起業・経営FAQ:オーナー非常駐型BAR運営における店長マネジメントと運営管理の留意点についておしえてください。

この記事は2026/02/26に専門家 渡辺 亨 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局


オーナー非常駐型BAR運営における店長マネジメントと運営管理の留意点について

ポイント/結論

Q. オーナー非常駐型BAR運営における店長マネジメントと運営管理の留意点を教えてください

  • 店長の残留が事業価値の大部分。買収交渉時に残留意思と処遇を最優先で確認すること。
  • 「任せる範囲」と「握る範囲」を明確に線引きし、現場判断と経営判断を区別する。
  • 深夜営業では法定割増賃金(25%以上)と36協定が必須。労務リスクを事前確認。
  • クラウド勤怠管理+防犯カメラで遠隔から透明性を確保し、不正を防止。
  • 買収後3〜6ヶ月は週複数回の現場確認で仕組みを確立し、徐々に関与度を下げる。

渡辺 亨

この質問への回答者

渡辺 亨(わたなべ とおる) 中小企業診断士・米国CRM認定コーチ

株式会社リノヴェクス代表。「自分らしい事業創造と実践支援」を強みに、起業コーチング、事業承継、新規事業開発まで幅広く対応。自身の起業失敗経験と300件超の経営者コーチング実績を活かし、「事業はあなた自身の表現」という視点で成功確率を高める伴走型支援を提供している。

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質問

現在、M&AによりBAR店舗の取得を検討しています。買収後はオーナーとして経営判断には関与するものの、日常オペレーションについては現場に常駐せず、店長を中心とした運営体制を想定しています。

深夜営業を伴う業態でもあるため、スタッフ管理や勤務体制の設計について、事前に整理しておきたいと考え、ご相談させていただきました。

特に以下の点について、一般的な運営管理の観点から教えてください。

  • 店長へどこまで裁量を委ねるべきか
  • 固定給+手当など給与設計の考え方
  • 深夜営業におけるシフト管理の留意点
  • オーナー非常駐体制での勤怠把握方法
  • スタッフとのトラブルを防ぐためのルール整備

副業的な関与度を想定しているため、現場に任せつつも運営品質を維持できる体制づくりのポイントについてアドバイスをいただけますと幸いです。


専門家による回答: オーナー非常駐型BAR運営における店長マネジメントと運営管理の留意点について (回答者:中小企業診断士・米国CRM認定コーチ 渡辺 亨氏)

回答者
渡辺 亨
渡辺 亨(わたなべ とおる)
中小企業診断士・米国CRM認定コーチ 株式会社リノヴェクス代表
「自分らしい事業創造と実践支援」を強みに、起業コーチング、事業承継、新規事業開発まで幅広く対応。自身の起業失敗経験と300件超の経営者コーチング実績を活かし、「事業はあなた自身の表現」という視点で成功確率を高める伴走型支援を提供している。

ご相談内容を拝見いたしました。M&AによるBAR取得後、オーナー非常駐体制での運営をお考えなのですね。それでは、ご質問に合わせて、押さえるべき主要なポイントを整理してお伝えしたいと思います。

【前提】BARのM&Aでは「店長の残留」が事業価値の大部分

ただ、ご質問にお答えする前に、BAR事業の買収に関して、前提として認識しておいたほうがいいことがあると思いますので、まずそれをお伝えいたします。

それは、BARのM&Aでは「店長の残留」が事業価値の大部分だということです。なぜなら、常連客との関係性、仕入先との信頼、スタッフの統率力は店長個人に紐づいていることが多いからです。買収で店長が離職するとたいてい売上が急落します。

買収交渉時に店長の残留意思の確認と処遇や条件のすり合わせを最優先で行い、残留できなさそうな場合は買収しないほうが得策です。

それではご質問への回答に移らせていただきます。

1. 店長への裁量委譲範囲

この点については、実際にこれまでどのような権限と責任が店長に与えられていたかをベースに検討をスタートするのが現実的です。これまで問題なくうまく回ってきたのであれば、事業承継直後はあまり変えず、少し期間を経てからさらにどう改善できるかを検討するようにするとよいでしょう。

