事業再構築補助金、来年度はどうなる?申請するならいつがおすすめ?専門家が分析

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 中野 裕哲

財務省の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が歳出改革部会で中小企業支援に関して議論する中で、事業再構築補助金やものづくり補助金について、「現在のあり方を見直すべきだ」と表明したというニュースが飛び込んできました。このことについて、専門家として分析したいと思います。

そもそも、事業再構築補助金はどんなものか

論じる前に、そもそも事業再構築補助金とはどんなものでどんな経緯で創設されたものか、振り返ってみましょう。

新型コロナウイルスという未曾有のパンデミックによって、経済が大打撃を受ける中、国としては、矢継ぎ早に救済策を打ち出していきました。

まずは、第1波から第2波では、連鎖倒産などの発生を食い止める「止血」「応急措置」を目的に、最大200万円の持続化給付金、雇用調整助成金の特例、家賃支援給付金、実質無金利のいわゆるゼロゼロ融資、コロナ融資、資本性劣後ローンなどの施策が迅速に実行されていきました。

その後、第2波を乗り越え、安倍総理から菅総理に交代したタイミングで、打ち出されてきたのが、事業再構築補助金です。ここで、大きな政策の転換が起こったといえます。

即効性のある「止血」、「連鎖倒産をひとまず、押さえ込む」という意味での政策は成功し、次に考えるべきことは、大打撃を受けた業界に対し、業態転換や新規事業などによって、大きく変わるための政策が必要だろうという議論です。いわゆる「ポストコロナ」「ウィズコロナ」に対する支援です。

 

事業再構築補助金のパンフレットを見てみると、「事業の再構築に挑戦する皆さまへ」「ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための、企業の思い切った事業再構築を支援します。」と補助金の性質について、定義しています。

そして、事業再構築補助金の事務局ホームページによると、「新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します。」とあります。

つまり、ポストコロナ・ウィズコロナに向けて、中小企業が思い切った改革をし、新規事業などを行う、事業の中身を大きく変えて生まれ変わるために、国が大きな支援をしよう!という大胆な政策へと転換していったことが伺えます。

2020年度第3次補正予算で1兆1485億円が計上され、1社あたり最大1億円。最大で費用の4分の3(75%)を補助する内容となっています。

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では何が問題視されたのか

今回の報道によると、以下のようなことが問題視されているということです。

金額や補助率が大きすぎる!?

補助額は最大1億円、補助率も費用の最大で4分の3(75%)補助という手厚さで、財務省は「補助金依存や適正な市場競争の阻害が懸念される」という意見を述べています。

たしかに、過去に経済産業省が行ってきた中小企業向けの補助金の施策の中でも、1社あたり最大1000万円程度の「ものづくり補助金」と比べても、10倍の最大1億円の設定となっています。

今回の補助対象が、建物なども含む大型の設備投資を対象にしているため、1社に対する補助金額としては、膨らんでも仕方ない面はあろうかと思います。ただし、財務省の指摘のように、あまりにも大きな支援は、「補助金依存や適正な市場競争の阻害が懸念される」という意見になるのもわからないわけではありません。

必要な事業者に行き渡っていない?!

次に指摘された問題としては、補助金の受給が決定した企業の業種をみると、ニーズがあるはずの飲食・宿泊業が2割程度にとどまっており、「真に必要な企業に適切な支援が行き渡る見直しが必要」だと指摘されています。

このことについては、事業再構築補助金の第1回募集のときからずっといわれてきたことでもあります。事業再構築補助金が創設されると発表された時点と比べると、そのあとに発表された「事業再構築指針の手引き」により、対象となる中小企業の取組は、①新分野展開②業態転換③事業転換④業種転換⑤事業再編を行う企業に限定され、しかも、「大きくリスクを取り、大型の設備投資をし、今までとは違うことを始めて、変わる努力をした企業」だけが補助金の対象になりうるという内容になったのです。

ざっくりと言ってしまえば、

  • コロナを経て体力が弱っている企業に対し、
  • ポストコロナに向けてリスクを取って設備投資をし
  • 全く新しい取組をするべき

ことを求めるような内容だったのです。

このことを現場レベルで見ていくと、なかなか当てはまる企業がないというのが実態でもありました。逆に、前々からやりたかったことがあり、これを機に大きく勝負に出たいという中小企業には、おあつらえ向きな内容でもありました。

今回の指摘は、このようなことに対するものだったといえます。

次年度、事業再構築補助金はどうなっていくのか

予算を握る財務省による今回の指摘内容を考えると、次年度(2021年度補正予算)は、事業再構築補助金に対する内容の見直しがなされる確率はかなり大きいのではないかと予想できます。

まずは、大きさという面で、

  1. 1社あたりの補助上限1億円の見直し(引き下げ)
  2. 最大補助率3/4に関する引き下げ

が予想できます。

また、
③1兆円超もあった予算全体が引き下げられる可能性も大きいと思われます。

次に内容という点では、

④本当に必要な事業者に行き渡るように、「事業再構築指針の見直し」がなされる、対象となる経費の見直しが行われるといったことが十分に予想できます。

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逆に今年度は事業再構築補助金に対してどう向き合うべきか

では、中小企業経営者としては、「今年度」、事業再構築補助金(2020年度第三次補正予算)とどう向き合えば良いでしょうか。筆者としての見解を述べたいと思います。

現状の形での事業再構築補助金に応募しようか迷っている場合は、ぜひ、駆け込みでの申請をオススメします。理由はおわかりかと思いますが、予算や限度額、補助率などの引き下げが予想できるからです。

今回、第4回募集についてスケジュール等が発表されました。

  • 公募開始:令和3年10月28日(木)
  • 申請受付:令和3年11月中旬予定
  • 応募締切:令和3年12月21日(火)18:00

そして同時に発表されたのが「本事業は、令和3年度内に、さらに1回程度の公募を予定しています。」という文言です。

つまり、当初から噂されていたように、今年度の事業再構築補助金については、全部で5回の募集が行われることが正式に発表されたということです。

第5回はスケジュール的に見ても、年明けのどこかということは確定的でしょう。もし、採択されなかった場合、次回以降に再応募できるというこの補助金の性質から見ても、まずは第4回になんとか滑り込みで応募をするほうが確率は高まるといえます。

事業再構築補助金に限らず、補助金の申請については、経験・実績豊富な専門家と組むのが鉄則です。ぜひ、そうした専門家が揃う認定支援機関に「早めに」相談してみてください。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 中野 裕哲(なかの ひろあき) /税理士/行政書士/社会保険労務士

起業コンサルV-Spiritsグループ代表。ドリームゲート起業面談相談9年連続日本一。多数の起業本、起業のWeb記事も執筆・監修する人気アドバイザー。「まるごと起業支援(R)」で、あちこち相談せずとも、起業の疑問も不安も一度で解消。
著書「失敗しない起業 55の法則」「マンガでやさしくわかる起業」「図解 知識ゼロからはじめる起業の本」など。

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ドリームゲートアドバイザー 中野 裕哲氏

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