公庫融資で審査落ちする4つのパターンと解決策

この記事はに専門家 によって監修されました。

私は元・日本政策金融公庫(公庫)の支店長として、約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事してきました。今回はその経験をもとに、公庫へ融資の申し込みをして、審査落ちされる理由を考えていきましょう。

この長引くコロナ禍において、公庫をはじめとする金融機関の融資をうけたいと考えている経営者は増える一方です。また起業のための創業融資を考えている人も、もし希望通りの融資を受けられることができなかったら、事業の展開が苦しくなってしまうでしょう。

そうならないために、融資を申し込むまえにこのコラムに書いてあることを読んで参考にしていただけると幸いです。

審査を受ける前提として、申込する人の住宅ローンの支払いやクレジット決済状況などの個人信用情報が正常であることは、言うまでもなく最低の条件です。公庫は、個信情報機関との守秘義務から『個信情報が良くないから』ということは審査落ちの理由にはできないので、審査落ちの理由は『総合的に見て』といったような曖昧な説明になってしまいます。

今回は、そのほかのよくある4つの審査落ちのケースとその解決策を見てみましょう。

経験がとぼしく、自己資金も少ない?

申込者が、飲食店での経験が1年ぐらいなどとあまり業界の経験がないにもかかわらず、どうしても自分の好きなイタリアン料理店を出店したいといったケースです。

公庫の審査担当者や決裁者からすれば、経験の浅さは融資を決める際に不安が最初によぎります。経験が豊富であれば自己資金がギリギリでも、開業当初に売上が低迷してもスムーズに軌道に乗せることができるかと思いますが、経験が浅いと、軌道に乗せるのにも時間を要し、弾力的な店舗運営をすることがむずかしく、持ちこたえられないと考えるのです。

公庫では、起業する事業の経験が何年以上ないとダメとか自己資金はいくら必要といった決まった条件はありません。しかし、経験が半年や1年といった場合には、どちらかと言えば自己資金にウエイトを置いて審査していきます。

この場合、ザックリと言えば開業資金の半分以上あるいは設備投資後、1‐2カ月分の運転資金を持っていることが望ましいです。経験が豊富であれば、自己資金は少なくても多めに見てくれるでしょう。

つまり、経験がとぼしいなら自己資金を多く用意する、自己資金が少ないなら経験の豊富さをアピールするということが解決策になります。

新製品・新業態で勝負!

新しい特許品や発明品を売りだすとか、新しい業態で営業をするといった、審査担当者が初めて見る商品・サービスで、その用途や価値が分からない、あるいは理解しにくいケースです。たとえ審査担当者が理解できたりその分野に詳しい人であっても、次に、決裁者が理解できない・理解できない場合には、融資落ちします。

奇抜で革新的であればなおさら判断が難しく、審査落ちの可能性が高くなります。ただし、この場合において自己資金が十分に用意できていたり取引先の信用がある場合には、融資判断はスムーズにおこなわれます。

公庫や金融機関には、新製品の市場性を判断する客観的なものがありません。担当者や決裁者の経済知識や社会感覚が大きな判断の要素と言えるでしょう。申込企業の融資の判断には、申込人の経験や特殊技能、取引先等と事業計画や資金計画をまさに総合的に勘案するしかないのです。

ですから、審査担当者(素人)にむけて、事業計画書をいかに分かりやすくつくるかが重要です。安心して矛盾がなく読み進められるように数値や外部の評価を盛り込み、作成していく必要があります。融資審査の面接時の説明も重要となってくるでしょう。

借入金が多かった?

申込をすると、担当者はまず決算書を見て、借入金が月商の何倍になっているかを確認します。そして業種平均と比較して、多い場合には融資が難しいと考えてしまいます。さらに借入金の内訳をみて、怪しい借入先(高利や同業者等)があれば、それを追求しようと考えてしまいます。業界の平均以上の借入がある場合は審査落ちします。

借入金があまりに多いと、追加借入した場合の返済財源が見つからないからです。製造業、旅館・ホテル業のように、年商の何倍もの借入金が必要なものがあり、設備産業ともいわれているような場合は、返済財源は利益だけでなく原価償却費や資金繰りも検討財源として見ています。

業種によって適正な借入金、いわいる経営指標にもとづいて、多いかどうかを判断しています。しかし、ポイントは、借入金の内訳をみて返済義務があるかないか重要な事項です。とくに、代表者借入が多い場合は、いつごろからか、代表者から借入しても生活が可能かどうかをチェックされます。

前期決算で欠損を出してしまった!

金融機関では、決算が赤字であるところへは融資はしないというのが一般的に言われています。赤字だと「返済財源がない」「低迷企業である」「不良債権になりやすい」「稟議書が大変面倒」等々の理由で審査落ちしやすいです。

しかし、公庫への申込企業の大半が欠損企業です。大幅な欠損企業は別ですが、月商分の赤字は多く見受けます。さらに、それでも審査落ちはあまりありません。

一過性の欠損になった理由と損補填方法がしっかりと説明できれば良いのです。さらに、改善計画を示せることが重要となります。慢性的な赤字は、要注意です。

大幅な欠損になった場合でも、事業再生や資本性ローンの取扱いもあります。根本的な事業改善と金融機関への返済計画が必要となりますが、諦めることはありません。赤字でも自分の企業をどうやって行こうかとしっかりとしたビジョンと熱意を示すことが大事です。

まとめ

金融機関は企業の安定性、収益性、将来性をあらゆる面から検討を進めています。すべての項目を満たすことを求めてはいません。バランスが重要です。経験がない、赤字であるといった理由で初めから審査落ちするのではないかと不安に思う必要はなく、自分の事業の強み・弱味をしっかり把握して、数字や客観的な改善・維持の見通しを作成し、申込をしましょう。

金融機関や公庫の側も審査落ちしないように、少額で対応できないか検討してくれます。その場合、設備計画の縮小やリースへ変更などの提案もしてくれるはずです。運転資金の減額もあるでしょう。

不安があったら自分一人で悩まずに、アドバイザー、中小企業診断士、商工会議所等を活用するのも一策です。周囲の知恵や情報を活用するのも、経営者の能力です。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 多胡 藤夫(日本生産性本部認定経営コンサルタント、ファイナンシャルプランナーCFP(R))
V-Spirits経営戦略研究所株式会社 取締役

日本政策金融公庫(旧国民金融公庫)において約63,000社の中小企業や起業家への融資業務に従事し審査に精通する。
支店長時代にはベンチャー企業支援審査会委員長、企業再生協議会委員など数々の要職を歴任したあと、定年退職し日本の起業家、中小企業を支援すべく独立し、その後、V-Spiritsグループに合流。長年融資をする側の立場にいた経験、ノウハウをフル活用し、融資を受けるためのコツを本音で伝えている。

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ドリームゲートアドバイザー 多胡 藤夫氏

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