以上を前提としてではありますが、一般的な権限移譲の基本的考え方もご紹介します。まず、店長は現場運営者、オーナーは経営責任者ですから、以下のように「任せる範囲」と「握っておく範囲」の線引きをするのが良いでしょう。

■店長に委ねる領域(現場判断関連)

  • シフト作成・調整
  • アルバイトの面接・採用一次判断(要オーナー承認)
  • 日次の売上・現金管理
  • 日常的な仕入判断(各商品ごとの月次予算枠内)
  • 接客対応・クレーム対応

日常的な仕入れについてですが、既存の仕入れ項目にないものなどを購入すべき場合が生じることがあります。その場合は、「金額基準」を作って店長に任せるという方法があります。例えば「1回あたり○万円以内であればOKだが、それ以上の支出はオーナー承認が必要」といったルールです。

■オーナーが決める領域(経営判断関連)

  • 給与改定・賞与支給
  • 人員増減・正社員採用
  • メニュー内容・価格改定
  • 設備投資・内装変更
  • 月次予算を超える仕入れ・支出

2. 給与設計の考え方

繰り返しになりますが、買収前にどのようになっていたかを基準に考えるのが前提です。その上での原則をご紹介しますが、BAR店長の給与設計を行う場合は、「責任の重さ」と「拘束時間の長さ」の両面を考慮すると良いでしょう。また、インセンティブを付けられるようにすると、意欲の向上につなげることができます。以下は一例です。

給与構成例:

  • ①基本給(月額固定)
  • ②役職手当(店長職としての管理責任に対する対価)
  • ③深夜勤務手当(22時〜翌5時は法定で25%以上の割増が必須)
  • + 業績連動賞与(売上目標の達成度に応じた変動報酬)

店長の残業代も考慮しておきましょう。店長を「管理監督者」という扱いにして深夜割増以外の残業代を支払わないケースがありますが、小規模BARの店長は実態として管理監督者に該当しない可能性が高いです。なぜなら自ら接客・調理を行い、出退勤の裁量も限定的だからです。オーナーには残業代の支払い義務があると思ってください。買収前に現行の給与体系と実態を確認し、必要に応じて労務の専門家に相談することもお勧めします。

業績連動賞与に関しては、例えば客単価やリピート率などの目標値を設定し、それを達成できた度合いによって変動するようにしておくと、モチベーションアップにつながります。

3. 深夜営業におけるシフト管理の留意点

まず、深夜営業では、以下の法令対応と労務リスク管理が不可欠であることは前提として認識しておきましょう。

■法令上の必須事項

  • 22時〜翌5時の深夜割増賃金(25%以上)の適用
  • 18歳未満の深夜勤務禁止
  • 週1日以上の法定休日の確保
  • 月間残業時間の上限管理(36協定の締結・届出)

また、シフト管理の留意点には以下のようなものがあります。

■シフト管理の留意点:

  • 終電後勤務が特定のスタッフに偏らないよう、シフト表で可視化すること
  • 連続勤務日数の上限を設定すること(6日連続を上限とするのが一般的)
  • 閉店作業後の帰宅手段(タクシー代支給等)のルールを明確にすること
  • 「ワンオペ営業」の可否と条件を事前に定めておくこと(防犯・安全面)
  • 長時間労働が常態化しないよう月間労働時間を可視化すること
  • 店長の過重労働を防止すること

深夜帯の営業は労基署の調査対象になりやすいです。前オーナー時代の未払い残業代や36協定未届出といった潜在リスクを引き継がされてしまったことにM&A後になって気づくことにならないよう、デューデリジェンスの段階で労務関連の帳簿(出勤簿・賃金台帳)を事前確認しておくことが重要です。

