こんにちは、ドリームゲートアドバイザーの村野 智範 (むらの とものり)です。
創業を検討されている方で、自己資金について不安があるという方からの相談をよくいただきます。今回はその経験をもとに、自己資金ゼロから融資を受けるためにすべき準備について説明します。
- 目次 -
自己資金がないと融資は受けられない?
「自己資金はないけれど事業を始めたいのですが、融資を受けることはできますか」と相談をいただくことがあります。創業に向けて融資を検討し、いろいろ調べる中で「融資を受けるには自己資金が必要らしい」ということはなんとなくイメージされている方が多いです。
創業融資を積極的に取り扱っている金融機関として日本政策金融公庫が挙げられます。日本政策金融公庫には新創業融資制度という創業者向けの制度があり、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できることが要件となっています。つまり最低限要件を満たしていないと、申し込みをしても融資を受けることはできないことを指します。
民間の金融機関(保証協会付きの融資)から創業融資を受ける場合にも、各信用保証協会によりますが、基本的には自己資金は必要です。
東京保証協会のホームページには下記のような記載があり、断言はしていませんが自己資金が必要であるといえます。また大阪信用保証協会では創業資金の5分の1以上の自己資金が必要であり、日本政策金融公庫より高いハードルが設けられています。
創業保証について
Q9 保証協会を利用して資金調達をする場合、自己資金は必要ですか?
A「東京都制度融資」をご利用いただく場合、自己資金が要件に含まれないケースもありますが、当協会の保証審査において自己資金は事業経験とともに重要な項目になります。お客さまの創業計画をサポートさせていただく上で、創業に必要な資金の全額を借り入れでまかなうということは難しいとご理解ください。
開業サポート資金(開業資金A)
※事業開始前または事業開始後2か月未満の方が申込をする場合、自己資金額が必要資金量の5分の1以上あることが必要です。
とはいえ、なかなか自己資金を貯めることができない方や自己資金はないけれどすぐに融資を受けて開業したい方もいらっしゃると思います。
そのような方がどうすればいいか、説明していきます。
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創業時期による準備や対応策
いま自己資金がない中で、いつお金を借りて開業をしたいと考えているかによって準備は変わってきます。具体的には、次の2パターンがあるでしょう。
B:なるべく早く創業したい
これから創業の準備をしたい場合の対応策
自己資金なしで融資を受ける場合、大きな金額の融資を受けるのは難しく、融資じたいも受けられない可能性が十分にあります。そこでこれから創業に向けた準備をするのであれば、少しでも自己資金を貯めてから融資を申し込んだ方が融資の確率はあがります。
日本政策金融公庫は創業に向けていかに計画的に行動してきたのか、計画性を重要視しています。そのため、自己資金を少しでも多く貯めましょう。自己資金を貯める間に勤務年数も長くなり、勤務経験が長ければ長いほど評価されます。
なるべく早く創業したい
自己資金はないけれど、なるべく早く創業したい場合はどうするといいでしょうか。具体的には次の10の方法があります。
事業計画を縮小して、なるべく融資を受けたい金額を抑える
事業を始めるために店舗を借りるための○円、内外装に○円、厨房機器や什器に○円など様々な費用がかかると思いますが、抑えることができる費用がないかを検討しましょう。
内外装費用であれば、複数の業者に見積もりを依頼しましょう。営業者や厨房機器・什器などであれば新品ではなく、中古を検討するのもひとつの方法です。
また、事業規模を小さくして、売上が安定した(軌道に乗ってきた)後に設備を購入したり、人を増やしたりすることを検討しましょう。
創業時には最低限の設備と人員でスタートすることで創業にかかる初期費用を抑えられます。
ご家族や親族から資金の援助を受ける
ご家族や親族からの援助してもらえる資金はご自身が貯めた「自己資金」とは見てもらうことが出来ませんが、余剰資金として見てもらうことは可能です。
ご家族や親族から資金援助を受ける場合、誰からいくらの援助を受けたのかがわかるように、申込人の通帳へ振り込みをしてもらうようにしましょう。ご家族や親族の通帳の原本も合わせて必要になります。
ご家族の協力を得て、配偶者やお子さん名義の通帳を準備する
状況にはよりますが、世帯としての資産を提示することで審査に有利に働く場合があります。
配偶者が会社員であれば源泉徴収票、事業を行っていれば確定申告を準備しておき、世帯として安定した収入があることもアピールすることで評価される可能性があります。
解約返戻金がある生命保険や学資保険の解約返戻金を確認する
生命保険会社に解約返戻金を確認しておきましょう。
