会社経営に必要な法律 Vol.66 アドレス名簿屋初摘発

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執筆者: ドリームゲート事務局

迷惑メールに使われると知りながらメールアドレスを業者に販売したとして、インターネット関連会社の社長らが特定商取引法違反の幇助(ほうじょ)の容疑で書類送検されました。今回はこのニュースを取り上げて、迷惑メールに関する法的規制について解説し、また、ベンチャー企業の経営者として留意すべき事項について解説します。

ニュースの概要

平成23年7月25日、警視庁サイバー犯罪対策課と愛宕署は、迷惑メールを送信する目的を知りながら、出会い系サイトの運営会社に約3000人分のメールアドレスの情報を販売したとして、埼玉県戸田市のインターネット関連会社の社長(38)と従業員(28)を特定商取引法違反(未承諾者への電子メール広告禁止違反)の幇助(違法行為の実行を促進あるいは容易にしたこと)の疑いで書類送検しました。同課によると、迷惑メールの送信先アドレスを販売した名簿販売業者の摘発は全国で初めてとのことです。社長らは容疑を認めており、「アドレス販売にビジネスチャンスがあると思った」と供述しているとのことです。

社長らは、出会い系サイト運営会社など約80社と契約し、これらの会社が迷惑メールの送信で得た利益の3~4割をメールアドレスの販売代金として受け取り、年間約7500万円を売り上げていました。社長らは懸賞サイトなどを作成する業務も行っており、メールアドレスの情報は、そうしたサイトへの登録者などから入手していました。

なお、アドレス販売先の出会い系サイト運営会社の社長ら3人は、同年5月に特定商取引法違反容疑で逮捕され、罰金刑を受けています。

法律上の問題

今回の事件では、特定商取引法に違反して電子メール広告を送信した事業者にメールアドレスを販売した事業者が幇助の罪を問われたものですが、電子メール広告には、さまざまな規制が設けられており、それらの規制に違反した場合には刑事罰を科されることとなります。そこで、ここでは電子メール広告に関する規制の内容について解説することとします。

(1) 電子メール広告に関する特定商取引法による規制
特定商取引法(「特定商取引に関する法律」)は、特定商取引(訪問販売、通信販売および電話勧誘販売に係る取引など)を公正にし、消費者が受けることのある損害の防止を図ることによって消費者を保護し、経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。

平成21年12月1日施行の改正特定商取引法では、消費者があらかじめ承諾・請求しない限り、販売業者等が消費者に対して電子メール広告を送信することを原則として禁止しています。このような規制をオプトイン規制といいます。電子メール広告に関する業務を一括して受託する事業者も同法の適用の対象となります。

電子メール広告の送信について承諾等をしていない消費者または電子メール広告の送信を拒絶した消費者に対して電子メールを送信するなどした販売業者等や電子メール広告受託事業者には、100万円以下の罰金が科されます。違反行為の中でも特に悪質と思われるものについては、罰金刑だけでなく懲役刑が科されることとなり、1年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはその両方が科されることがあります。また、オプトイン規制に違反した販売業者等や電子メール広告受託事業者には、業務改善命令や業務停止処分などの行政処分がとられることがあり、これらの行政処分に違反した場合には、刑事罰が科されることになります。

(2) 迷惑メール防止法による規制
迷惑メール防止法(「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」)は、無差別かつ大量に短時間の内に送信される広告又は宣伝メール(いわゆる迷惑メール)を規制し、良好なインターネット環境を保つために平成14年から施行されている法律です。

迷惑メール防止法が規制の対象とする「特定電子メール」とは、「電子メールの送信をする者が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」のことをいいます。送信者は、事前に受信者の同意(電子メール広告の送信が行われることを認識したうえでメールの受信に賛成の意思を示すこと)を得なければ、原則として特定電子メールを送信することができません(オプトイン規制)。この規制に違反すると、行政による改善措置がとられることがあります。また、同法に違反した場合、その違反行為の内容によっては行政処分がとられたり、罰金刑が科されたりすることがあります。行政処分に違反した場合にも、罰金刑が科せられます。

(3)名簿業者からの名簿の購入 名簿業者から個人のメールアドレスなどが記載された名簿を購入することは、個人情報保護法(「個人情報の保護に関する法律」)に抵触するのではないかと思われる方も多いかと思われますが、法律上、名簿業者から名簿を購入すること自体は、特に禁止されていません。また、不正に個人情報を取得して作成された名簿を、そうとは知らずに購入してしまったような場合は、購入者が責任を問われることもありません。ただし、不正な手段により作成された名簿であることを知ることができて当然であったような場合には、責任を問われる可能性があります。

ベンチャー企業の経営者として留意すべき事項

インターネットの普及率が78%を超える現代では、電子メール広告を効果的なマーケティングツールとして日常的に活用されている企業は多いものと思われます。しかし、無差別かつ大量に送信されるスパムメールや受信者側の意思に反して一方的に送り付けられてくる電子メール広告は、インターネット環境に悪影響を及ぼし、また、受信者に不安を与えるなどの不利益をもたらすものであることから、特定商取引法や迷惑メール防止法によって規制されています。これらの法律による規制は、前述のオプトイン規制だけではありません。電子メール広告を行う事業者には、電子メール広告の送信について同意を得たことを証明する記録を、一定の形式で一定期間保存することが義務付けられています。また、受信者が事前の同意を通知しているメールであるか否かを容易に判断できるように、メール本文あるいはリンク先ページ内に一定の項目を表示することも義務付けられています。

電子メール広告をマーケティングツールとして活用する企業の経営者の方は、あらかじめこれらの規制内容について理解しておかれることが必要となります。ただ、法律の条文は抽象的な表現がとられていることが多いため、具体的にどのように対応すればよいか、わかりにくいところがあるかと思われます。実際の運用方法などについて理解するうえでは、行政庁が公表しているガイドライン(『「特定商取引に関する法律」および「割賦販売法」の一部を改正する法律について』平成21年9月、「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」平成22年4月)に具体的な運用上の注意点が記載されていますので、これらを参考にしていただくことがよいと思われます。

なお、ガイドラインには、電子メール広告をする際に事業者が守るべき具体的事項が記載されているだけでなく、規制の対象とならない電子メール広告(例えば、消費者の請求に基づき電子メール広告をするときや、消費者に対して契約内容や契約履行に関する事項について通知する場合に電子メール広告をするときなど)についても解説されていますので、自社で送信する電子メール広告が規制の対象となるか否かを確認していただくことができます。

ベンチャー企業の経営者の方には、勝手な思い込みで刑事罰を科されてしまうことのないよう、これを機会に、電子メール広告に関する法的規制について確認していただければと思います。

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