Vol.1 フリンジ・ベネフィット~源泉所得税での節税ノウハウ

会計・ファイナンス

執筆者: ドリームゲート事務局

起業したてのまだ無名の会社に、良い社員を雇い入れるのはなかなか難しいものです。ベンチャー企業に参画してくれる社員というのはとても貴重で、彼らは金銭的なメリットや生活の安定よりも、経営者の情熱やヴィジョン、理念に共鳴し、会社の未来を信じているからこそ、やってきてくれるといえます。

ベンチャーの経営者としては、そんな社員に少しでも応えたいと思うのですが、余裕のないことがほとんどではないでしょうか。そんな時に、単純に給与を増やす以外に、少しでも社員に得をしてもらう便利な方法があります。

とにかく難しくて敬遠しがちな税務・税金の話ですが、このコラムでは税金の仕組みを使って社員が喜ぶ、金銭的にメリットになるような方法を、出来るだけわかりやすく紹介したいと思います。

1.フリンジ・ベネフィット

起業時はあまり資金面で余裕がないことが多いのですが、お金を使わずに
・社員の一体感や帰属意識を高める
・モチベーションも向上させる
フリンジ・ベネフィットという方法を紹介します。

フリンジ・ベネフィットとは、例えば、
・出張手当
・残業食事代
・社員旅行
などの“給与以外の経済的利益”を言います。

フリンジ・ベネフィットの税務上のメリットは、給与と違い、所得税がかからない非課税である点です。つまり、フリンジ・ベネフィットの方が、給料よりも社員の手元に多くの現金が残るのです。

具体的な例でみると、
・給与で月額30万円
・給与で月額20万円と、フリンジ・ベネフィットで月額10万円
のケースを比べると、所得税・住民税の合計が、前者は約22万円、後者は約10万円となり、年間で約12万円の差がつきます。

会社が支払う金額は同じなのに、社員の手元に残る現金は、毎月約1万円も違ってくるのです。

そのため、その分だけ給料を少し押さえるような制度設計も可能です。

2.源泉所得税の仕組み

 1)原則 源泉所得税は、源泉徴収税額表にしたがって計算した所得税を給料から源泉徴収し、給料を支払った翌月10日までに、所轄の税務署に立替納付します。

2)特例納付
10名未満の会社の場合、所轄の税務署に届出を提出することで、
・1月~6月までに支払った給与 ⇒ 7月10日までに源泉所得税を納付
・7月~12月までに支払った給与 ⇒ 1月20日までに源泉所得税を納付
というように、半年分をまとめて納付できます。

つまり、特例納付にすれば、半年ごとに所得税を支払えば良いので、毎月支払うよりも資金負担は楽になります。ただし、きちんと資金を確保していないと、まとめて半年分を支払う事が逆に辛くなることもあるので注意が必要です。

3.トリプル・パンチ

なぜフリンジ・ベネフィットが源泉所得税と関わってくるのか見ていきましょう。

実は、税務調査が行われると、約4件に1件は源泉所得税で指摘を受けると言われています。

フリンジ・ベネフィットは、税務調査において給与として認定されるリスクが大きいためです。

そして、給与と認定されると、様々な問題が出てきます。

まず、源泉所得税が徴収されていたので、延滞税が会社に課されます。

そして、源泉所得税分を従業員から徴収すべきですが、給料を支払ってから数年たっていると、今さら従業員に言えない場合もあります。そうなると、会社が源泉所得税分を負担することになります。

さらに、経費であるフリンジ・ベネフィットが給与と認定となるとされると、消費税から控除できなくなる場合があります。

つまり、給与認定されると、
・延滞税を支払う
・源泉所得税分の負担をしなければならない
・消費税の仕入控除ができなくなる
というトリプル・パンチとなり、節税のつもりが逆効果になるリスクもあるのです。

では、税務調査で指摘されないためのフリンジ・ベネフィットの支給方法を見ていきます。

4通勤手当

給与とは別に電車やバスを使った場合、月額15万円までは、通勤手当を非課税で支給できます。
マイカーや自転車などでの通勤の場合も、距離に応じて決められた限度内であれば、非課税になります。

ただし、オフィスのすぐそばに住んで働いているケースでは、
・2km以内の自動車通勤や、
・2km以上でも徒歩通勤の場合
いくら通勤手当を出しても非課税にならないので、給与として源泉所得税も徴収しなければなりませんので、気をつけてください。

5.出張手当

通常、出張すれば交通費や昼食代、宿泊代を実費精算するのが原則です。

しかし出張が多場合は、都度、出張精算に時間を取られて大変ですね。

そこで、旅費規程で定めた合理的な出張手当ならば、いちいち実費精算をしなくとも経費として認められます。

例えば、
・出張手当6,000円に対し、交通費と弁当代を4,000円しか使わなかった
・宿泊手当9,000円に対して6,500円のホテルに泊まった
これらの差額について従業員に課税されることはありません。

しかも、この出張手当は従業員だけではなく、何かと規制の多い役員であっても適用されます。

ただし、旅費規程がなければ、従業員の給与と認定されてしまいますので注意が必要です。

6.残業食事代

起業時は、徹夜の連続でビジネスを立ち上げる等、ベンチャーに残業はつきものです。

そこで、頑張って残業している社員に、食事を提供してはどうでしょうか?
会社は、残業食事代として損金に計上することができます。
ただし、
・特定の役員だけが対象
・金銭で支給する場合(実費精算)
このような場合は給与と認定されてしまいますので、気をつけてください。

さらに、深夜勤務者(午後10時から翌日の午前5時まで)には、現金支給が300円まで非課税で認められていますので、利用してみてください。

7.渡切交際費

起業したては、社長自ら営業マンとなり、得意先と“飲みニケーション”といった機会も多くなりがちです。

そんな不意の支出に備えて、予めまとまった金銭を社長に渡しておくこともできます。

しかし、後日精算されなければ、交際費ではなく給与と認定されますので、領収書の精算は、きちんと行ってください。

8.福利厚生費(社員旅行)

起業して、ある程度ビジネスが軌道に乗ってくれば、社員の苦労に報いつつ、コミュニケーションをより密にするのにお奨めの方法のひとつが、社員旅行です。

しかし、社員旅行も、税務上の要件を備えていないと、社員への給与と認定されてしまいます。

社員への給与と認定されないためには、
・全社員を対象とし、旅行に参加する従業員が、全従業員の半数以上であること
・一人10万円までとする
・旅行期間は、現地4泊5日以内とする
ことが必要です。

9.最後に

起業時は、どうしても重労働となりがちです。 しかし、社員も生身の人間です。経営的に無理をせず、かつ少しでも社員のモチベーションをアップさせる、金銭的に報いる方法は他にもあります。このコラムでご紹介した方法以外にも、様々なパターンが考えられますので、専門家に相談してみることをおすすめします。

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