地方のホテル・旅館が生き残るための
「3つのやるべきこと」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 坂本 洋

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、全国各地で観光PRが大変な盛り上がりを見せており、多くの外国人旅行客(=インバウンド)の来日が予想されます。そこで、日本の「おもてなし」の中心となるのが、ホテル・旅館です。

しかしながら、外資系を中心としたホテルの建設ラッシュが相次ぐ一方、流れに乗れず、地方を中心に経営に困窮しているホテル旅館が数多く存在します。本章では、業界歴9年、コンサルタントとして3年で20以上のホテル旅館の創業・再生・経営改善を務めた経験から、これら経営に困窮しているホテル旅館が生き残るための、「3つのやるべきこと」について解説します。
※地方にある30室程度の旅館をイメージして記述しています。

変化に対応することが“カギ”

いきなりですが、ダーウィンの進化論をご存じでしょうか。詳細は省きますが、「強いもの、賢いものが生き残るのではなく、環境に合わせて変化するものが生き残る」という理論、つまり「生き残る」ということは、時代や環境に応じて変化することが必要になるということです。

世の中は常に「変化」が起きています。例えば、インターネットやスマートフォンなどの登場は、非常に大きな変化でした。20年前、ホテル旅館の予約をするときは、駅前の旅行代理店に行って、パンフレットを見て申し込んでいました。しかし今では、インターネット上の旅行代理店(オンライントラベルエージェント=OTA)にスマートフォンで予約することができます。顧客にとっては旅行やホテル旅館の選択肢が広がり、ホテル旅館にとっては、情報発信を安価かつ、タイムリーに提供することができます。
さらに、これからは人工知能(=AI)やオンライン決済の発展により、顧客にとってはより使いやすくなります。またホテル旅館にとっては、このようなビジネスインフラの充実により、比較的低予算で設備投資が可能になるでしょう。

地方のホテル・旅館に必要な「3つのやるべきこと」

段階1 〜集客向上段階:OTAで集客しよう〜

まずは、集客することで売上を作り、キャッシュを作ることが重要です。
近年、インターネットやスマートフォンの普及に伴い、「楽天トラベル」・「じゃらん」といった国内OTAや、「Booking.com」・「Expedia」などの海外OTAによって、国内から国外までを対象に集客、販路開拓ができるようになりました。これらのOTAに対応することにより、今までの数十倍以上の顧客へ販売訴求することが可能となります。
集客向上段階は、以下に分類できます。

段階1-1. OTAに登録していないホテル・旅館
まずは、「じゃらん」や「楽天トラベル」などの多くの会員を保有しているOTA1社に登録しましょう。電話かメールで連絡すれば、登録方法を教えてくれます。しかし、パソコンに慣れていないホテル旅館経営者にとっては、非常にハードルが高い作業です。その場合はOTA登録代行業者もあります。月数万円から支援を行ってくれる業者もありますので、活用するのも一つです。

段階1-2. すでにOTAに登録しているが、売上に結びついていないホテル・旅館
この段階では、複数のOTAへの登録とサイトコントローラー(複数OTAの部屋在庫を一括管理するシステム)の導入が必要になります。また、宿泊プランの見直し、OTAのタイムセールなどの販促企画に参加、クチコミへの丁寧な返信などを行うことで、OTAでの上位表示を促し、売上の向上を図ります。
他にも施設規模によっては、顧客管理、収益管理を行うシステムの導入でIT化を進める必要があります。

“集客向上が今後の大きな決め手に”
集客向上段階では、多くのホテル旅館が、スキル、価値観、あるいはコスト面から対応できず、このIT化を諦めてしまいます。ハードルは高いですが、この第一段階を越えないことには、10年後どころか、3年後に生き残ることさえ困難です。
またIT化を推進してくれる、OTA導入支援業者に丸投げしてしまい、継続的な売上に繋がっていないケースも多く見られます。これらの業者においては、活用しながら、自分たち自身もシステムやIT化を勉強することが必要です。

段階2 〜情報発信段階:施設内を整理整頓し、情報発信をしよう〜

宿泊したお客は、OTAの口コミに忌憚のない意見を書きます。これはお客の真摯な声です。良い点を伸ばし、悪い点は、投資が少ないものから、継続的に改善する必要があります。
改善方法にも注意点があります。

