Vol.14 資本政策で重要なのは安定株主対策

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
最近上場したネッ トエイジおよびミクシィの主要株主が、上場日当日に大量の株式を売却した、という記事が日経新聞に掲載されていました。両社がこれらの主要株主を安定株主 と位置づけていたの かは分かりませんが、やはり資本政策上、どの株主を安定株主と位置づけるかは極めて重要です。今回も前回のVol.13に引き続き、資本政策について確認 していきます。

 資本政策を立案する際に検討すべき事項は、下記の5つです。

1.どのような株主を安定株主 とするのか
2.その安定株主にどの程度の比率で株式を割当てるのか
3.役職員のインセンティブプラン
4.上場時の公募・売出によ りどの程度の流動性を確保するか
5.一株あたりの投資単位(株価)をどの程度にするか

  今回は2.3.4.5.についてお話します。

 

2.安定株主にどの 程度の比率で株式を割当てるのか

 前回確認した安定株主に該当する人・会社にどの程度の比率で株式を割当てるかは、安定株主対策上極めて 重要です。

 まずは、経営者が安定株主として自社株式を長期保有してもらえる株主を決めます。そして、その安定株主全員で過半数(50%) もしくは3分の2(66.7%)以上の株式を保有するように株式を割り当てる必要があります。当然ながら、社長自身が過半数もしくは3分の 2(66.7%)以上の株式を保有するのがもっとも望ましいです。

 例えば、社長自身で過半数(50%)の株式を保有し、安定株主に該当すると 思われる役員で20%の株式を保有できるように株式を割り当てます。こうすることにより経営陣だけで株主総会の特別決議を可決でき、外部株主から影響を受 けることなく、安定的に経営を行うことができます。

 しかしながら、上場準備の過程までで、すでにベンチャーキャピタルや他の事業会社に3分 の1、過半数以上を割当てている会社もあります。この場合は、ベンチャーキャピタルなどの少数株主が一定の株主権を有するため、会社経営にこれら少数株主 の方針が持ち込まれてしまいます。

 必ずしもこのこと自体が悪いことではないのですが、例えば、会社のステージとしてはまだIPOする段階 にはないのに、ベンチャーキャピタルの資金回収のために早期のIPOを経営陣に要求されることも考えられます。経営者が過半数以上の株式を再度保有するた めには、ベンチャーキャピタルなどから株式を移動するか、新たに株式を経営者に割当てて、株式の保有割合を高める必要があります。しかし、会社の業績が順 調に推移していれば、すでに株価が高くなっており、多額の資金が必要となってしまいます。

 よって、資本政策は上場準備の段階ではなく、会社 の設立段階から綿密に検討しなければなりません。
 

3.役職員のインセンティブプ ラン

 資本政策の立案時に、同時に検討すべき事項として「役職員のインセンティブプラン」があります。役職員に対して自社の株式もしくは ストックオプション(新株予約権)を付与し、会社の業績向上により株価が上昇した場合、役職員自らが保有する自社株の価値も株価が上昇した分報酬額を得ら れるというものです。

 株式やストックオプション(新株予約権)を付与された役職員は、自らの報酬額が会社の業績と連動することから、株価 に対する意識が高まり、会社の業績向上へのインセンティブとなります。
 インセンティブプランとしては、1.ストックオプション制度と2.従業員 持株会を採用する会社が多いです。

 1.ストックオプション制度とは、会社が役職員に対して権利行使価額(あらかじめ定められた株価)で会社の株 式を取得できる権利を与え、権利を与えられた役職員は、将来株価が上昇した際に株式を買取る権利を行使して株式を取得し、その後売却することにより株価上 昇分の報酬額を得られるという仕組みです。

 一方の2.従業員持株会制度とは、従業員の自社株取得を奨励する制度で、会社とは別の組織とし て「従業員持株会」という組合を設置し、この組合を通して従業員が保有する自社株式を買い付けます。会社は福利厚生の一環として自社株購入のための奨励金 を出したり、持株会運営コストの負担を行います。

 では、インセンティブプランとしてどの程度の株式もしくは新株予約権を役職員に付与すれ ばよいのでしょうか。前回のコラムでご説明したように、自社の役職員といえども必ずしも安定株主と考えるのは危険です。従業員持株会の場合、従業員が退職 した場合は退職に伴い割当てた株式が分散してしまいます。またストックオプションの場合は、会社の都合に関係なく一定の条件が整えば、役職員は自由に株式 を売却できます。よって、過度にたくさんの株式を割当てるのではなく、発行済み株式数の15%程度までに抑えるのが一般的です。
 

4.上場時の公募・売出によりどの程度の流動性を確保するか

 上場時の公募・売出株数をどの程 度に設定するのかは、上場後の適切な株価形成のためにもきわめて重要です。各証券取引所は上場時の公募・売出株数について形式基準にて一定のルールを定め ております

 しか し、証券取引所の規定に定められた公募・売出株数では、適切な株価形成のためには不十分です。一般的には、上場時の発行済株式数の20%前後の株式数を公 募と売出をあわせて市場に流通させます。市場に流通している株数が少ないと、投資家による少しの買い注文もしくは売り注文で株価が乱高下してしまいます。 また、投資家が当該上場会社の株式を購入したくても、購入できない場合もあります。
 

5.一株あたりの投資単位(株価)をどの程度にするか

 東京証券取引所は、株式市場に個人投資家 を積極的に参加させるために、上場会社の株価(投資単位)を個人投資家が購入しやすい金額である50万円未満に設定するように要請していました。

  しかし、当時のライブドアを代表に1株を100株に分割するという大幅な株式分割が横行し、分割後の株価が数百円になるという銘柄が複数登場しました。そ のため投資単位の下限の目安を設けて5万円以上50万円未満という投資単位を証券取引所は要請しています。

 したがって、資本政策を検討す る上で、この取引所の要請事項に応えるように上場申請直前で株式分割を行い、投資単位を調整するのが一般的です。

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