会社経営に必要な法律 Vol.53 起業家は反社会勢力に狙われている!?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

元大関琴光喜に対する恐喝事件が発端となって、複数の力士らが野球賭博を行っていたことが発覚しました。今回は、このニュースを取り上げ、違法賭博に関する罪について法的に解説し、ベンチャー企業の経営者として留意すべき事項について解説します。
 

[ニュースの概要]

2010年5月に元大関琴光喜がプロ野球賭博をしているという記事が週刊誌に掲載され、、その後、日本相撲協会が実態調査を行った結果、彼以外にも複数の現役力士や親方が野球賭博に関与していたことが判明しました。日本相撲協会は、特別調査委員会を設置して調査を続けてきましたが、元大関琴光喜と大嶽親方は解雇処分となり、このほかにも複数の力士らが謹慎休場処分などを受けることとなりました。賭博イメージ

警視庁は、賭博場開帳図利容疑で、関係する相撲部屋などの家宅捜索を行っており、今後の捜査の結果によっては、立件の可能性もあるものと思われます。また、元大関琴光喜に対して賭博関与の口止め料として現金を脅し取っていた元力士など暴力団関係者4名は、恐喝容疑ですでに逮捕されています。

角界と暴力団等との関係については、今回の野球賭博以外にも、従前よりいろいろ取り沙汰されており、今回の事件を機に、角界におけるコンプライアンスがどれくらい徹底されるようになるのか、今後の動向が注目されます。
 

[法律上の問題]

賭博に関する罪には、賭博罪や賭博場開帳図利罪などがあります。また、組織的に行われる賭博行為については、組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の没収等に関する法律(組織犯罪処罰法)で罰則が加重されています。

(1)賭博罪
賭博をした者は50万円の罰金又は科料に処されます。
また、賭博行為を反復継続して行うなど、常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処されます。
ただし、食べ物やタバコなどを賭ける行為は、日常的娯楽の範囲内の行為であり、刑罰を課す程の違法性が欠けることから、賭博罪は成立しません。金銭を賭けた場合であっても、昼食代程度の金額であれば、可罰性はないものと解されます。 また、賭博罪は日本国外における賭博については処罰しないため、ラスベガスなどの外国の賭博場で賭けごとをしても、日本の刑法上、罪になりません。
なお、宝くじやサッカーくじ、競馬や競艇などについては、当せん金附証票法(いわゆる宝くじ法)、スポーツ振興投票の実施等に関する法律(いわゆるサッカーくじ法)、競馬法、モーターボート競走法などの特別の法律によって合法化されています。

(2)賭博場開帳図利罪
カジノの開催など、自ら主催者となって賭博をさせる場所を与えた者は、3年以上5年以下の懲役に処されます。判例では、電話を用いて賭博の申し込みを受ける行為のように、賭博参加者が1カ所に集まらない場合にも、本罪の成立を認めています。

(3)組織犯罪処罰法
組織犯罪処罰法は、暴力団などの反社会的勢力等による組織的な犯罪に対する刑罰の加重と、犯罪収益のマネーロンダリング行為の処罰、犯罪収益の没収・追徴などを定めた法律です。暴力団による薬物犯罪や銃器犯罪、地下鉄サリン事件など、組織的犯罪の規模拡大や国際化が治安悪化の要因となっていることから、これらに対処するために1999年に制定されました。組織犯罪処罰法では、常習賭博罪は5年以下の懲役、賭博場開帳図利罪は3カ月以上7年以下の懲役とされています。
 

[ベンチャー企業の経営者として]

(1)ベンチャー企業は反社社会的勢力に狙われやすい
企業にとって、反社会的勢力と関係を持たないことは、社会的責任の観点から必要かつ重要なことです。近時のコンプライアンス重視の流れにおいて、反社会的勢力と関係があることが発覚すれば、企業存亡の危機にもつながりかねません。

他方、暴力団やその関係者等の反社会的勢力は、常に投資先を求めており、特に新規株式公開を計画しているベンチャー企業などを有望な投資先として認識しています。ですから、ベンチャー企業として第三者から出資を受ける際には、その出資者が反社会的勢力と関係がないかどうか、十二分に確認し、調査する必要があります。

(2)反社会的勢力と関係を持たないために
普通の会社のように見えて、実は暴力団あるいは暴力団に近い関係の者が暴力団の威力などを使って利益を得ている会社(いわゆる「フロント企業」)もあり、反社会的勢力との関係は、一見しただけでは分からないことがあります。

出資希望者や取引先候補企業の反社会的勢力との関係を確認する方法としては、次のようなものが挙げられます。

犯罪イメージ◆調査会社を使って調べる・・・反社会的勢力との関係の調査を得意とする信用情報会社などに依頼することが考えられます。どこまで調査するかは、調査コストとの兼ね合いで判断します。

◆登記簿謄本を調べる・・・会社の代表者や役員構成が一斉に変わっている場合は、会社が売買されたか乗っ取られた可能性があります。また、業種が風俗系や金融業であったり、やたらとたくさんの目的が書いてあり、本業が何なのか不明な会社は要注意です。相手が個人の場合には、経歴や親族情報の把握が重要となります。

◆自宅や会社に行ってみる・・・自宅や事務所がきちんと整理整頓されているか、従業員や出入りしている人々の服装や態度、話し方に乱れがないか観察します。

◆近隣の人に聞いてみる・・・近隣の人は案外よく見ているものです。特に、評判の悪い人物や会社である場合には、積極的に情報を提供してくれることがあります。近くの交番で尋ねてみることも一案です。

◆反社会的勢力排除に関する覚書の締結を求める・・・反社会的勢力排除に関する覚書には、通常、(A)反社会的勢力でないことの保証、(B)反社会的勢力であった場合、即時に契約を解除できること、(C)違反の有無に疑義が生じた場合には相手方に協議を申し入れたり、協力して調査することができることなどが規定されます。もしも相手方が反社会的勢力となんらかの関係がある場合、こうした内容の覚書を締結することに難色を示すでしょう。

(3)反社会的勢力とかかわってしまったら
万一、反社会的勢力と関係を持ってしまった場合には、できるだけ速やかに関係を断つことが求められます。しかし、いったん関係を持ってしまうと、それを断つことは、実際には簡単ではありません。このような場合、経営者が「何としても関係を断つ」という強い意志を持っていることが何よりも重要となります。関係解消のための交渉がこじれそうな場合には、早めに弁護士などの専門家に相談し、慎重かつ迅速に対応することです。企業経営者は、絶対に反社会的勢力と取引関係を持ってはならないと心得ましょう。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める