私の支援した旅館で、「トイレが臭い」というお客の苦情を受けて、トイレを修繕した施設があります。コストと意識の問題から、和式トイレを、最新式の和式トレイに入れ替えました。しかしこれは、残念ながら無駄な投資と言わざるを得ません。倍の投資になったとしても、最新式のウォシュレット付きの洋式トイレにすべきでした。ただ入れ替えるのではなく、「他に選択肢はないか」「もっと良く見せられないか」など、自分自身で調べて工夫することが重要です。
このように、お客の要望にお応えすることで、確実に魅力は上がってきます。今度は、お客が良かったと感じたこれらの特徴を、動画や写真で発信することが必要になります。例えば料理であれば、出来上がりの盛りつけた写真だけでなく、仕込んでいる最中の動画なども効果的です。私の支援した旅館では、魚を捌いているところを動画撮影し、YouTubeに投稿することでインバウンドの集客に繋げています。他にも、部屋からの景色を毎日定点で撮影し、Facebookに投稿している70歳の経営者もいます。

SNSなどの利用においては、#(ハッシュタグ)の活用も重要です。私が支援しているホテル旅館から「毎日のコメントを考えるのが面倒だ」という意見がありました。そんな時は、例えば、以下のようなキーワードを#で並べてコメントすることをお勧めしています。

私であれば
「#日本#グリーンオーシャンズ#コンサルタント#ホテル旅館コンサルタント#ゲストハウスシャープ#民泊#JAPAN#GreenOceanz#RYOKAN consultant#GuestHouse#Startup#Airbnb」

などの単語を日本語と英語で並べて、毎回このキーワードをコピー&ペーストすることをお勧めしています。ここでのポイントは、必ず「#日本#JAPAN」や地名「#京都#KYOTO」などを入れることです。宿泊施設であれば、料理の特徴「#豆腐づくし懐石#TOFU FULL COURSE」や「#温泉#HOT SPRING」などをタグ付けすることも必要です。

段階3 〜施設充実段階:料理・内外装・備品を充実させよう〜

段階2ができれば、すでにお客は増えてきているでしょう。しかしながら、何かの特徴を付けないと、もう一段階単価を上げることは難しいです。では、何をすれば良いでしょうか。
一つは、“料理メニュー”を見直してください。多くのホテル旅館が未だに、いわゆる「旅館懐石」を提供しています。地元住民の宴会の場であった30年前は、この料理でよかったのですが、いまは、それぞれの土地柄や地の物を提供することで、広く首都圏や世界中から集客できるようになります。

もう一つは、“照明”です。もし近々東京や都心へ行くことがあれば、流行りのカフェやホテルのロビーなどを見てください。蛍光灯の白白とした雰囲気のお店はほとんどなく、温かく黄色味がかった「電球色」で統一しているお店がほとんどです。まずは蛍光灯や電球を「電球色タイプ」のものに変更してみてください。空間の雰囲気が、一気に変わります。また廊下や部屋の片隅には、雰囲気に合わせて「行灯」をいくつか置いて見てください。こちらは見違えるくらい雰囲気が変わると思います。

最大の課題はココ!

今回ご紹介した「3つのやるべきこと」ですが、もっとも大きな課題は、段階1のIT化に伴う資金調達です。通常、OTA導入支援で月に1万円から、プラン作成や売上向上までサポートしてくれる業者で、月に30万円程度の予算が必要です。1万円でしたら1万円なりの、30万円でしたら30万円なりの効果があるかと思いますが、重要なのは、この金額をかけることで、売上がいくら向上するのか、ということです。あくまでOTAの導入支援は、導入を支援するだけであり、売上が上がることを保証しているわけではありません。売上が上がる業者へ依頼することが重要ですし、また、半年以内程度で、支払った分の5倍以上の売上が上がらないようであれば、見直す必要があります。

日本中のホテル・旅館を見てきましたが、すべての施設に、必ず「ここにしかない魅力」があります。この魅力を活かして、世界中からお客様を集めるのも、潰すのも、選ぶのは、あなた自身です。さて、あなたはどちらを選びますか?

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執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 坂本 洋氏
(合同会社GreenOceanz 代表社員)

京セラ株式会社で海外営業、国内営業を経験後、中小企業診断士を取得し、株式会社星野リゾートへ転職。

星のや軽井沢・京都にてマネージャー職を経験後、ホテル旅館専門コンサルタントとして独立開業。
民泊運営からリゾートホテル総支配人、経営から清掃業務まで、広く深く経験した上での具体的で実践的なアドバイスは顧問企業から絶対の信頼を得ている。

創業補助金・ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金の採択件数は60 件以上、審査員もつとめている。

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