Vol.18 上場に備えて社内管理体制を整備!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
上場審査で主幹事 証券会社と証券取引所に確認されるのは大きく分けて、業績動向と社内管理体制の整備状況です。業績についてはどの企業も売り上げ・利益を上げようと日々活 動をされていると思いますが、社内管理体制については未公開企業は後回しになっていることが多いです。売り上げ・利益を上げるためだけの人員増強で手一杯 となり、管理部門までコストをかけられないという現実は十分理解できます。しかし、株式公開を行い上場を目指すためには業績だけでなく、適切な社内管理が 必須事項となります。 社内管理体制の整備といっても、何から手をつけてよいのか分からないというお話しをたくさんいただきます。今回はその「社内管理体制の整備」について触れ ていこうと思います。

社内管理体制の整備項目

 社内管理体制の整備といっても、その 項目は多岐にわたります。よって、ここでは主要な項目しか確認できませんが、まずはなぜ社内管理体制の整理が必要なのか再確認します。

・  日常業務に内部牽制機能を持たせ、不正やミスが生じない体制を整え、会社の利益を流出させないようにする。
・ 継続企業として会社が特定の役職員 に依存することなく、継続し続けるように組織として日常業務を遂行できるようにする。
・ 上場企業として必要な情報開示を適時・適切に行えるよう にする。

 これらは最終的には「投資家に不測の損害を与えないようにする」ためといえます。株式を上場させるということは、広く投資家を募 り資金を預かることですので、上場審査のすべての項目はこの目的のためといえます。これらの基本的な考え方に基づいて、以下の項目を今回と次回に分けて、 確認していきます。

1、社内規程の整備
2、経理(主計)部門と財務(出納)部門の分離
3、取締役会の適切な運営
4、 内部監査の実施
5、予算実績管理
6、その他の整備項目
 

1、社内 規程の整備

 社内規程の整備は、日常業務の運営を属人的な運用方法から組織的な運用ルールに移行させるために必要となります。例えば、責 任と権限の範囲を明確にする、指揮命令系統を明瞭にする、日常業務を内部牽制機能を有した標準的なものにする、などのために整備します。また、規程集やマ ニュアル化を進めることにより、日常業務のノウハウが文書化され、たとえ特定業務の担当者が退社して新しい担当者になっても、その規程やマニュアルを読む ことにより業務に支障が生じないようにすることが可能となります。

 一般的に作成が必要となる社内規程は以下のとおりです(業種により作 成すべき規程が異なります)。

○ 基本規程:定款、取締役会規程、監査役会規程、監査役監査規程、株式取扱規程、規程管理規程など
○  組織規程:組織規程、業務分掌規程、稟議規程など
○ 業務規程:経理規程、販売管理規程、購買管理規程、予算管理規程、内部監査規程、外注管理 規程など
○ 人事労務規程:就業規則、給与規程、育児休業規程、人事考課規程、退職金規程など
○ その他規程:印象管理規程、文書管理規 程、情報管理規程など

 社内規程を一とおり作成できましたら、役職員に日々規程とおりに業務を遂行するように説明し、業務を運用しなければな りません。また、役職員が規程やマニュアルとおりに業務を遂行しているか否かは、次回ご紹介する社長直属の内部監査室により監査することになります。
 

2、経理(主計)部門と財務(出納)部門の分離

 この経理部門と財務部門の分離は、上場準備項 目のイロハの「イ」といえる項目です。

 一般的に経理部門では日々の取り引きの記録を会計帳簿に記帳する業務を行い、財務部門は取り引きに 応じて銀行口座などの資金を動かす業務を行います。これら二つの業務を一人の担当者が行うと不正が行われる可能性があり、また、その不正を発見できない可 能性が高まります。

 例えば会社の銀行口座から1000万円を出金したにも関わらず、その出金した取り引きを会計帳簿に反映させず、自分の 口座に振り込んでしまうなどの不正ができてしまいます。会計帳簿も銀行口座も一人の従業員が担当していれば、誰もその不正に気づきません。このような不正 が行われないように上場準備に際しては、経理部門と財務部門を分けるように指導されます。

 経理部門と財務部門を分けることにより、それぞ れの担当者が最低二名は必要になります。経理担当者が取り引きに応じて出金伝票を起票し、それを財務担当者に渡します。財務担当者はその伝票のとおりに資金 を動かし、動かした結果を経理担当者に報告します。経理担当者はその処理をチェックします。このように社内でそれぞれの担当者が互いに牽制し合う「内部牽 制機能」を上場会社は備える必要があります。

 この「内部牽制機能」は経理部門と財務部門だけではなく、資材等を購入する購買部門や、社内 用の備品などを購入する総務部門などにも備える必要があります。

 よく「二人が共謀したらどうするんですか?」と上場準備をお手伝いしてい る時によく聞かれます。確かに「内部牽制機能」と言っても牽制し合っているはずの二人が共謀すると、まったく機能しなくなります。そのために次回ご紹介す る内部監査という機能があるのです。

 3、取締役会の適切な運営・4、内部監査の実施・5、予算実績管理・6、その他の整備項目について は、次回ご紹介します。

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