4. オーナー非常駐体制での勤怠把握方法

非常駐オーナーとして遠隔地から勤怠把握をするためには、クラウド型勤怠管理システム(例:KING OF TIME、ジョブカン等)の導入が現実的です。スマホ打刻やGPS打刻に対応しており、リアルタイムで出退勤を確認でき、不正打刻も防止しやすいです。

クラウドシステムと合わせて、防犯カメラ映像でリアルタイム確認ができるようにしたり、映像をクラウド保存できるようにしておいて後で確認ができるようにしておくのも良いでしょう。

また、勤怠以外に関しても、オーナーとして現場の状況を把握できるような仕組みを作っておく必要があるでしょう。例えば、以下のようなことができます。

  • 日次売上報告(LINEやチャットツールで毎営業日終了後に報告)
  • 週次の店長ミーティング(オンラインで30分程度)
  • 月次棚卸しの実施と報告(原価率の異常検知)

不正防止の観点からは、特にBARは現金商売ですので、売上と在庫の整合性チェックが重要です。POS導入済みであればPOSデータと現金残高の突合、未導入であれば日次の売上伝票と仕入記録の照合ルールを設けてください。ツケや立替えの禁止といったルールも明確にしておきましょう。

「信頼して任せる」ことと「オーナーが検証して管理する仕組みを持つ」ことは矛盾しません。監視ではなく透明性の確保をしているのだと考えて、ここをおろそかにしないようにしましょう。

5. スタッフとのトラブルを防ぐためのルール整備

BAR特有のトラブルリスクを踏まえ、以下の文書を整備しておくことが必要でしょう。

■最低限整備すべき書類

  • ①雇用契約書(労働条件通知書):
    勤務時間・給与・休日・試用期間を明記。法律上の義務でもあります。
  • ②就業規則:
    常時10人以上雇用する場合は作成・届出義務がありますが、10人未満でも作成を推奨します。ベースとなる内容がネットで入手可能です。
  • ③シフト運用ルール:
    提出期限、変更・交代の手続き、当日欠勤時の連絡方法
  • ④金銭管理ルール:
    レジ締め手順、釣銭準備金の管理、売上金のチェック・保管・入金ルール等
  • ⑤接客・サービス基準:
    お酒の提供基準(泥酔客への対応)、常連客対応の方針、SNS投稿ルール、ハラスメント防止規定、顧客との私的関係に関する方針

■BAR業態で特に注意すべきトラブル

  • スタッフによる無断飲食・持ち出し
  • 常連客とスタッフの私的関係に起因するトラブル
  • 酒類提供に関する法的リスク(未成年への提供、泥酔者への提供)
  • スタッフのSNS投稿による店舗情報・顧客情報の流出

これらのリスクは、ルールが明文化されていないと発生後の対処が困難になります。特にオーナーが常駐していない場合、「言った・言わない」で争う問題が起きやすいため、書面にしておき、事前に合意しておくことが不可欠です。

ステップアップアドバイス

最後に、ご質問とは直接関係ないかもしれないのですが、ひとつ助言させていただきたいことがあります。

今回は「副業的な関与度」を前提としているとのことですが、BAR経営は「放置しておいてもうまく回る」ビジネスではない可能性が高いです。それで強くお勧めしたいのは、少なくとも買収後3〜6ヶ月は週に複数回は店舗に行って現場確認や運営補助を行い、新体制でのオペレーションが安定してから徐々に関与度を下げていく段階的アプローチを取ることです。

最初の数ヶ月で管理の仕組みを確立させ、キーマンとなる店長との信頼関係を構築できるかが、その後の運営がうまくいくかどうかを決める最大要因となることは間違いないと思います。老婆心かもしれませんが、ぜひご検討されることをお勧めします。

また何かご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。ご成功を心からお祈りしております。

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