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1.ニュースの概要

一連の食品偽装事件は、 2007年10月、船場吉兆が「船場吉兆フードパーク」で販売した「黒豆プリン」などのなかに、消費期限や賞味期限を経過した商品が混在していたことが明らかとなったことに端を発します。これらの商品では、賞味期限や消費期限を過ぎた商品について、その期限表示ラベルを張り替えて販売していたことも判明しました。
その後、「船場本店」においても、同社の販売した「牛肉みそ漬け」、「鶏肉みそ漬け」などの惣菜について、原材料表示の偽装があったことがわかりました。例えば、「鶏肉みそ漬け」は、実際にはブロイラーを使用しているにも関わらず「地鶏」と表示していたということです。
これらの偽装に対して、2007年11月、農林水産省は、「船場吉兆フードパーク」および「船場本店」で販売された食品の原材料表示や消費期限、賞味期限表示に誤りがあったことにつき、「加工食品品質表示基準」違反および「乾めん類品質表示基準」違反にあたるとして、JAS法(「農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律」)に基づき、表示の点検、是正などを求める「指示」を行ったことを公表しました。農林水産省の処分の詳細は、農林水産省ホームページで確認できます。
2.法律上の問題

(1)「JAS 規格制度」-飲食料品などが一定の品質や特別な生産方法で作られていることを保証する任意の制度
(2)「品質表示基準制度」-飲食料品などの原材料、原産地など品質に関する一定の表示を義務付ける強制の制度
・農林水産省HP 「JAS法とは」
→ http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_gaiyou.html#pamph
(2)の「品質表示基準制度」においては、一般消費者向けのすべての飲食料品について、飲食料品の種類ごとに約50もの品質表示基準が定められており、食品の製造、加工、輸入または販売を行う業者は、この基準に適合する表示が義務付けられます。例えば、加工食品については、名称、原材料名、内容量、消費期限または賞味期限、保存方法、製造者の氏名および住所等を表示しなければなりません。
そして、JAS法は、これらの品質表示基準に違反した場合、農林水産大臣が、業者に対し、基準等を遵守するように指示することができることを定めています(JAS法第19条)。
今回は、これらの品質表示基準のうち、1のニュースの概要で説明しました2つの表示基準に違反していた事実が認められたことから、農林水産大臣は、JAS法に基づきその是正を求める指示を行いました。
3.ベンチャー企業として

また、飲食業のベンチャー企業としては、飲食店には、JAS法による表示義務はありませんが、メニュー選択時に消費者が食品の産地などを重要視する傾向が強まっていますので、JAS法についての知識を得ておくことはよいことと思われます。
これまでの記事でも、何度が説明しているとおり、BtoCのビジネスを行う場合には、消費者保護の観点から、多くの法規制がなされています。消費者保護法や特定商取引法などが代表的なものですが、これら以外にも、分野ごとにJAS法のような規制がなされています。
また、消費者を相手にするビジネスにおいて、会社にもっとも重大な影響を及ぼすのは、消費者からの評判です。特に今回の事件では、偽装発覚後の船場吉兆の対応については批判がありました。これにより、消費者からの信頼を大きく損なった結果、債務が膨らんだとの見方もできます。
このように、法律違反によって消費者からの信頼を失うことのリスクは計り知れません。BtoCのビジネスに関する法律はたくさんありますので、これらすべてにつき十分な検討を行うことは、一見煩雑なことのようにも思われます。しかし、実は、会社にとっては、その存続にも影響をおよぼしかねないことで、非常に大切なことなのです。

