「ソフトバンクの法人税0円」のワケと、私たちの税金対策

この記事はに専門家 によって監修されました。

2019年10月より消費税率が10%となり、消費者のみならず、消費税を売上に転嫁させなければならない中小企業の実質負担がさらに懸念されております。

その一方で昨年は、ソフトバンクが法人税の納税0円というニュースが話題になっていました。

大企業がいろいろな租税回避スキームを活用して、税負担を少なくするというケースは今までの歴史においても多々ありましたが、今回のソフトバンクのスキームについても、今後国税庁が制度改正などにより規制していく可能性が高いといわれております。

ソフトバンクが法人税0円だったワケ

ソフトバンクが法人税の納税を免れたスキームの1つとして簡単に説明すると、2016年にソフトバンクが買収したアーム社の株式を子会社に売却した際に、取得時の株式の価格と売却時の価格とに大きな差異が生じ、損失が計上されたのです。

この損失については、税法上、繰越欠損金として、10年間繰り越されて、以後利益が発生した事業年度ごとにその利益と相殺できるため、節税効果が大きいものとなります。

ソフトバンクの事例をもとに、中小企業の税金対策を考える

この子会社間の資本取引については、中小企業において活用するのは難しいと思われます。さらに、今後租税回避として「同族会社の行為計算否認」という税法上の規定により、税務署より指摘を受ける可能性もあります。

しかし、中小企業が上記の事例をアイデアとして節税を合法的に行う方法はいくつか存在します。

青色申告の手続きをする

まず、上記の繰越欠損金の制度は、青色申告を行うすべての企業に適用されるので、会社を設立と同時に青色申告の手続きを行えば、活用が可能です。

資本取引を行って繰越欠損金を発生させるというスキームは中小企業においては難しいケースもあるかと思いますが、新規設立法人にとっては、この繰越欠損金制度は別の方法で大いに活用できます。

一般的に、新規設立法人は設立準備費用や、店舗設備の購入、賃貸、備品の購入や仕入れ、試作費用など、多くの出費が伴います。
そのため、設立初年度の申告においては、赤字申告となってしまうケースが多いといえます。

その場合、青色申告の届出を行っていれば、初年度の赤字を10年間繰り越して、利益と相殺することができます。

2期目、3期目以降事業が順調に進み、利益決算が続いた場合、初年度の繰越欠損金と相殺できるので、利益に対する法人税負担が少なくなるのです。

さらに加えると、一般的に法人は設立3期目以降より、民間の金融機関から融資を受けやすくなる傾向があります、初年度赤字でも、2期目3期目大きく利益が発生すれば、金融機関からの融資が円滑に行える可能性が高く、かつ繰越欠損金が残っていれば、税負担も少なくなるのです。

そのため、新規設立法人においては、敢えて初年度に大きな欠損を残して、2期目3期目に順調に利益を伸ばし、3期目以降に大口の融資を受けるという事業計画をたてるケースもあるのです。

事業部門ごとに別会社にする

他に中小企業が会社を複数持つことで行える対策として、例えば消費税対策として、事業部門ごとに会社を別会社とする方法などがあります。

消費税の申告納税については、売上1000万円ラインと、売上5000万円ラインというものが存在します。

売上1000万円ラインというのは、ある事業年度の売上(消費税の発生する)が1000万円を超えると、その2期後の事業年度において、消費税の納税義務が発生するという制度です。

逆に言うと、売上1000万円を超えない事業体については、消費税の納税義務が発生しないということになります。

また売上5000万円ラインというのは、ある事業年度の売上(消費税の発生する)が5000万円以下の場合、その2期後の事業年度において、消費税の計算につき「簡易課税制度」という計算方法を活用することができるという制度です。

この簡易課税制度という計算方法は、売上に係る消費税から、業種ごとに定められた控除率(卸売業90%、小売業80%、建設業70%、飲食業60%、サービス業50%、不動産業60%など)にて控除した残りの消費税を納税するという方法で、業種によっては、通常の計算方法よりも、消費税の納税額が大きく軽減されます。

つまり、会社を複数もったり、個人事業と法人で事業体が分かれていた場合で、1事業体の売上が1000万円以下だったり、5000万円以下だったりすると、本来1社に事業体がまとまっているケースよりも、全体の消費税負担が少なくなるケースが想定されるのです。

まとめ

ソフトバンクの例をアイデアにして、上記のような節税対策を説明しました。

しかし、あまりにも経済的合理性のない分社化や、もともと1社だった会社を会社分割などで分社化した場合などは、上記のような消費税負担軽減につき規制が適用されるケースもあるので、実際にタックスプランニングを行う際には、必ず専門家に相談することをお勧めいたします。

 

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 加賀谷豪(税理士、ファイナンシャルプランナー)
株式会社ピクシス 代表取締役/税理士法人アクシオン 代表社員

1981年 北海道札幌市生まれ
同志社大学卒業後、税理士事務所業界経験12年の内、起業者の税務顧問をメインとして携わる中で、より起業支援に特化した研修、勉強会などのサービス提供を目的として、平成26年に株式会社ピクシスを設立。マーケティング戦略・ネット集客に係るプランニングにより、売上のビジョンを明確化するという目的と、それによる充実した事業計画を作成活用することで、融資対策につながるご提案を目的とした起業者向け勉強会を継続的に行っている。平成28年に税理士登録とともに、税理士法人アクシオンを設立

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ドリームゲートアドバイザー 加賀谷 豪氏

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