会社経営に必要な法律 Vol.38 漢検問題に学ぶ! 『利益相反取引』とは?

法務・知的財産

執筆者: ドリームゲート事務局

2009年1月以降、財団法人日本漢字能力検定協会が前理事長らのファミリー企業との巨額取引をしていた問題についての報道が相次いでいます。今回はこのニュースを取り上げ、利益相反取引に関してベンチャー企業として留意すべき点について説明します。

1 ニュースの概要

 財団法人日本漢字能力検定協会は、前理事長親子が代表を務める関連会社4社との間で長年に亘り巨額取引を行っており、同協会が設置した調査委員会の報告などによれば、関連会社4社は、同協会からの委託業務の約97%を半額以下の金額で別の会社に丸投げし、2006年度から2008年度の3年間だけでも約34億円を中抜きしていたとのことです。こうした前理事長らの関連企業との取引が背任罪にあたるとされ、前理事長親子が逮捕されました。

 

2 法律上の問題

(1)利益相反取引とは

 利益相反取引とは、会社と取締役との間の、双方の利益が相反する場合の取引をいいます。

 たとえば、取締役が会社の製品を購入するような場合、会社としては、少しでも譲渡価格が高い方が望ましく、他方、取締役としては少しでも安い方が望ましく、会社と取締役の利益は相反することになります。会社と取締役との間で商品や財産が授受される場合だけでなく、取締役が会社から借金をしたりする場合も同様です。

 また、会社の代表取締役が会社を代表して、自分が代表取締役や取締役を務める他の会社と取引する場合も利益相反取引にあたります。今回の財団法人日本漢字能力検定協会の件は、公益法人と株式会社の間の取引の問題ですが、この後者の利益相反取引が問題となるケースです。

 

(2)会社法による規制

 取締役は経営の決定権を保有していることから、自分の利益にはなっても、会社にとっては不利益になるような取引を行ってしまう可能性があります。そこで、会社法は、取締役が会社の犠牲において自己または第三者の利益を図ることを防止する趣旨から、取締役が利益相反取引をしようとするときは、取締役会(取締役会が設置されている会社以外では株主総会)において、その取引に関する重要な事実を開示し、承認を受けなければならないとしています(会社法365条1項)。

 また、取締役会の承認を受けた取締役は、取引後、遅滞なくその取引に関する重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(会社法365条2項)。

 

3 ベンチャー企業として

 ベンチャー企業では、特に創業間もない時期においては、

・会社による取締役の債務保証

・ファミリー企業との資材購入取引、業務委託契約など

会社と取締役との利益相反が生じうる取引について、取締役会の承認を経ずに行ってしまっていることが多いのではないかと思われます。

 利益相反取引を行うこと自体が違法だというのではなく、法律で定められた承認手続きを経ずに利益相反取引を行うことが違法なのです。ベンチャー企業に求められるのは、利益相反取引をなくそうとすることではなく、それが会社法上問題となることを前提として、それに適切に対応するためのルールを遵守することです。ベンチャー企業の経営者は、特にベンチャーキャピタルや友人などの第三者からの出資がなされているような場合には、それらの者からの出資金を用いた会社の経営に責任をもつ者として、会社を私物化しないように常に自らを戒め、また、自らの利益のために会社の利益を犠牲にするような不適切な行為がなされ得ない環境を整え、事業を健全に発展させるための企業風土を作り上げることが求められます。それは、将来的に上場することを視野に入れている会社はもちろんのこと、そうでない会社であっても同じです。

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