会社経営に必要な法律 Vol.26 マツダの事例に学ぶ、下請法を徹底解剖!

法務・知的財産

執筆者: ドリームゲート事務局

2008年6月、公正取引委員会は、大手自動車メーカーのマツダに対し下請法違反があったとして勧告を行いました。そこで今回は、このニュースを題材に下請法について説明をしていきましょう。

1.ニュースの概要

 

 2008年6月27日、公正取引委員会は、マツダ株式会社に対し、下請代金支払遅延等防止法(下請法)に違反する事実が認められたとして、勧告を行ったことを発表しました。

 発表によれば、マツダは自動車などの部品の製造を委託する下請業者58社に対し、単価改定を行った際に、改定の合意日前に発注した部品についても、改定後の単価をさかのぼって適用したということです。これについて、公正取引委員会は不当な減額であるとして、下請法の禁止する「下請代金の減額」にあたると判断したものです。

 減額された金額は、58社の総額で約7億7800万円であったということです。

 

2.法律上の問題

 

(1)下請法とは

 下請法は、親事業者(いわゆる「元請業者」です)と下請事業者との取り引きにおける下請事業者を保護するための法律です。下請取引では、親事業者が下請事業者より優位な立場にあることが通常であるため、親事業者の一方的な都合により下請事業者が不当な扱いを受けることが多くあります。このような状況にかんがみ、下請取引の公正化をはかり、下請事業者の利益を保護するために制定されたのが下請法です。

 下請法については、公正取引委員会が以下の資料を作成していますので参考にしてください。

 

ポイント解説下請法 

知って得する下請法 

コンテンツ取引と下請法 

下請取引適正化推進講習会 

 

(2)下請法の適用を受ける事業者

 下請法は、親事業者がその優位性を利用することを規制するものですので、下請法の適用においては、下請事業者と比較して親事業者が優位にある、といえることが必要となります。下請法では、このような親事業者および下請事業者を、資本金額により定めています。親事業者の資本金額が下請事業者の資本金額を上回ることは、当然ですが、親事業者となるか下請事業者となるかの境界となる資本金額については、下請取引の内容により違いがあります。

 たとえば、プログラムの作成委託においては、資本金1000万1円以上3億円以下の企業が、資本金1000万円以下の企業や個人事業者に対し委託をした場合には、下請法の適用を受けることとされています。

 

(3)下請法の適用を受ける取り引き

下請法の適用対象となる取り引きは、以下の4種類のいずれかに該当するものになります。

製造委託:物品の販売や製造を営む事業者が規格、品質、形状、デザイン、ブランドなどを細かく指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを依頼すること

 

修理委託:物品の修理を請け負っている事業者がその修理を他の事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することなど

 

情報成果物作成委託:ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなど、情報性か物の提供や作成を営む事業者が、他の事業者にその作成作業を委託すること

 

役務提供委託:運送やビルメンテナンスをはじめ、各種サービスの提供を営む事業者が、請け負った役務を他の会社に委託すること

 

 

 

(4)親事業者の義務・禁止行為

下請法では、(2)および(3)の両方の条件を満たす下請取引について、親事業者に対し4つの義務および11の禁止行為を定めています。

 [4つの義務]

発注時の発注書面の交付

発注書に支払期日を定める

取引記録の書類を作成・保存

支払遅延時の遅延利息支払い

 

[11の禁止行為]

受領拒否

下請代金の減額

下請代金の支払遅延

不当返品

買いたたき

報復措置

物の購入強制・役務の利用強制

有償支給原材料等の対価の早期決済

割引困難な手形の交付

不当な給付内容の変更、やり直し

不当な経済上の利益の提供要請

 

(5)下請代金の減額

 以上のうち、今回マツダに対する勧告の対象となったのは下請代金の減額です。下請法は、下請事業者に責任がないのに、発注時に定められた金額を減額して支払うこと(下請代金の減額)を禁止しています。例えば、今回のマツダのように、単価を値下げした場合は、新単価は単価改定が合意された後の発注分から適用しなければならず、合意前に発注した分まで遡って新単価を適用すると、下請法の禁止する「下請代金の減額」にあたることになります。このほか、下請事業者との合意なく振込手数料を下請事業者に負担させることなど、実質的な代金減額とみられるものも禁止されています。これらは、下請事業者との間で合意があったとしても認められていないことに注意が必要です。

 

3.ベンチャー企業として

 プログラムの制作受託契約などをはじめとする下請取引は、ベンチャー企業にとってよくある取り引きであると思います。今回取り上げた「下請代金の減額」の事例以外にも、下請法により規制されている内容は思いのほか多く、また起こりがちな内容が多いと思います。また、親事業者の禁止事項や義務内容も細かく決められています。自社が、下請事業者である場合に、親事業者が下請法で禁止している事項を行ったようなときには、下請法により禁止されていることを指摘し、そのような行為をしないよう主張すべきです。特に親事業者が上場会社である場合、非上場企業よりも法令遵守(コンプライアンス)が強く求められていますので、そのような主張に対応してくれるものです。

 他方、自社が親事業者となる可能性もあります。下請法の適用を受ける親事業者は、少なくとも資本金1000万円を超える企業です。従前商法で定められていた、最低資本金を1000万円とする規制は、会社法の成立によって撤廃されていますので、資本金が1000万円を下回るベンチャー企業も増えてきてはいるものの、親事業者にあたるベンチャー企業も多いことと思います。

 下請法に違反した場合、公正取引委員会によって、適法な状態を回復するための勧告がされ、会社名が公表されます。また、場合によっては50万円以下の罰金が課せられます。罰金自体はそれほど多額ではないかもしれませんが、会社名の公表による企業イメージの低下は避けられないでしょう。

 そこで、ベンチャー企業としては、2で紹介した公正取引委員会のガイドラインなどを一読しておき、自社における下請取引において、自社が下請事業者か親事業者であるかを問わず、適法な対応がなされているかを今一度確認してみることがよいでしょう。そして、具体的な取り引きで問題がありそうな場合には、公正取引委員会の相談窓口に相談してみることがよいでしょう。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

無料で始める