株や投資信託、その他金融資産を売却する
保有していたことが確認できる書類は保存しておきましょう。
車や時計などの資産を売却する
何を売却して、いくらになったのかを金融機関の担当者に説明するために領収書などの書類は保存しておきましょう。
退職金がいくら出るかをお勤め先に確認する
退職金が出る予定の方はいつ、いくら支払われるのかをお勤め先に確認しておきましょう。
有担保で融資を受ける(所有している不動産を担保に設定する)
日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合、原則無担保無保証人で融資を受けることができますが、所有している不動産を担保に入れることで担保評価にはよりますが、評価額の範囲内で融資を受けられる可能性があります。
住宅ローンなどですでに抵当権が入っている不動産は基本的に担保にはできないので、ご注意ください。
共同経営を行う友人・知人の貯蓄を提示する
法人を設立して一緒に事業を行う友人等がいる場合は、その方の貯蓄してきたお金も自己資金として提示することが可能です。
ただし、この場合にも共同経営者の方の通帳の提出が必要となり、貯めてきた履歴も確認されます。
2:申込人Aさん100万円 友人Bさん150万円
2の場合、通常Bさんが多く出資しているため、代表であると考えられます。その中でAさんが申し込む(代表である)場合、金融機関に対して納得できる説明が必要となります。
金融機関としては、友人Bが融資を受けられないから申込人Aを代表に立てて融資を受けようとしている懸念が生じ、共同経営にすることで逆に融資を受けるのが難しくなる場合がありますので、注意が必要です。
認定支援機関を経由して融資の申し込みを行う
認定支援機関とは中小企業庁が認定する、中小企業や小規模事業者の経営課題を支援するための専門家です。
日本政策金融公庫からすると、直接申し込みをするよりも認定支援機関が支援する方ということで見方が変わることがあり、融資が受けやすくなる場合があります。
自己資金がないからといって融資申込時に絶対にやってはいけないこと
見せ金を自己資金として提示する
自己資金がない方がよくやる事例としては、友人や誰かに一時的にお金を借りて、そのお金を自己資金としようとする方がいます。
いわゆる見せ金と呼ばれるものですが、金融機関には通用しません。自己資金においてはどのように貯めてきたのか、履歴をしっかりと確認しますので、見せ金は通用しないとお考えください。
また見せ金は金融機関をだまそうとする行為になりますので、もし見せ金として判断された場合はもちろん融資は受けられませんが、将来的にも融資を受けるのは難しくなります。
タンス預金を自己資金として提示する
500円貯金などをして30万円程度貯めたというのであれば、まだ日本政策金融公庫も信用してくれるかもしれませんが、通帳に全く預金がない方が「タンス預金が100万円あります」といっても日本政策金融公庫としては簡単に信用できません。
タンス預金の場合は友人や誰かにお金を借りたではないかという可能性を排除することができないため、基本的に融資を受けることはできません。
出所が確認できないお金については自己資金とは見なされません。
一度融資を申し込み審査に落ちてしまうと、次回以降融資を受けにくくなる
日本政策金融公庫では申し込みをした時点でシステムに履歴が残り、融資に落ちた場合は原因を記録します。
再度申し込みをする場合、どういった履歴が記録されているかによりますが、次回以降の審査のハードルが上がってしまうと考えておいたほうが良いでしょう。
落ちてしまった原因が解消されれば、融資を受けられる可能性はありますが、一度審査に落ちると、次回以降融資を受けにくくなると考えておきましょう。
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まとめ
自己資金が全くない状況で融資を受けられる可能性は限りなく低いです。融資の可能性を高めるためには少しでも自己資金を貯める必要があります。
熱意だけでは融資を受けることはできません。融資を申し込み、審査に落ちてしまうと次回以降のハードルが高くなります。そのため、しっかりと準備し状況を整えてから融資を申し込みましょう。
もし不安に思うことがある方は専門家に相談しましょう。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 村野 智範
(むらの とものり) /株式会社SoLabo
資金調達支援を専門に取り扱う株式会社SoLabo(ソラボ)にて2,400件以上の融資実績を基に経営者の資金調達をサポート。
トップコンサルタントとして毎月30件以上の資金調達支援を実施。これまでに400件以上の経営者をサポートして参りました。創業者からベテラン経営者まで、事業をどう続けていくのか、中長期を視野に入れたアドバイスをいたします。
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