Vol.17 日本と比較した中国の製造物責任法(PL法)

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
中国の製造物責 任、いわゆる"PL"は、1993年に施行された「製品品質法」で製造物責任の具体的な要件が定められています。ここには、製造者だけでなく、販売者にも 製品の品質に関する幅広い義務を課しています。関連する法令には「消費者権利保護法」があり、消費者の保護を目的とした重要な法律が存在します。日本の PL法と異なる特徴の一つに、義務に違反した場合の行政責任と刑事責任が規定されている点があります。

日本のPL法より範囲が広い中国のPL法

 日本で、中国の品質 問題の話題になると、どうしても中国製品の品質問題に注目します。中国がWTOに加盟したことに関連してさまざまな法律が施行され、その品質がゆるやかに 向上はしているものの、問題は数多く残っているからです。それでは、中国の消費者はどうなのでしょうか。

 実は、中国の消費者による日本 メーカーを相手にした品質クレームは後を絶ちません。権利意識の強い中国では、クレームは正当な権利だと考えます。たった6条からなる日本のPL法に対し て、70条以上の条文で構成される中国のPL法の表面だけを見ても、その意気込みを感じ取ることができます。

 

中国のPL法の核となる「製品品質法」

 中国のPL法は、日本のPL法よりも1年以上も前に施行 されました。特徴的なのは、行政、民事、刑事のすべてが同法に規定されていることです。そして、製造物責任といいつつも、製品の販売者にも過失責任(販売 者の過失により製品に欠陥が発生し、それにより身体あるいは当該製品以外の財産に損害が発生した場合、販売者が損害賠償責任を負います)と一定の無過失責 任を課していることが、日本のPL法との大きな違いです。また、欠陥製品事故の被害者は、生産者または販売者のいずれに対しても損害賠償請求を行うことが できます。

 つぎに、製品品質法の対象となる製品は、「加工、製造された後に販売に供されるもの」と定義されています。そのため、サービス や未加工の農林水産物などは、本来は対象外になります。しかし、消費者権利保護法では、サービスや未加工農林水産物も対象となるため、結果的にはこれらに ついても、企業は製造物責任を負うことになります。ここでいう製品とは、中国国内で製造、加工、販売される製品と輸入品を含みます。

 

訴訟の危険性と対策

 日本の企業が、中国のPL訴訟に巻き込まれる事態には、中国で製造した製 品に欠陥があった場合に現地で訴訟を提起されるケース。もう一つは、日本で製造して中国に輸出した製品に欠陥があり、日本の製造企業に対して訴訟が提起さ れるケースの二つが考えられます。この時、どこの裁判所で提起されるのかはたいへん重要ですが、日本の裁判所に訴えられたから賠償額が大きく変わった、と いうことは通常ないでしょう。

 PL訴訟に向けての対策には、PL保険があります。この保険は、イザという時に法律上の損害賠償や弁護士費 用などの訴訟費用を填補してくれます。まだまだ数は少ないですが、中国の地元保険会社でも取り扱っているところはあります。もちろん保険は事後対策に有効 ですが、製造契約と販売契約にかかわる契約書の整備を事前に行うことは、中国貿易において必要なのはいうまでもありません。

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