会社経営に必要な法律 Vol.37 『副業OK』が会社員とベンチャーに恩恵をもたらす

法務・知的財産

執筆者: ドリームゲート事務局

2009年3月に電機大手の富士通株式会社の子会社が国内工場の正社員を対象に、これまで就業規則で禁じていたアルバイトなどの「副業」を認めたことが報じられました。同社は、今年1月から国内工場でワークシェアリングを導入しており、これに伴う賃金の減少を補填するため、例外措置として副業を容認したとのことです。そこで、今回は、このニュースを取り上げ、ワークシェアリングとそれに伴う副業の容認について、法律的な面から説明します。

1 ニュースの概要

 副業を認めたのは、富士通の100%子会社である富士通マイクロエレクトロニクス株式会社の三重、会津若松、岩手の3工場で、対象は、正社員5000人のうち大半にあたる製造現場の勤務者です。これらの工場では、これまで4チーム2交代制としてきた勤務体制を、1月から6チーム3交代制に変更したため、1人あたりの労働時間が3分の2に減少し、受け取る賃金もそれに応じて減額されています。今回の措置は3月末まで実施され、副業の容認もそれに応じた期間限定とされていますが、それ以降も工場の稼動状況をみて継続の有無を判断するとのことです。

 

2 法律上の問題

(1)     ワークシェアリングとは

 ワークシェアリングとは、その名のとおり、仕事(ワーク)を分け合う(シェア)することです。ワークシェアリングには、いくつか種類があり、その目的に応じて分類することができます。

1:      雇用維持型(緊急避難型)・・・不況の際の雇用対策として行われるもの

2:      雇用維持型(中高年対策型)・・・定年後の雇用対策として行われるもの

3:      雇用創出型・・・法律で労働時間短縮を義務付けて、全国的に雇用人数を増加させるもの

4:      多様就労対応型・・・フルタイム以外にもいろいろなパターンで就業ができるようにするもの

 特に、日本では、現在の不況下での失業対策として期待されています。厚生労働省は、日本型ワークシェアリングの実施を促進するための国の助成制度として、残業時間を削減して非正規労働者の雇用を維持した場合に非正規労働者一人当たり年20万円から45万円を助成することなどを公表しました。

 雇用助成金制度に関する厚生労働省のサイト(事業者の方への給付金のご案内)

 

(2)副業の容認

 世界的不況下においてワークシェアリングや一時休業が広がる中で、労働者の生活水準が下がることが懸念されます。かかる状況において、ワークシェアリングや一時休業の導入に併せて正社員の副業(兼職)を認める動きが、昨今、多くの企業においてみられるようになってきています。

 そもそも、会社が社員の副業を制限することには、憲法上認められている職業選択の自由との関係で多少問題があります。公務員の場合は、国家公務員法や地方公務員法に基づいて許可制がとられていることから、無許可の副業は法律違反となります。しかし、民間会社の社員の場合は、こうした法律上の制限はなく、就業規則等で禁じられていなければ、副業は原則として自由です。

ただし、労働者は、労働時間外においても、使用者との労働契約に基づく誠実義務(使用者の正当な利益を不当に侵害しないよう配慮する義務)を使用者に対して負っていることから、(1)本来の勤務と重複する副業や、(2)労務提供に支障をきたす蓋然性が高い副業、(3)競業他社における就労などを行うことは、誠実義務違反となり得ます。

過去の裁判例・・・小川建設事件

 労働者が労働時間外において副業に従事し、生活のための収入を得たり、将来のためのキャリア設計を行おうとすることは、いたって自然なことです。会社は、自社の利益を不当に侵害しない限り、これを妨げることはできないものと考えられており、特に副業の一律禁止は、職業選択の自由が構成する公序良俗に違反するものと判断される可能性もあります。会社としては、社員の副業については、一律に禁止するのではなく、許可制としたうえで、副業が禁止される範囲や内容を就業規則等において明確にしておくことが望ましいものと思われます。

 

3 ベンチャー企業として

 100年に一度とも言われる経済不況の中、派遣社員や有期契約社員のみならず、正社員にもリストラの波が押し寄せています。特に、ベンチャー企業の場合、不況、即、社員の解雇という態様に流れ易い傾向があるように思われます。しかしながら、雇用維持のための新たな助成金制度の活用なども視野に入れながら、会社と社員とがお互いに共存しあうための方策として、まずは、副業容認による対応を検討してみるべきでしょう。

 また、副業容認には、人材の流動化を促進する効果があります。これまで、人材の流動化は、「転職」という形をとることが一般的でしたが、大企業を辞めてまでベンチャー企業に転職しようとする人は、実際には多くはありません。ベンチャー企業としても、大企業から自社に転職させるだけの条件交渉をしたり、メリットを示めしたりすることは、なかなか難しいのではないかと思われます。しかし、「仕事の掛持ち」が広く社会で認められるようになれば、ベンチャー企業が、大企業に勤める優秀な人材を転職させることなく自社の業務に活用することが可能になります。ベンチャー企業としては、副業容認が広まりつつある現状を好機と捉え、大企業の優秀な人材をアルバイト社員として活用する、そして、それらの人材にベンチャー企業での仕事のやりがいを見出してもらうことで、将来の人材確保の足がかりとすることを検討してみるべきでしょう。

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