません。交通費でも電車で一駅140円分の領収書は必ずしも必要ないのです。
ただし、いつでも、もらい忘れたというのは経費として認められません。領収書がなくても経費として支出したことにしたことは粉飾決算で悪質な不正です。不正の場合は、税務調査時に、重加算税として重いペナルティを課せられる場合もあります。領収書がない支出は、どのようなものに使ったかはちゃんと記録を残しておきましょう。

領収書がなくても経費として構いません。ただし記録はきちんと残しておきましょう

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 李 顕史氏
(李総合会計事務所 代表)

大手監査法人の金融部所属経験を持ち金融機関に対しての会計監査経験が豊富。
2010年に独立し李総合会計事務所の代表として起業を志す方に対しての多くの支援を行う。
大企業の監査経験を基にした知識の豊富さと、実行支援まで行う実行力の高さで相談者からの信頼も厚い。また、大手ネットメディアなどで豊富な執筆経験を持つ。

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